某漫才-1グランプリ2018雑感 ~お前最近それしか書いてないな~

このエッセイ1年ぶりの更新ですよ。もはやグランプリについて語るだけのエッセイである。そしてそれはもはやエッセイではない。


さて、相変わらず良い結果は残せなかったものの、今年も予選に出た人間なので、この祭典について自分なりに振り返っておきたい。来年以降も参加したいしね。




【全体】


去年は「話に展開のある漫才」と「何かのテーマに拘って深めていく漫才」によって好みが分かれたように思えるけど、今年は「新しい漫才」と「上手い漫才」に好みが分かれたと思う。


それは逆に言えば、「面白い漫才」というこのコンテストのテーマから具体化しきれていないものなんだけど、審査員によってどっちを上とするのかが結構分かれていた。



自分としてはどちらでも良いのだけど、やはり番組復活の2015年からは出場条件が15年となったことで、ほぼ中堅的な達者なコンビが常連になった(ジャルジャル、スーパーマラドーナ、和牛など)ことで、どこかマンネリ化しつつあった空気を、霜降り明星が彗星のごとくぶち破るというのは、「これからの時代のお笑いを作る」という点において1つの良い結果だと思う。



あと、途中まで会場が温まってなかった感じがある。ミキやトム・ブラウンが掻き回すまでは、いつものような「跳ねる」空気感がなかった。全体として「爆発力に欠ける」というコメントが多かったけど、客席の問題も一部にあると思ったり。




【個々のコンビ(ファーストラウンド出場順)】


1.見取り図

奇をてらわない、きちんとした漫才。でも審査員のコメントにあった通り、設定がやや古いような印象。


序盤で言ったワードを、かなり時間を空けた後半で回収するというネタは新しかったけど、ツッコミの盛山さんのハイトーンでそもそものワードが聞きとりづらかったり、ボケと言葉が被ってしまったりで、伏線が十分に機能していないような気がする。




2.スーパーマラドーナ

田中さんとサイコパスの相性ってすごく良いと思う。でも、そのサイコパスが奇声をあげたり、動きがおかしかったりするだけで、「それなら去年までのコント漫才に出てくる田中さんもサイコパスだぞ」って感じがする。真顔でさらっと怖いことを言うのが似合うと思うんだよな。


敗退が決まったときの武智さんのコメント。「M-1大好きです。また良いネタ作るので、劇場見に来てください」でちょっと泣きそうになった。番組の中では勝ち負けがあるけど、みんなのお笑い人生は続いていくんだよね。




3.かまいたち

多分、今回のコンビで一番「話芸」で勝負かけてきたコンビだと思う。キングオブコントで演技力は折り紙つきだけど、敢えてそこを封印してるのは潔くて良い。


ネタも面白くて、個人的には決勝いってほしかった。山内さんの、ブラックマヨネーズを彷彿とさせる神経質な感じと、チュートリアルっぽい妄執的な感じが懸け合わさったキャラはお見事。最後、2人でよく分からない言い合いになっててそこから笑いに繋がらなかったのがマイナスだったのかな。あそこでもう1つドカンと行ってたら変わってかも。




4.ジャルジャル

ジャルジャルは優勝狙ってないんだろうな、とは思ってた。ここ何回かの挑戦で、今の型が優勝までいかないことは本人たちが一番分かってると思う。


でも、「自分達が楽しいことをやろう」ってのがホントに透けて見えて、そこで爆笑取れるんだからやっぱりすごい。最終決戦のネタはなんかもう、「楽しくネタ作りしたんだろうなあ」って感じで、ほのぼのした。




5.ギャロップ

見取り図と近いかな。上手いけど、「不細工がコンパに行く」っていう設定や、顔や頭のイジり方みたいなのが当世風ではない気がする。


別に自虐だって面白ければいいんだろうけど、トレンディエンジェルみたいにそれ単体がボケになってるわけじゃないし。逆に言えば、トレンディエンジェルやタイムマシーン3号くらい吹っ切れるか、ウエストランドみたいに性格側の自虐にしないと、審査員からの点ももらいづらいんだろうな、と思う。




6.ゆにばーす

去年は個人的には最高点だったけど、今年はイマイチ。掴みが完全に失敗したのが痛いなあ。


その後のネタも、インタビュー、ジェットコースター、お化け屋敷、はらさんのピンネタと飛び飛びで、コント漫才になりきってない。川瀬名人好きだから、頑張ってほしい!




7.ミキ

ザ・上方漫才って感じだったなあ。「声がうるさい」みたいな評価があるのも分かるんだけど、さすがのハイテンポで力技で笑わせられたし、兄ちゃんと弟の人間性みたいなものがよく出てたと思う。


あと、イマイチ乗ってなかった会場が、ここで1回吹っ切れた感がある。今回のM-1の功労者だなあ。




8.トム・ブラウン

「メイプル超合金」「馬鹿よ貴方は」「マヂカルラブリー」的な異色枠。でも、このハイテンション芸が、会場の空気をガラッと変えた。ある意味で、今回のM-1の一番のキープレイヤーだったかもしれない。


ネタ自体は勢いで押すネタなんで賛否両論だろうけど、直前のミキと併せて会場をぶん殴った。そこから笑いが生まれて、審査員の点数に反映されたんだろう。そして、彼らが下地を作ったから、次のコンビが躍進できたのは間違いない。




9.霜降り明星

優勝おめでとうございます! THE MANZAIの頃からよく見てたけど、今回みたいな、粗品の一撃必殺ツッコミタイプの漫才にしたのが大正解だと思う。せいやの笑える動き⇒観客がツッコミを待つ⇒ドスの利いた声で斜め上の一言、というのが完全にハマっていた。


そして、これがこれだけ跳ねたのは、やっぱりミキとトム・ブラウンの影響が大きい。「エネルギーと爆発力」を求める舞台になっていたところに最高の受け手が来た感じ。最終決戦の2本目もお見事。塙さんの言う通り、2人とも強いのが最高のウリだと思う。




10.和牛

これだけの期待値で、しかも10番目の披露で、しっかりと最終決戦に残る実力はさすが。


今回、正直自分は和牛がいくと思っていた。霜降り明星と甲乙つけがたい、それならこれまでの実績や、霜降り明星はまだ若い、みたいなものを勘案して和牛が獲るかと。


でもそうならなかったのは、1本目で霜降り明星がパーフェクトだったからことも大きいと思う。場の流れに乗って「新しい」ものを見せた霜降りと、どんな場であっても変わらず「上手い」ものを見せた和牛、というところで、最後は審査員が決めた。本当にどっちが勝ってもおかしくなかった。





さてさて、来年はどんな漫才の年になるでしょう。来年もぜひぜひ、下手の横好きで調整したいなあと思ってます。お笑い、好きだからね!

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