断崖ヒーロー──⑤
──東京、青山霊園。
「──
「これより区域内の
「了解」
「おう」
隊長に追従する二人の隊員──副隊長、
「報告によると霊園内に多数の
「釣りだな。100パー
迷い無くそう断言するのは、副隊長である
「ん、そうだね――だったとしても、当然見過ごすわけにはいかないけど」
「
「――ということらしいけど、なんか言うことはあるか?
「ねえよ。嫌味ったらしいこと言うなっつの」
薄くニヤつきながら訊ねる
「おし。そんじゃあ二人とも、急ぐよ。さっさとここは終わらせないと――
声と共に、
「わかってるって――
「…………それが例の新型か。ゴッツいなおい」
「んー、サイズには俺もツッコんだんだけどな。性能を発揮させるためにはどうしてもこの大きさになっちまうんだとさ」
「ま、新発明はそりゃあ大きくなっちゃうもんなんじゃない? 縮小していくのは技術が進んでからでしょ。えーと
「ああ。装備者の基礎的な偏在駆動や偏在強度を引き上げるのを目的とした兵装だってさ。いくら鍛えたって上位の
「ああ、急ぐか――
黒き閃光を煌めかせて――漆黒の刀剣を
「時間との勝負になるよ。みんな、準備はいい? ――
「雑魚掃除は後ろのみんなの仕事! 私達は高い偏在反応を片っ端から潰していく! 一定以上の
「あ? 撤収? 最後までやらなくていいのかよ」
「隊長の話はちゃんと聞けよ
ひた走りながら、
「さっき言ったようにこれは十中八九陽動だ――ならこの後に本命の
その言葉は重い声色で
「もう、ここではないどこかで
「………………そうなのか?
「やれやれー。勘のいい副隊長を持って私は幸せだったり残念だったり」
ふぅ、と一つ息を吐いてから
「目前に集中してほしいから言うつもりは無かったんだけど…………さっき指令室から連絡が入ってきてた。――【
◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□
□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇
「【
コツ、コツ、コツ、コツ、と、甲高く杖の音を響かせて歩くのは、格調高いスーツに身を包んだ老紳士。
【
場所は【
入口を容易くこじ開け、配下である数多の
「――随分と好き勝手に暴れてくれてるじゃねえかよ、爺さん」
牢獄内を闊歩する老いた死神の眼前に立ちはだかるのは、【
「これは失礼した。生憎と行儀のいい破獄の作法など心得ていないものでしてな」
それを目にした【
「ここ最近、
「ほっほ、いやいや別段この牢獄に用件があるわけではありませんとも。この場所を標的にしたのは、単なる
「あぁ? 趣味、だと?」
「ええ。貴方がた
「…………へえ。標的は施設でも何でもなく、俺達――
「然り。予めわざとらしく蠢動する様を見せていたのは、その方が貴方がたを効率良く集められると思ったまでです」
「ハッ。それじゃこの状況はお前らの計画通りってワケか? ――随分とまあ舐め腐ってくれやがるじゃねえか」
「
「言いたげ、ではなくそう言ったつもりだったのですが…………伝わらなかったのであれば私の言葉足らずでありましたかな、申し訳ない」
「…………にこやかな
殺気を漲らせた声を上げ、
「
「貴殿と同格程度の
ボトり、という音。
落ちた音。
「失敬。名乗りもせずに始めてしまいましたな――余りにも鈍重でじれったかったものでして」
老死神のその手にあった杖。
それの持ち手が変容し、気付けば
「私は【
その言葉を最後に、老死神の姿は全ての
――この牢獄内にて、死の嵐が巻き起こる。
●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●
『グオオオオオオ!!』
霊園内に轟く咆哮。
それは正しく断末魔だった。
「だぁから、
「ほら軽口叩かない! 見くびれる相手じゃないでしょ
立ち並ぶ墓石群を容易く打ち砕く膂力を誇りながらに、二足歩行の人型の獣、【
「見くびれるだろ、この程度に遅れ取ってられるか──よぉ!」
大振りに右腕が薙ぎ払われるも、
血風が舞い飛び【
『ギャイイイイィィ!!』
苦悶の叫びを上げた【
巨腕を構えた
「ぶち抜け、【
ズドオオオオォォォん!
と、大きな大きな破砕音が霊園に響き渡る。
次の瞬間には【
「討伐完了、だね」
「目ぼしい偏在反応はこれで最後だろ。お疲れ」
が、その二人から離れた位置で
「──怪我はないか?」
「…………っあ、はい。大丈夫です。歩けます」
「そうか、偉いな」
未だ年端もいかない少女に、目線を合わせて語りかける
「ロリコンだな」
「ロリコンロリコンー」
「黙ってろテメーらは!! …………あー、名前は?」
「
「そうか。
「ううん…………私一人で、お墓参りに来ました」
「そうか。よし、じゃあおれたちが安全な場所まで送ろう。ついてきてくれ」
「は、はい」
「ホラ、つーわけだからさっさと帰るぞ。【
「ん、それは間違いなくそうだね。急いで離脱しちゃおう。残敵掃討は他の隊に任せて大丈夫でしょ」
「ああ、ただでさえ三下が殆どだったんだ、もう碌な
『──【
ギ、ギ、ギ、ギ、ギ、ギ、ギ、ギ、ギ。
宙に、皹が入る。
空が歪んで、亀裂が走る。
歪な歪なその
──ドン、と重々しい音を立てて、門から出でし黒衣の死神は着地した。
「…………ふぅ。思ったよりは早かったな。結構結構。気の乗らない仕事はさっさと終わらせるに限る」
──その
夜のように深く、暗い髪と瞳を光らせながらに、彼は
「──【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます