上を見上げりゃ
@basswolf
第1話…生きるって事は…
~シャバまで何マイル~
まだ肌寒い陽気だった、脱走防止の鉄格子の
はまった窓からヒロは晴天の空を見た
「悪くはないよな」
そう呟くとボストンバッグに折り畳んだ寝間着代わりのシャツを詰めた
「お迎えが来たわよ」
おばちゃん看護婦に呼ばれてヒロは病室を出た
「久しぶりだなユウ」
不機嫌そうなヒロの弟、ユウは施設の職員に社交辞令的な挨拶をすると病院の前のロータリーに停めてある車に無言で乗り込んでエンジンをかけた
「母さんは?」
走り出した車は一路東京を目指していた
「来るわけないでしょアノ人が」
そういえば弟は母親を嫌っていた事をヒロは思い出した
「相変わらず老人ホームで働いているのか?」
「まぁね、ぼちぼちやってるよ」
信号で止まるとユウはため息混じりに言った
「これ、アノ人から」
これからヒロが住むマンションに着くとユウはヒロに封筒を渡した
「当座の生活費か…まぁ寄っていけよ」
「悪いけど今日夜勤なんだ、それにこの車返さないといけないから」
ユウはとりつく島もなく言うと車に乗り込みエンジンをかけた
「もう迷惑かけないでね」
ユウはそういうと走り去った
何もない部屋…まるで今の自分みたいだとヒロは思った
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