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本来なら喜ぶべき事なのだろう。
だけど、今目の前のパソコンの画面の中で点滅している結果は、そう簡単なものでは無かった。
「こんなに間近とは、ね」
絞り出すように先生が呟き、また沈黙が訪れる。
「計算間違いは無いんだな」
「はい。3度やり直しました」
「3度もか」
「3度もです」
柳谷教授は頭をかきながら何処かに消えて、部外者である私と澁谷さんと教授は近くの長椅子に並んで腰掛けてどうするか考える。
一昨日に『彼女』が現れて、昨日の内に兄の事件は急展開を見せてほぼ解決の糸口が見えてきたから、私達はこれ以上動かずに専門機関に任せる事にした。
そして、その昨日から同じく大きく動いているこっちも予想という名の結論が出たが、こっちは最悪とも言えるそれが出た。
『6h±2 M6.7』
それが、その最悪な結果だ。
hは
そして、その数字の後ろは日本の一部分の衛生写真が写し出され、ある範囲に赤い円があった。緑と灰色、自然と人の狭間の辺りが中心となっていた。
しかも、それだけにはとどまらない。
「これが
「……本震のマグニチュードは?」
「
先生が空をあおぎ、教授は真っ白な地面を見下ろす。
「…………飲み物、飲んできます」
「……私も」
どんより、というよりかはズシッとした空気に耐えきれなくなったのもあり、私達は逃げ出すようにパソコンが多く並ぶ部屋を出る。
廊下も自販機も明るかったが、私にはそれが眩しすぎるように感じて、真っ黒な部屋には帰らずに屋上へと上がっていく。
「……私が高槻っていう所の出身だとは話してた?」
「いえ」
「両親が早くにいなくなってね。それで育ててくれた祖父母に安定した職だけど、ソフトボールの経験が生かせる所に入ろうと思って警察に入ったけどここに引き抜かれて……ちょくちょく家には帰ってるけど、見る度に足腰が悪くなっていってるの」
「……私の方も父方が伊丹で、母方が寝屋川ですが、共にもう80を過ぎてるので同じようなものです」
「そう」
そして、急に澁谷さんの携帯が鳴り始め、事務用の声でその電話に出る。
「澁谷です。はい……はい……そうですか、向こうから接触が…………ありがとうございます。……少し別個の事になるのですが……」
たぶん事件の事でなんらかの報告を受けた澁谷さんは、そのままさっき自分の目で見た事の結果を話す。
「はい、2発……いえ、3発連続でやって来ると思われます。どれも、大きな被害を出すものかと。……ええ、場所が場所ですし。…………ありがとうございます」
最後の方で少し明るい表情になり、更に少し話してから電話を切る。
「近畿圏内の全職員に警戒命令が出て、インターネットで拡散してもらう事になったわ」
「………………最も上の御方、ですか?」
「ええ」
まさか、そこまで関わってきているとは……。
「ここまで確固たる異常があったらね。……私達はどうする? 一応自由だけど」
「…………多福さんの家に戻って、防災体制を整えておきましょう。ここにいても役に立たないですし」
「そうね」
先生と教授に言って、お世話になった職員さん達に挨拶してから梅田と京橋の間にある天満駅の近くのビルを出る。
そして、北摩耶駅を降りる頃には、ネット上では地震の噂が溢れていた。
『今日中に
そんな見出しのスレがあちこちに乱立し、読み進めると動物や地面の異常とその分布、気象庁の地震履歴を整理してある断層帯だけが大人しすぎる事などを、事細かに書いていた。
普段ならばたんなるデマとして笑い話になるが、そこまで詳しく書かれているのはそう無いので、不安の声が何時もより多く見れた。
そして、2時間後には更に情報は細かくなり、情報が広まる速さは更に早くなる。
『午後2時プラスマイナス1時間 M6~7 摂州北部』
と。
警察や気象庁は必死に火消しをしているが、ネット上では摂州を走る列車やバスが何時もより少なすぎるというのが見てとれた。
警察としてはすぐに逮捕したいが、今日明日ではまず出来ないだろう。だが、その犯人にとっても間違いなく我が身をかけた事だ。
「感謝してもしきれません」
午後0時58分、柳谷教授は犯人組織の重鎮として属していた多福さんに頭を下げていた。
「どれも納得させるもの。だから、私達は国民の事を考えて、警戒を促しただけよ」
「それでも、これほどの規模では警告しただけの場合と大きく違います。これなら、大きく被害は防げるでしょう」
「ええ。……あなた達にとっては起きないのが良いですが、起きてもらわないと最も困る事ですしね」
「……難しい所です」
そして、午後2時12分。
それは起きた。
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