書店(後)

 先輩を連れて本屋に行っていたのだけれど、ふと思うことがあって、先輩に尋ねてみることにした。


「先輩は私といて勘違いされる事ってないですか?」


「勘違いって?」


 先輩の声は相変わらずぶっきらぼうで、弄りがいがある。


 このことを言ってみて、先輩の反応を見るのも良いけれど、今はまだ良いかなと思ってみたり。


「私たちが付き合ってる、みたいな勘違いです」


「つき・・・・・・」


「何意外そうな顔しているんですか。


 男女が一緒にあるいているだけで、付き合ってるって騒ぐ人いますよ?」


 特に高校生は、色事に異常な関心を示すのだから、勝手に話が大きくなることだってある。


 私としては、先輩と付き合っていると思われるのは嫌なのだけれど、どうやら先輩の方では大丈夫らしい。


「とりあえず、先輩の方で噂になっていることはないみたいですね」


「言われても、全力で否定するけど」


「先輩のその正直なところ、好きですよ」


「僕は後輩が嫌いだけどね」


「奇遇ですね。私もです」


 先輩は嫌いだけど、この距離感は嫌いじゃない。


「せっかくですし、先輩のおすすめの本持ってきてくださいよ」


「何で急に」


「別に無理にとは言いませんけど」


「わかったよ」


 ふてくされた先輩の背中を見送って、どんな本を持ってきたら誉めてあげようかな、なんて考えていた。

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