遠き世界の戦士達-クルーガー-

でど

ⅰ 戦士の目覚め

戦士の目覚め

「――ください!」


 ……誰かが俺を呼びかけている。


 肩を叩かれている感触。それはきっと、目の前に居る眼鏡をかけた男によるものだろう。


「……」

「早く起きてください! こんな所で寝ていたら魔物モンスターに襲われてしまいますよ!」


 待ってくれ。まだ体の感覚が戻っていない。上手く口は動かせないし、手足はそもそも感覚が無い。今は辛うじて目を動かせているだけなんだ。


「――ああ! もう知りませんよ! 魔物モンスターに襲われてもいいっていうならずっとここで寝ててください!」

「……ってくれ」

「――!」


 やっと動けるようになぅた口と舌を動かし、目の前の眼鏡男に向かって俺は問いかける。


「ここは、どこ、だ……?」

「……! まさか、あなたも――」



 そう、分からないんだ。ここ一体どこで、いつの時代で、何をする為にここにいるのか。

 そして、俺自身が何者なのかも。




 しかし、ほとんどを失ったはずの記憶の中に、残っているものがあった。



「……殺さなければ」

「……え?」

を、殺さなければ……!」


 俺は、殺さなければならない。失われた記憶の中にいるを。

 何故、殺すのかは分からない。しかし、俺には殺すべき対象がいる。復讐……。その言葉だけが俺の頭の中を駆け巡っているのだ。



 名前も何も分からない。しかし、目的が分かったなら充分だ。


 行動を始めよう。でなければ何も得る事はできない。


 記憶を取り戻し、必ず俺は復讐を成し遂げる。





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