再見/4ー4/勇気ある仲間達
――セレナが戦闘を開始しました。
王城の視界の隅で、メッセージが音もなく表示される。
「雅也の相手は?」
先に口を開いたのは楓。
「平和島だ」
王城は簡潔に答える。
そして二人は少し見つめ合うと。
「あんたと戦えるの、楽しみにしてたよ」
「俺もだ」
――ノクトが戦闘を開始しました。
またメッセージが表示される。
「日代だな」
「相手は樹ね。同じ役目同士、良いカードかな」
ごきりと、フリードリヒは右の指を鳴らした。それを見た楓の相棒
間もなく、二人の戦いが始まるのだ。
「けど、ちょっと予想外かな。チームトライデントとして出るかと思ったんだけど」
「俺達よりも強い後輩だった、ただそれだけだ」
「ふぅん。本当にそう思ってる?」
「あぁ。お前はそう思っていないのか?」
「去年は二年が豊作だったけど、今年は微妙でしょ。てか、あんたんとこの二年、ぶっちゃけ弱いでじゃん」
「くく……」
楓の発言に、王城は思わず笑みを溢す。
「なにさ?」
「いや、すまんな」
――イリーナ、ロビンが戦闘を開始しました。
「若原と間藤」
「風音と高遠だな、はははっ」
二人の相棒はぎろりと睨み合う。
フリードリヒは両拳を叩き鳴らし、鏡花は戦斧を構え直す。
「笑ってる理由、教えてよ」
「いいとも」
じりと、互いに足に力を込める。
「楓。お前は俺達の後輩を弱いと言ったな?」
「そうだけど?」
「それが可笑しくて、ついな」
「はっ、何それ?」
王城は狂暴な笑みを浮かべつつ。
「チーム太陽はお前みたいなことを言った奴らを……容易く倒してきたからなぁ!!」
先に仕掛けたのはフリードリヒ。地を蹴り勢いを付け、大きく右の拳を振り上げ打ち込む。その攻撃を余裕を持って躱した鏡花は、反撃の一撃を横に凪ぐ。しかしそれをフリードリヒも避け、また距離を開いた。
「ウォーミングアップだ、フリードリヒ!」
「鏡花、一気に行きな!!」
互いの攻撃が繰り出される。
けれどその様子はどこか対称的に見えた。
フリードリヒの攻撃をしっかりと受け止め反撃する鏡花に対し、フリードリヒは鏡花の攻撃を全て躱し反撃していた。
「ビビってんの、翼!?」
「お前のスキルは面倒だからな」
鏡花が持つスキル、狂気。これはリベリオンも有しているスキルの一つで、ランクに応じて防御を貫通してダメージを与えるものだ。
「はっ! じゃああんたの決闘を使えばいいじゃん!」
「それはできん。風音が俺を呼び寄せるまで、それは使わないでおきたいからな」
「随分弱気じゃんか、一対一じゃあ私に勝てないと思ってんの!?」
「もう俺はチームトライデントではない。チーム太陽の一員だ」
フリードリヒの拳が、鏡花の脇腹に入る。その一撃に鏡花は顔を歪め、思わずフリードリヒから距離を取った。
「まずは一撃。お前の相棒の防御は相変わらず低いな。あと何発耐えられる?」
「舐めんな……鏡花!」
――北海道チーム桜花絢爛。スキル、深念。ランクAが発動しました。敵との一対一での戦闘時、防御以外のステータスが上昇し、防御が低下します。このスキルはあらゆるスキル、アビリティの効果を受けず、どのような条件でも無効化されません。また、ランクA以上の場合クリティカルの威力が上昇します。
「ふむ」
「さぁ、本番と行くよ!」
地面を破壊しながらの鏡花の突進。それをしっかりと両の目で捕らえながら、フリードリヒは見極める。
「ギリギリまで粘れよ、フリードリヒ」
戦斧が振り上げられ。
「まだだ、まだ……」
そして振り下ろされるその刹那。
「回避!」
最低限の動きで攻撃を回避したフリードリヒは、先程と同じ脇腹に箇所に拳を叩き込む。フリードリヒの攻撃と自身の勢いのせいで、鏡花は地面を転がっていった。
「鏡花!?」
「どうした、楓。まさか……その程度の実力で、俺の後輩を弱いなどと言い切ったのか?」
「このっ……!」
「俺程度を倒せないくせにチーム太陽に挑むつもりか、ん?」
立ち上がった鏡花は、殴られた脇腹を押さえながら、フリードリヒを睨み付ける。
「拳のウォーミングアップは済んだな、フリードリヒ?」
王城がフリードリヒに語りかけると、フリードリヒはこくりと首肯する。
「よし、では次は剣のウォーミングアップだ」
フリードリヒは背中の大剣を抜く。
「剣……?」
楓は今まで飾りと思っていたその剣を抜いた姿を見て、眉間に皺を寄せた。
「わがままを言ってな、県大会でも使わなかったが……ここが使い時だ」
王城の得意分野は、拳。そしてフリードリヒの得意分野は剣。校内大会以降使用はしていなかったが、それは変わっていない。
「行くぞ、楓!」
攻めたのはフリードリヒ。振り下ろされた大剣は風を切り、それを受け止めた鏡花の腕を軋ませ地面を割った。
「こ、の!」
「どうした、弱くなったな!」
「調子に、乗んなよ!!」
大剣を弾いた鏡花は反撃の一撃をフリードリヒに見舞う。躱し切れなかったフリードリヒはそれを大剣で受け止めたが、彼女のスキルのせいで肩口にダメージを負った。
「狂気Aは80%貫通だったな」
「鏡花! とっておきを見せてやりな!!」
楓の言葉に頷いた鏡花は、フリードリヒから僅かに距離を取る。
――北海道チーム桜花絢爛。スキル、
――北海道チーム桜花絢爛。スキル、決死の覚悟。ランクAが発動しました。敵との一対一での戦闘時、攻撃、防御、機動が上昇します。このスキルはあらゆるスキル、アビリティの効果を受けず、どのような条件でも無効化されません。また、ランクA以上の場合一度のみ、戦闘不能になる攻撃にも耐えます。
「お前らしいスキルだな、楓。巴御前ときたか」
「知ってるでしょ? 私が日本史が好きだってこと!」
「知っているさ……!」
そして二人の相棒の武器が鬩ぎ合った。
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