第3話 禁書

 タケは騎士見習いとして訓練に励み。

 ユキは魔石研究に没頭する。


 資料室の窓から時々、騎士見習いの訓練が見える。

 ユキはいつもタケの姿を探した。


 訓練の合間に、王宮の中庭で話したりもする。

 小さな村出身の2人、話すのは村での思い出。

 5歳になり、魔法力を計る、石視式いしみしきの日、それまで村の厄介者だったユキへの態度が変わる。

「あのとき…僕の手の中で魔石が光った…あのときの光を僕は一生忘れない」

 そういうユキは自身の両の手を見つめる。

 その瞳はどこか暗い闇を宿していた。

「そうだな…あのとき、村人のどよめきは俺も覚えてる」

 捨て子だったユキに対する村人の扱いは酷かった。

 村長の家に引き取られたものの、小さいころから奴隷のように働かされていた。

 タケはユキと初めて話した日を思い出していた。

 川へ水を汲みに行った日、ヨロヨロと水を運ぶ小柄な男の子、自分と同じくらいの年頃、(あ~あの子が捨て子のユキか)と思った。

 自分の桶より遥かに大きな桶を引きずるように運ぶユキ。

 タケは自分の小さな桶をユキに差し出した。

「お前はコレを運べ、俺がその桶を運ぶから」

 ポカーンと立つユキの手から桶を取り上げ、2人で村長の家とタケの家に水を運んだ。

 それから、2人は互いの家の手伝いを協力して熟すようになっていた。

 ユキは手先が器用で、壊れた道具を直したり、楽に扱えるように改造するのが役目。

 タケは、その道具を使って仕事を手伝った。

 夜はニワトリ小屋で眠るユキのところに、木の実や干し肉を持って遊びに行った。


 そんなことを話す日々。


「コレ見つけたんだ…」

「なんだ?古い本だな」

 ユキが大事そうに鞄から取り出した本。

「禁書だよ」

「そんなもの持ち出していいのか?」

「あぁ…どうせ誰も読みやしない。これには過去の魔石使いが、外法として禁じた魔石の使い方が書いてあるんだ」

 そう言って禁書を撫でるユキ。

「ユキ…」

 その瞳に暗いナニカが宿っていることにタケは、まだ気づいてない。

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