激しく抱いて傷つけて
灯凪田テイル
プロローグ
プラチナ色のやわらかな朝の光線が、窓辺に佇む灯里のほっそりとしたシルエットをシャツ越しに美しく浮かび上がらせている。
華奢な肩から滑らかな背中へと流れる栗色の髪は緩くウェーブがかかったセミロングで、細くくびれたウエストから小振りだけれど官能的な丸みを帯びたヒップまでのラインは滑らかな陶器の人形を思わせる。シャツから伸びた足はまっすぐで、昔から灯里は手足が長く駆けっこが速かったことを柊は思い出した。
きれいだ、と柊は思った。
そして昨晩からこの手で、自らの肌で、全身で感じた灯里の素晴らしい素肌をあらめて思い出した。真珠色に輝く灯里の裸体はしっとりと吸いつくようで、抱きしめると細いのに魅力的な弾力を持っていた。
何度でも、何度でも、僕はキミを抱く。
キミがそれを望むなら。
たとえキミの心がこの腕からすり抜けても、
その躰はこの刹那、僕だけのものだから。
誰を想ってキミは泣くの?
僕に抱かれるたび、キミの心が傷つくなら
僕はともに血の涙を流そう。
だってそれが僕にできる唯一のことだから。
いっそ心に蓋をしてしまおう。
自分の想いが溢れ出ないように、
キミが僕の本心を決して覗けないように。
だから安心して、
好きでもない男に抱かれるマリオネットになっていて。
そして人形のキミを抱く
可哀想な男を嘲笑うといい。
いや、心の底から憎んでくれ。
できることなら、一生忘れられないくらい激しく。
せめてキミの記憶の中だけにでも、僕を生き続けさせてくれ。
何度でも、何度でも、僕はキミを抱く。
キミが望むように、それ以上に。
決して止めない、止めることなどできないんだ。
僕は忘れないよ、灯里。
あの日キミは泣きながら、僕の魂を鷲掴みにしたんだ。
そのひと言で。
「激しく抱いて傷つけて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます