参日目②
永久欠番がいるというのはわかっていても、知っているのはそれがいるということだけで、内情までは公になっていないのは勿論の事、どんなヤツだかを知らせるような資料は全く存在しない。
だから何人いて、何て呼ばれていて、どんな容姿なのか。どんな罪なのか、参考資料として提出されないし、捜査上に浮かんでくることもない。
そんなゴーストみたいなやつらが何人もいて、そいつらは刑場に適応されている治外法権の範囲内で守られている。
後2つある刑場も同じように、誰でも知っているけど中身は誰も知らないブラックボックス扱いになっているんだろう。
「刑部省の人間でも知らないヤツがほとんどだしな」
「……」
敵を知らなければこの恐怖はどうにもならない。だから調べてもらおうと思っていたのに、かえって余計な恐怖だけが降り積もっていくかのようだ。
永久欠番と呼ばれる存在が俺の予想よりも多くいて、頂点にはKINGだけではなく、
(王国か何かかよあそこは…)
「お前が言ってた制服の女の子なー…多分その子も永久欠番だと思うけど、情報はわかんねぇわ」
「…そうか」
「あ、それともう1つ」
「今月は『KING』が統括しているらしい」
「は?」
(何か今日は間が抜けたこの言葉ばっかり言ってるな)
蕨が短時間で調べてきた内容は、俺が遠目に見た1人目の『永久欠番』のことともう1つ。
おそらくもっと時間をかけたとしても、大勢のヤツに声をかけたとしても、外側から知ることが出来る情報はこの位しか集まらないだろう。
「何かあそこは特殊で、毎月KINGとQUEENと、どっちが治めるか取り決めがあるらしい。勝った奴らは1か月、主導権を握ることが許されるんだと。つまり、お前を呼び寄せようとしているのはKINGサイドって訳」
(だから…事件の事も知っているって言うのか?)
『雨の降った次の日は『
(でもそれじゃ…理由にならない)
外に出ているヤツがいるなら、俺達の上層部に接触している可能性だって考えられる。
それであれば、情報が一切遮断されていると言われているあの場所で、今回の事件の事を知っていてもおかしくはないが、だとしてもすんなり省庁レベル、国家レベルと犯罪者が結びついているだなんて思いたくもないし、事件に全く絡んでいないというのならば、どうして事件を先読みするような写真を叔父さんが持っていたのかも謎になる。
(繋がっている……)
それはおそらく間違いないし、思いたくないけど受け入れないと話が進まない。
過去何度も事件に関わったという前情報通りならば、上層部とKINGには太いパイプは存在しているし、あると考える方が自然だ。
だとしたら、事件に協力する気があるならどうして使えない証拠を渡して、なおかつ俺におつかいをさせようとしているのか。
(まだ別の…意図が隠されている?)
それを教えてやるからまたあの檻へ入ってこいと言われているのを証明するように、何の成果も得られなかったと思っていた俺の手元には真紅のカードが残されている。
事件を解決するのか迷宮入りさせるのか、惑わせるのか導くのかもわからない言葉とともに。
「……」
「お前…まさかまたあそこに行くつもりなのか?」
蕨が心配そうに俺の顔を覗き込もうとするが、先回りをして顔面をタオルに押し付ける。
少し前までは止めようと思っていた。叔父さんには申し訳ないけど、あそこにいたら俺の何かが変わってしまいそうで、怖かった。
だけど今は、あそこに行かなければいけないと思う自分の気持ちが固まっている事を誤魔化すことが出来ない。
少なくとも敵だと思っていた。だけど、今は、自分の周りすら味方かどうかわからなくなっている。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず……」
「え?大護?」
真実を見極めるには、入らないといけない。
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