異形な彼女
警告
第1話
午前7時25分
都立学園前行きのバス停で、僕は毎朝彼女を待った。
彼女とは幼なじみで、幼稚園・小学校・中学校、高校と一緒だ。
特に告白なんてものはなかったと思う。
いつの間にか付き合う形になっていた。
今更、特別に好意の言葉を口にするつもりも無いだろう。
彼女の好きな物、嫌いなモノ、得意な科目、休日の過ごし方、長い付き合いの中で僕の知らない事なんてあるのかというくらい、僕には彼女を知り尽くしている自信があったのだ。
そう、この日まで……。
体感温度は、一桁。
季節は冬将軍の到来を迎え、頬を通り過ぎる風すら凶器に思える。
見上げれば、露草色の空に真綿の雲が群れをなし、僕は今日もまるで日課のごとくバス停に立っている。
そこへ──
いつもの様にこちらに向かって駆けてくる、聞き慣れた足音が響いてきた。
「おっ……、おはっ……よ……う~っ!」
ほとんど毎日聞いている、いつもと変わらない彼女の声。
少し息を切らしている。
僕より少し遅れて、彼女はバス停にやって来た。
「オハヨ、今日もオマエのが遅かったな」
嫌みっぽくそう言って僕は、彼女の方へと振り返る。
「昨日、遅くまで起きてたから眠いよ~……寒いよ~」
彼女はそう言い、目をこする。
その時──
僕は、彼女を凝視した。
生まれつきの白い肌、焦ってここまで来たのだろう、その頬は蒸気を帯びて微かに赤く色づいている。
くりっとした薄茶色の瞳の周りには、縁取りのごとく綺麗な睫が生え揃っていた。
いや、違う。
そうじゃない!
そんな、いつもの彼女では無い!
「あっ……あぁっ……」
僕は、いまだ眠そうに目を擦る仕草がなんとも可愛い彼女よりも、今日も世間じゃ最低気温更新中でカナリ寒いというのに、制服からにゅっと生えた生足よりも、もっと、もっと思わず口を開いたまま見つめてしまう程の【いつもと違う彼女】に、言葉を失ったのだ。
「…………!?」
彼女の後頭部から、なにかよくわからないシロモノが「ニョキっ」と生えている!!
異質なモノの突然の登場に、僕は【ソレ】に目が釘付けとなってしまった。
最初それは、彼女の丁度真後ろにあって、彼女から生えている様に見えるのかと思っていた。
だが、違う!
僕は、彼女の頭のソレが生えている部分に回り込んで見た。
確かにソレは、彼女の陽の光を浴びて飴色に光る、整えられた肩までの髪と同じ様に、しっかり頭から生えている。
「………………」
(なんなんだよ? 一体っ!?)
僕は、わりとゲーム等をする方だ。特にRPGを好んでプレイしている。
その僕の見解からすると、おそらく彼女の頭部からしれっと生えている【ソレ】は、いわゆる【触手】と呼ばれるヤツだ。
太さ5センチくらい、肉屋で見かける様なツヤツヤとした新鮮な淡い桜色。
ああ、人間の腸と言われたら一番しっくりくるやもしれない。
ぬるりという擬音がベストマッチな【ソレ】が、彼女の頭頂部、ちょうど耳の上の辺りから見事に生えていた。
「どうかしたの?」
あまりの異常な光景に、彼女から触手、触手から彼女と、視線を定める事が出来ない。
カナリ挙動不審な僕の様子を察して、不思議そうに彼女は僕の顔を見つめていた。
「あっ……いや、あの……」
思い切って、触手の事を聞いてみようか?
いや、もしかしたらこれは……、
A 彼女のサプライズ
B テレビのドッキリ
いやいやもしかすると、
C この触手は僕にしか見えていない
その、可能性だってある。
もう少しだけ様子を見よう。
「あ~せっかく髪セットしたのに~、今日、風が強いからすぐ崩れちゃうよ~」
彼女がそう言って、触手の生えた部分から僅か数センチギリギリの部分を、懸命に手で撫で付ける。
(いや、そんな事よりもっと、もっと重要な事があるだろう~!?)
僕の心の声は、思い切りそう叫んでいた。
どうしよう。
どこから突っ込んでいいのか、僕にはこれぞ名案というものが全く思いつかない。
そんな中、バスがやって来た。
『都立学園前行き』と上に表示された、緑のラインの入った市営バスだ。
バス停に停まると、運転手が僕らに向けて降車扉を開け放つ。
開け放たれたバスの扉の前で、僕は思考の巡らないまま呆然と突っ立っていた。
「どうしたの? 早く乗ろうよ」
いつもと違う僕に戸惑いながら、違う彼女が声をかけてくる。
目の前には、僕のよく知っている彼女の顔。
しかし、その後ろでミミズの太いのが、風も吹いてないのにそよそよと彼女の斜め上を漂っている。
僕はそこでようやく頭を動かし、考えた。
今から、僕以外の第三者的な視線が彼女に注がれるワケだ。
それは、果たして良い方向に向かう事なのだろうか?
それとも……、彼女を見た乗客達は、パニックを起こしたりはしないのだろうか?
