《Grim》─現代死神異聞録─

爪切り

しがないおとぎばなし

0.余罪




 ──死神は、今にも消えそうになっている小さな燃え差しを指差し、「見ろ、そこにあるぞ。」と言いました。

 「ああ、名付け親さん。」とおびえた医者は言いました。

 「僕に新しいのをつけてください。僕を愛してくれるならそうしてください。僕が人生を楽しみ、王様になり、王様の美しい娘の夫になれるように。」──




──グリム童話「死神の名付け親」より。














 そのがにわかに電子の海に蔓延り始めたのが、ちょうど五年前からだと知るものは少ない。

 その内容は、こんなものだ。






 煌めく光が、濁ったら。


 漂う空気が、淀んだら。


 聞こえる音色が、歪んだら。


 見える世界が、変わったら。


 死神の鎌に、気をつけて──



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