OREKABATTLE 1
えいち
第1話 「異世界へ」
私は、犠牲だったのだろう。別に後悔はしてないけれど、あの日あそこに行かなければ、私はただの人間だった。今?そうだね。君たち人間から見れば、怪物。モンスター。そういったところだろう。国を守る。それが、私の使命。そうしていられたのも、私の恩人のおかげなのだろう。異世界の、家族と同じ、彼らの存在なのだろうー。
つかの間の出来事だった。爆発音の元は、初めてみた魔法陣だったんだ。
「何してるの!早く逃げて!」
その言葉は、私の事を呼び出すように耳に入ってきた。咄嗟に逃げようとしたそのときだった。
『お前か。 王女になるのは…』
手を捕まれて、瞬く間に私は"その世界"から姿を消した。
********************
雨降りのお昼だった。「王子、風邪ひきますよ」の声ひとつひとつを押し退けながら、雨降りの砂浜を歩いた。この国は海沿いだから、眺めはそれなりに良かった。今日はあいにくの雨で、霧っぽかった。もちろん、人は誰もいない。
「たまにはこうやって歩くのもいいですね……ん?」
砂浜に、誰かが倒れている。慌てて駆け寄ってみると、それは少女のようだった。綺麗な茶髪に紺色のシンプルな服。僕らとは少し違う雰囲気があった。
(とりあえず連れて帰らないと…)
僕は彼女を連れて、城に戻った。心配していた幼なじみ、ウェルが門の下で待っていた。「フロウ!何してるのこんな日に! その子は?」
「分からないんですよ。砂浜に倒れてて…救急班に診てもらえますかね…?」
結果、少し気を失ってるだけだったようで、少しホッとした。本当に綺麗な子だ。それはまるで…
「なんか、人間みたいですね」
ウェルは驚いたようだった。この国は昔、人間から攻撃された事がある。その言い伝えは、今でも信じてる人がいる。きっとそれを心配しているのだろう。
「う……ん」「「‼」」
目の前で彼女が起き上がった。目を擦りながら、彼女はきょとんとした目で僕たちを見た。
「よかった。目が覚めたようですね。」
状況が掴めていないらしい彼女に、問いかける。ずっと気になっていた。
「君、名前は?どこから来たんですか?モンスターでは…ないですよね…」
やっと口を開いた彼女に、僕らは耳を疑った。
「私…名前… あれ?名前…‼」
もしかして。これは。
「「記憶喪失…⁉」」
やっぱり。懐かしい。苦悩していたあの頃が懐かしい。
「大丈夫ですよ。ゆっくり思い出していけばいいんですよ。だって僕も…」
そう。僕も同じだった。
「僕も、そうでしたから。」
やっぱり彼女は、人間だった。
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