第9話面倒な客
『優勝者はサイトさんです』
そう言われた時俺は自分の周りにバリアを張って、ぼーっとしていた。
今更だが、この放送は魔導具によるものだ。観客は居なく、テレビ的な物で放送しているらしい。
『パッパカパーン』
滅茶苦茶うるせー。家のテレビを最大の音量にしたものよりうるさい。
「な、何だ?」
『ミッションをクリアしたので、ファンファーレを鳴らしました。いりませんでしたか?』
ピクシーが念話してきた。今回ピクシーは宿で留守番だ。理由はこの会場のゲートに仕込まれている魔法のせいだ。ゲートには識別の魔法がかかっていて選手以外が入ると騎士団に拘束される。
「うん、2度とするな?」
『さて、ミッションの報酬は宿にあるので、早く帰ってきて下さいね』
無視しやがった…
…帰るか。
宿に戻ったらピクシーが机の上で唸っていた。
「どうしたんだ?」
「いえ、少し苦情が来てまして…」
?
「お前何かやらかしたのか?」
「そうではなくて…、神から運営へ苦情が来てまして…」
「何て?」
「私にミッションを出させなさいとアテナから…、一応理由は理解出来るので、反論も出来なくて…」
「因みに、どんな内容?」
「私が貴方を迎えに行った時、貴方は高校帰りでしたね?」
「そうだ、帰ったら不審者が居てびびった」
「アテナからの苦情は『学業をしっかり受けさせなさい』との事でして…」
「えっ、俺勉強嫌いなんだけど…」
「あっ、はい。わかりました。今運営から連絡がありまして…、今回は私達にも非があるので、一年だけ通って貰う事になりました」
「…………はぁ」
勉強したくねー
「編入手続きはこちらでやっておきますね。あと、学生寮にも入って貰うので了承しておいて下さい」
コンコン
その時、部屋のドアがノックされた。
「サイトさんにお客様です」
客が来たらしい、だが俺にはこの客に心当たりがある。
今回参加したバトルアリーナは、国が主催になっているが、この大会は国中に放送されているので、見に来る者は少ない。なので実質大会を仕切っているのは、この街の貴族だ。そして、つまらない開会式や閉会式は無いが、優勝賞品はある。
優勝賞品は後で渡されると書類にはあったので、おそらくその件だろう。
「通して下さい」
「はっ、はい」
何で詰まるんだ?
扉が開くと…
「失礼する」
バトルアリーナで戦った(あれが戦ったと言えるならだが)娘だった。
「先程は見事だった」
「いえいえ、ところで用件は?」
「?わからないのか?」
「いえ、予想はしてました」
「うむ、でないと困る。王国騎士長に勝ったのだからスカウトは当然だろう」
「は?」
「ん?」
「あの、王国騎士長って誰ですか?そんな人と戦った覚えは無いんですが…」
「私だが?私はこの国では有名だと思っていたのだが…」
マジで⁉︎
「それはすみませんでした。俺この国に来たばかりで一般常識しか知らないんです」
誤魔化せるか?
「なるほど、そうでしたか」
危ねえ、だが噓もついて無いし完璧だ。今の内に話題を逸らそう。
「ところで用件は?」
「はい。王女殿下ならびに国王陛下が貴殿に会いたいと」
「スカウトじゃ…」
「それは後ほど。とにかく国王陛下からのお呼び出しです」
「それで迎えに来たんですか?」
「はい」
ここは面倒だが、行っておいた方がいいだろう。国を統一するなら王にはいずれ会うしな。
「わかりました。出発はいつですか?」
「貴殿の準備が終わり次第すぐだ」
「俺は準備は無いから」
「では、行こう」
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