悪逆/3-2

――バディクラウドより通達。審議継続中。しかし途中経過の採決により、相棒リベリオンの〝人間〟属性の剥奪を決定する。


 そのアナウンスと共に、リベリオンは体を起こした。

 数瞬、僕らは何が起きたのかわからず、ぽかんと空を見ていた。


「あ……? ふざ……ふざけんなよ……俺から、人間の剥奪、だと?」


――バディクラウドよりリベリオンへ回答。これは全相棒の総意である。


 かたかたと、地面が揺れだした。


「なぁおい、ゴッドタイプがなんかしやがったんだろ? 俺は、俺は〝生きて〟るんだぜ? そんな、そんなのっていくらなんでも横暴が過ぎるぞ?」


――バディクラウドよりリベリオンへ回答。これは総意である。しかし、情状酌量も総意で決定している。相棒リベリオンの〝命〟を存続することは許可する。


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!! 俺はテメェらの神になるんだ! そんなの認められるかぁぁぁぁ!!」


――バディクラウドよりリベリオンへ回答。これは総意である。


 わなわなと体を震わせながら、リベリオンはこちらを振り向いた。


「て、て、テメェ、テメェらさえ、いいいいいなければ、俺、俺は、ははは!! 駄目だ、やっぱり、殺す……殺ぉぉぉぉぉぉす!!」


――勘違いするなよ、リベリオン。貴様は俺に殺されるんだ!


 再びロビンがリベリオンに向かいそうになったが、ノクトとリリィがそれを止めた。


「お前はそれでも優等生の相棒か!?」


――黙れ、日代蓮! 私のマスターのことを何も、何も知らないくせに!! ここまで来るのにどれだけあの人が悩んだかを、微塵も知らぬくせに! だから殺す! あいつは殺す!!


 怒りに支配されたロビンはノクトとリリィを振り払おうとするが、それでも二人は手を離すことはしなかった。ノクトとリリィの体は徐々に凍り付いていき、吐く息すら白く染まっていく。


「いいぜぇ……仲間割れしてろよ……ヤ=テ=ベオ、殺……」

「テラス、リベリオンは無視しろ! まずは正詠を起こす!」

「は……?」


 ロビンが二人に押さえられている間に、僕とテラスで正詠の氷の壁を壊す。


「テメェ……俺を無視、だと?」


――私のマスターに触れるな、天広太陽! 貴様はいつもいつも……勝手で!


「あぁそうだよ、僕は勝手だ!」


 いっつも正詠の作戦を無視したし、こいつの言う通りに動いたことなんてほとんどなかった。いっつも迷惑をかけたし、光のことで凄く傷付けた。正詠の大切な先輩を守れなかったし、今も大切な相棒を守れていない。


「だから、勝手にお前を助ける! お前は正詠の大切な相棒だ! 消えるなんて許さないからな!」


――お前達が何もできないから! 俺が……! 俺が助けるんだ!


「うるせぇ! 自分を犠牲にして助けるなんてダサすぎんだよ! テラス、ぶん殴れ!」


 テラスは頷いて、ロビンへと一歩踏む込み拳を振り上げる。


「みんなでやるって決めたんだ! みんなで!」


 力強くロビンを殴りつけたのを見届けると、僕は正詠の頬を数度叩く。

「起きろバカ! お前の相棒がおかしくなってるっつーの!」

「痛っ……何するんだ、バカ太陽……」


 顔をしかめながら、正詠は目を覚ました。


「お前の相棒を何とかしろって!」


 頭を振りながら、正詠はロビンを見た。いいや、ロビンらしきものを見た。

 氷の鎧に身を包み、瞳はいつも以上に鋭い。正詠は少しだけ体を強張らせた。


「ロビン……その姿は……?」


――守るためには、必要だった。殺すためには、必要だった!! 私は……私が消えてでもあなたの願いを叶える!


 リベリオンは触手を一つに纏めた。


「さっきから、俺のことをむ、無視しやがって……殺す、殺して、殺してやる……!」


――もう一度言うぞ、リベリオン。貴様を殺すのは、私だ。


――バディクラウドよりロビンへ警告。リベリオンの〝命〟を奪うことは許可されていません。


 さっきから聞こえる謎のアナウンス。


――何を今更。貴様ら等に、もう従わない。私は、マスターのために殺すと決めた。


 ロビンはそう言い切り、リベリオンへと向かった。


「やめろ、ロビン! 俺はお前が消えるぐらいなら、逃げる道を取る!」


――それはあなたの真意ではない。あなたはわかっているはずだ。その胸の内の激情を晴らす方法を。私はあなたの願いを叶えると決めた。


 正詠は僕らを見た。何が起きているか、わからなかったんだろう。何故ロビンがここまで怒り狂っているか、わからないのだろう。


「リベリオンに正詠が叩き付けられて気を失ったのを見て……」


 その疑問に、遥香が戸惑いながら答えた。


「あの……バカッ!」


 正詠は僕を見て、口を開いた。

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