第8話『水』

「よし、たっぷり水があるね!じゃぁ、早速試してみよう!」

と僕はお風呂に張ってあった水に手をつける。


そして、スキルを発動させる。


『カード化 - カードライズ』


すると、手元が光り出し、水も光りだしたのだった・・・。


「す・・・!すごい!!」

その様子を見てアスカは驚きの声を上げた。


-


「あ!できたね!」

と、空っぽになった浴槽を見て僕が言った。


「この量でも一気にいけるんだな・・・便利だ・・・」

と、僕はつぶやきながら考える。

そう、浴槽になみなみとはいっていた、水が一瞬で空っぽになった。そこには何もなくなった。


「ねぇ、これ元に戻せるの?」

と、アルテミスタ国の護衛から抜け出してきた姫アスカが聞く。当然の疑問だ。そして、良い質問だった。それは試したいことでもあった。全く同じ量もどってくるのかも知りたいことなのだった。


「うん、戻せるよ!」

と僕は言ってカードを浴槽の中に置いて、スキルを発動させる。


『現実化 - リアライズ』


とカードを元に戻すスキルを発動させた。

キィィィンとカードが光り、そのカードはパッと消滅し、代りに並々の水がそこに現れた。


「すごーい!」

と、アスカが喜ぶ。


「うん、すごいね。ほぼおなじ量の水が戻ってきたね。これはかなり便利だ。普通に無敵の能力だ・・・」

と、僕は思った。


そう、完全に物理法則を無視した超常の力だ。

この変換効率は化学的にはありえないレベルだ。

元の世界でこれを発明できたらノーベル賞間違いなしだ。


「そして・・・使い方を間違えるとかなり危険だ・・・」

と、この能力の凄まじさを体感する。

うっかり大量の水を現実化して、溺れてしまうなんてことも普通にありえるだろう。重い物を自分の頭上で現実化してしまったら、潰されてしまう。


「その水、旅に出た時に、シャワー浴びたくなることがあるかもしれないから、カードにしたままにしておいて!」

と、アスカが笑って、僕に言う。


「旅に出るつもりなの?また、リリィたちや王様に怒られるんじゃないの?」

と僕が聞く。


「その時は、怒られないように行きましょう!」

と、アスカは笑った。


彼女は、たびたび抜けだしているのだろう。

実際いまも護衛の二人から逃げ出してきて、ここに来ている。

わかりやすいオテンバ姫だ。


「完全に慣れてるね」

と僕は笑った。

そして、水をまたカードに戻した。


「この水はもらっちゃおう、姫のために、有効に使わせてもらうということで・・・」

と、僕は水をもらうのを正当化することにした。

この国と姫のために有効活用させてもらうと、心に誓って。


「よし、これでかなりわかってきたね!」

と僕はいった。

そう、かなりわかってきたのだ。

この超常の力『カード化 - カードライズ』の能力が。


「次は何をするの?」

と、アスカが僕に聞いた。

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