第二部 相棒
第一章 想い出の中で
想い出/0
ある喫茶店の角席で、四人の学生が暗い表情で紅茶を飲んでいた。
四人は男女が隣り合うように座っており、片側には黒髪で精悍な顔つきの少年と、活発そうな短髪の少女。もう片側には、明るい茶髪で目付きが鋭い少年と、眼鏡をかけた長い黒髪の大人しそうな少女。
机の上では、四人の人形のようなもの、
「太陽の馬鹿と晴野先輩はどうなんだ、優等生」
茶髪の少年、〝
「晴野先輩はとりあえず山は越えたみたいで絶対安静の状態。太陽のやつは……相変わらずだ。テラスのことは思い出さないし、言ってることも滅茶苦茶。医者が言うには一時的な記憶の混乱だそうだが……」
正詠は大きくため息をついた。
「どう滅茶苦茶なんだよ?」
蓮の問いかけに、正詠は目頭を押さえながら答えた。
「……自分の相棒が
正詠は再びため息をついた。
「しかも蓮のことも透子のことも覚えてないの。二人の相棒の名前は覚えてるのに」
正詠の隣に座る〝
「そっか……やっぱりそうなんだ……」
蓮の隣に座る〝
「……ねぇ、正詠……」
「わかってる、やっぱり話さないと駄目だよな」
ぴくりと蓮の片眉が動く。
「前話してた
「あぁ。今の状況があまりにも光の時に似すぎているし、な」
正詠は再三ため息をつく。すると、この喫茶店〝ホトホトラビット〟の店長で、蓮の父が新しいティーポットを持ってきた。
「ほらよ」
「ありがとうございます、てんちょー」
しょんぼりとしたまま、遥香は紅茶のおかわりを注いだ。
「今日は客もいねぇし臨時休業にする。蓮、話が終わったら教えろよ。俺はカウンターで茶しばいてる」
「……わりぃな、親父」
「お前らに気を遣ったわけじゃねぇ。今日は愛想笑いする気にならねぇだけだ」
ひらひらと背中越しに手を振りながら、蓮の父は彼らから離れカウンター席に座った。
「さて、まずどこから話したほうがいいかな……」
頭を掻いた正詠は、彼の相棒、ロビンに目線を向けた。
ロビンは辛そうに俯いた。
「……初めて会ったときから話したほうがいいかもな」
・・・■□■・・・
確かあれは、俺達が幼稚園で年長に上がったばかりだった。
昔から太陽の奴は考えなしに動くようなやつで、俺達を色んなところに引っ張り回していた。
そうそう、まだか弱かった私まで連れてね。
遥香、変な茶茶を入れるな。
むー……。
そんで、まぁ……なんつーかな。結構公園とかの遊び場って取り合いになるんだよ。んで、光と会う前日に小学生といざこざがあってな。ぼこぼこにされて、公園の主導権を取られた。
お前ら、あいつのせいで大分苦労してたんだな。
まぁ今思えば楽しかったからいいんだが。その日は新しい遊び場を探すっていう名目で、家の近くの裏山に向かってたんだ。
裏山って……?
今は自然村とかいう名前になってたな。あの施設は昔、〝SHTIT研究所〟という名前で相棒の研究開発が行われていたんだ。
そうなんだ。
そこに太陽の奴が行こうって言い出してな。大人には近づくなって言われてたけど、まぁガキだったからな。怖いもの見たさで三人揃って行ったんだ。しばらく獣道が続いて、急に開けたと思ったら辺り一面に花畑が広がっていた。
あれは綺麗だったよね。
そうだな、今でもはっきりと思い出せる。花弁は白くて先が淡い桃色のユリだ。それが辺り一面に咲いてた。俺達は大喜びでその花畑に突っ込んだ。
まぁガキだしな。
まぁな。太陽はいち早く花畑に突っ込んで、そこで女の子と出会った。それが天草 光。俺達の大切な……もう一人の幼馴染だ。
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