試練/4
「次も俺がプライド・プレイヤー……かな。でもそれだと三回連続、か。悩むな」
眉間に皺を寄せて考える正詠。そんな姿を見て日代は鼻で笑った。
「俺たちのチームはいつでもギャンブルだろ? 三回連続でお前をプライド・プレイヤーにするなんて〝普通〟は有り得ない。だったら〝やる〟のが俺たちだ。ここまで来たら、〝勝ち〟に行くべきだろ」
テーブルの上でノクトが剣を抜き、その切っ先を正詠に向けた。すぐにノクトの足元に矢が二本刺さった。ノクトは正詠から視線をずらし、ロビンを見た。ロビンは余裕の笑みを浮かべながら、ノクトを睨み付けていた。
僕と遥香、平和島はそんな二人の相棒の様子に驚いた。だがいつもの言い合いの延長であることがわかると胸を撫で下ろした。
「俺にあんなだっせー同志宣誓なんてさせたんだ。次も生き延びてみろよ優等生」
今日の日代はいつもと違うように感じる。素直というか、何というか……。
嫌味は言っているのだが、それは全然嫌味のように感じない。もしかしたら、これが日代にとっての信頼の表れなのかもしれないと、僕は内心ふっと思った。
「仕方ない、か。ただ二手……というか三手に分かれるなら、遥香のことは任せたからな平和島」
「へっ?」
ショートケーキのイチゴをまさに今口に運ぼうとしていた平和島が、とぼけた声を上げた。
「言っておくが、俺はお前も作戦参謀だと思ってるからな」
「わ、私にはそんなの無理だよ!」
「いや、大丈夫だ」
正詠は紅茶を一口飲んだ。
「日代、お前の案を使う。三手に分かれて行動する」
「おう」
「……頼んだからな」
「となると、だ。僕はどうすればいいですかね?」
話を聞く限り、進藤さんと藤堂さんとは戦わない方がいいし、だからと言って残り三人にも勝てる気がしない。何せレベルが違いすぎるし。
「……お前は大将なんだから、どんと構えてろ。逃げ腰にはなるなよ、日代が闘う姿を見てろ」
正詠の目の色が変わった。
ぴりと空気が張り詰めるのがわかる。
「どういうことだ、正詠?」
「いいから、約束しろ」
平和島が「あ」と声を上げて、すぐにその口にイチゴを放り込んで彼女は黙った。
「だからもっと具体的に教えて……」
「日代が闘う姿を見てろ。前に出るな、だけど逃げるな。闘うな、それでも目を逸らすな。〝勝ちたい〟なら、それを守ってくれ。それができなきゃ負ける」
そして正詠はその目のまま、平和島を見た。
「平和島、お前はもうわかってるだろうが、お前もだからな」
「……う、うん」
「だぁかぁらぁ、そういう含みのある言い方やめろって。はっきりと……」
紅茶を飲み終えて、正詠はテーブルへと視線を落とした。テーブルの上では、ロビンが正詠を見上げていた。二人の視線が合うと、ロビンはゆっくりと頷いた。
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