試練/6

――チーム・太陽。〝プライド・プレイヤー〟を設定してください。


 聞き慣れたアナウンスだ。


「僕たちはプライド・プレイヤーをロビンに設定する」


――承知いたしました。チーム・太陽、プライド・プレイヤーをロビンに設定。ロビンの全スキル効果が一時的に上昇します。

――フィールドは廃墟。これより転送いたします。


「太陽、まずは招集だ。いいな?」

「おう」


 正詠と一言二言の対話をすると、僕とテラスは廃屋の屋根の上に飛ばされていた。


――制限時間は三十。、三十分で勝負が決さない場合は十五分の延長、延長でも勝負が決さない場合は、プライド・プレイヤー同士の戦いを行うことになります。


 細く息を吐く。


――試合……開始!


 けたたましいブザー音がフィールド全体に響く。


「テラス、まずはここから降りるぞ」


 テラスは頷くと、廃屋から降りた。

 廃屋の中は所々に穴が開いていて、光が神秘的に差し込んでいる。


「招集」


――スキル、招集。ランクEXが発動しました。ロビン、リリィ、ノクト、セレナをリーダー・テラスの近くに呼び出します。


 みんなが集まり、何を言わずに頷いた。

 作戦通り、僕らは三手に分かれた。

 テラスとノクトは慎重に周囲を探索しながら、隠れられる場所を探していた。


「なぁ日代。今回の戦いって、やっぱキツいと思うか」


 僕の言葉に、ノクトは足を止め振り向いた。


「キツくねぇ。余裕だ、ばーか」


 日代の顔もノクトの顔も、非常に不愉快そうに見えた。

 僕と遥香だけが気付けていないことがあるのに、それを正詠も、平和島も、日代も教えてくれない。

 きっと信頼していないからじゃあない。話せない理由があるんだ。それを無理に聞き出すべきではないとわかってはいる。


「なぁ日代、話してくれないと僕も遥香も……」

「構えろ馬鹿!」


 風が走る。鋭い風だ。それも辺り一面を斬り付ける、狂暴な。


「あぁくそ!」


――スキル、守護。ランクCが発動しました。自相棒の超近距離にいる味方を対象、もしくは対象に含む攻撃を代わりに受けます。


 ノクトはテラスの前に立ち、その鋭い風を受け止めた。


「へえ、やるじゃん。ほとんどノーダメだし」

「藤堂奏!」

「せ・ん・ぱ・い、を付けなさいよ、情報初心者ビギナー


 藤堂先輩の相棒は、長い金髪を靡かせるその姿は女性ロックシンガーだ。両手にはダガーを持っており、器用に弄んでいた。


「エルレ、スーパーノヴァ!」


 エルレは瞬間で距離を詰めて、ノクトへと連撃を浴びせる。致命傷は避けているものの、ノクトの武器ではあの相棒の攻撃は防ぎきることはできない。


「テラス、援護を!」

「天広ぉ!」


 日代の怒号に、テラスがびくりと体を震わせ、攻撃の手を止めた。


「テメーもう高遠に言われたこと忘れたのか!」

「なぁに? 私と遊びたいの、あんた。でも残念。私は大将狙いなんだよね!」

「けっ。どいつもこいつもキングやクイーンばっかり狙いやがってつまらねぇ!」


 ノクトは体を捻りながら大剣を振り回した。わずかながらも剣圧を含んだその攻撃は、周囲の瓦礫を吹き飛ばした。


「かかってこいよ、情報熟練者エキスパート。この馬鹿を取りたいなら、まずは俺を潰してからにしろこのブス」


 ぶっちんと、何かが切れたような音がした。


「お望み通りあんたからぶっ潰してあげるよ、ブサイク」


 エルレと藤堂先輩は全く同じ顔をしていた。


「やっとやる気になったか」


 そんな藤堂先輩に対し、日代はしてやったりと笑みを作っていた。

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