カワラヌオモイ

優@メープル

第1話


いつからだろうか。

僕が君を好きになったのは。

小学生の頃は家も近くで、隣近所の子供達と一緒に遊んでいたこともあった。

君は姉さん肌で、泣いている子供に優しく接して慰めたりしていた。

眩しい笑顔を僕によく見せてくれた。

思えばあの頃からそんな君を想っていたのかもしれない。

同じ中学、同じ高校に通い、そして今は同じクラスにいる。

でもいつも読書などして1人で過ごす僕と違って、君の周りにはたくさんの人が集まる。

姉さん肌は健在。成績も良く、人柄も良い君には、多くの友達がいた。


そんな君はすごく輝いて見える。


そんな君を僕は好きになった。

君は僕を好きじゃない。

釣り合うわけがない。

そう思い今まで告白する事はなかった。

君と話すことも避けていた。

君は毎日僕に"おはよう""じゃあね"と声をかけてくれる。

しかし僕は聞こえてないふりをする。

もし話が発展してしまえば君を気にせずにはいられなくなってしまう。

これ以上君を好きになっても、辛くみじめになるのだから。

だったら君と話すのは避けたい。

好きだ。だから話したくない。

怖いだけ。ただ逃げているだけ。

分かってる。

そんな自分を、"変えたい"



___だから僕は君に告白します。





いつも通りの朝、下駄箱で君はまた僕に"おはよう"と声をかけてくれた。

「おはよう」

僕が挨拶を返すと、君はあの頃と変わらない笑顔を僕に向けて"やっと挨拶してくれたね"と言った。

今までの僕ならここで満足してしまっていたに違いない。

でも僕はもう決めているんだ。

「…少し話したいことがあって」

そう言うと少しきょとんとしてから"いいよ。どんな話?"と返してくれた。

「今日の放課後、5時に多目的教室に来てくれないかな…2人で…話したい」

君は少し俯いたけれど、すぐに笑顔を取り戻し"分かった!じゃあ5時にね!"と言い残し、友達に呼ばれて教室の方に駆けていった。


その日、君と数回目が合ったけれど、僕は何も言わず、君も何も言わなかった。


そして放課後、職員室で先生からの頼み事をこなし、時間を確認すると、すでに5時を少し過ぎてしまっていた。

急いで多目的教室に向かった。

自分から頼んだのに遅れるなんて…!

恐る恐る教室の中を覗く。


君は待っていてくれた。


君は僕に気が付くと、"もう!女の子待たせちゃダメだよ!"と言ってきた。

「ご…ごめん…」

僕は謝ることしかできなかった。

俯き口を閉ざしていると、君は変わらないその笑顔を僕に向けてこう言った。

"私は君の話を聞きに来たんだよ"と。

君は変わらない。

君の優しく語りかけるその笑顔に僕は何度も救われてきた。

どんなに君の挨拶を無視した僕にも、君は毎日挨拶してくれた。

そんなことをしてくれるのは君だけしかいない。

だから僕は___。


「君のことが好きなんだ」



僕の告白を聞いた君の目にうっすらと浮かび上がる涙。

僕にはその涙の意味はまだ分からない。


「何で…泣いてるの?」


「…やっと聞けたから…君の…気持ち」


僕が呟くように聞いた言葉に、君は涙を押し切りながら確かにそう言った。

まるで、僕が告白するのを待っていたかのように。


「私はあの頃から君が好きで、毎日話したくて、ずっと…ずっと話したくて…!」


…君もまた、僕を好きでいてくれたのか。

あの頃から変わったと思っていた。

時は移り行き見た目も性格も変わったかもしれない。


__だけど変わったのはそれだけだった。


僕も君も全て変わったと思っていた。

でも僕と君の間には、"変わらない想い"があった。

他の何が変わろうとも、それだけが変わらなければ良かったんだ。


「ずっと好きだったんだ…僕も…君も。待たせて…ごめんね。」


「もうっ本当だよ!」


そして君は、怒ったふりをしながらも、人差し指で零れ出した涙を拭き、いつもの笑顔でこう言った。



「男の子は女の子を待たせちゃダメなんだよ!」



end.

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