もしかしたら、それも全て込みでドッキリなのかもしれないが……。
「どうかしたの? 忘れ物とか?」
再び彼女が、不思議そうに反応の無い僕の顔を覗き込む。
「あっ……、いや……その……」
「大丈夫? 今日なんか変だよ?」
「あっ……うん。平気だから」
変なのはオマエだと、ツッコミたかったがなんとかそこは押し留める。
とりあえず、バスへと乗車した。
時間的には、通勤・通学ラッシュだ。
しかし、ほぼ満員に近いバスの中で、誰も彼女に視線を注ぐ者はいない。
学生、社会人、パートの主婦から、はたまたバスの運転手に至るまで、誰もこの異様な光景に目もくれない。
現代人の他人への無関心もついにここまできたのか?
この状況は一体なんなのか?
とりあえず僕はさっき自分が考えた、3つの説を一つ一つ解消していく事にした。
まずは、この状況が彼女のサプライズという可能性でもある。
「なぁ? なんか今日特別な事とかってある?」
「え? 何?」
「だから、なんかこう、僕に対しての~……その、サプライズがさ!」
「今日? なんで? 誕生日でもないのに?」
こうして、A彼女のサプライズは即、消えたワケだ。
彼女が、嘘をついてる? それは、考え難い。
僕の彼女は、ウソを付くとどんなにガマンしても右の眉が必ずピクピク痙攣する。
今回は残念ながらしていなかった。
やはり、手の込んだ、視聴者参加型ドッキリの可能性が濃厚な気がするぞ。
Cの僕しか見えていないは、霊感やオカルト的事象にからきし縁の無い僕には受け入れ難い。
まぁ、僕の目か頭がおかしくなったとかなら、可能性も拭えないのだが……。
と、ともかく、もしコレがドッキリとかならどこかにカメラが隠してあるに違い無い。
僕はキョロキョロとバスの中を見回した。
カメラらしきモノは見つからない。
素人目線で見つけるのは難しいのかもしれない。
「なに? 何か落としたとか?」
彼女が車内をキョロキョロする僕を見て、心配そうに聞いて来る。
「あっ……、いやぁ~……カメラが……」
「カメラ?」
「いや、何でもないんだよ……うん……」
「もう~、今日は朝からどうしたの~?」
彼女は、ただひたすらに、しらばっくれているのか僅かな動揺も見せて来ない。
こんなに、役者だったのか? ウソも上手に付けないヤツが、以外な特技だ。
僕はもう一度もしかしたら見間違いではないのかという、ほんの少しの希望を抱き、彼女の頭に視線を落とす。
(……なんか……増えている!?)
さっき見た時には、確かに一本だけだったハズだ。
それが、確実に幾本かに分かれているではないか!?
なんだなんなんだコレ!? まさか、増殖するのか?
いや、もしかして影になっていて見えなかっただけ、とか?
ともかく僕は、もう一度よ~く【ソレ】を観察してみた。
なんというのだろう、淡いベビーピンクの肉塊は、ぬらぬらとした粘液に塗れ、数本に先が枝分かれしている。何度見てもこんなモノを僕は、実生活で見た事は無い。
ゲームとかアニメでなら遭遇した経験は、そりゃ遡ればあるとは思う。
しかし、どう観察してもやっぱりコレは【触手】だ。
もしテレビのドッキリだとしても何故、【触手】なのだろうか……。
疑問は尽きない。
(そんな事、僕が考えてもどうにもならないかもしれないが……)
「次は~……終点、学園前~……」
結局バスの中では隠しカメラ等を見つけられなかった。
いつの間にか乗客もまばらになり、気が付けば同じ制服を着た学生しか乗っていない。
周りの学生達は、相変わらず彼女の奇妙な装飾に興味も関心も抱いていない。
(コイツらみんな、仕掛け人なのか……?)
バスを降り、彼女と並んで校門をくぐる。
ふと見た彼女の後頭部には、やっぱりうねうねと触手がのたうっていた。
青い空、白い雲、行き交う生徒達、可愛い彼女、そしてのたうつ【触手】……。
異様な光景だ。
しかし、バスの中と変わらず、誰も彼女のその異様な姿に気づいている素振りのある者はいない。
生徒も、教師も誰一人、彼女に視線を向ける者はいなかった。
そんな時──
「おはよう! 二人とも、朝から仲が良いね~」
「オハヨ! サナエ!、からかわないでよ~!」
彼女に話し掛けたのは、彼女と同じ弓道部で、僕らとクラスも一緒のサナエだ。
「いやいや~、二人を見ていると、まさに! 青春を謳歌してるって感じだよ~」
高校からの付き合いだが、サナエは僕の彼女と本当に仲が良い。
おそらく彼女は、僕といない時以外は、サナエと過ごしていると思う。
それだけ、彼女とサナエは気が合う様だった。
僕はと言えば、このいかにもな体育会系女子にからかわれるのは日常茶飯事で、突然後ろからラリアットを食らわせられたりする間柄だ。
男女の友情というモノは一説によると無いらしいが、サナエと僕は、性別等一切気にした事が無い友達と呼べる存在だった。
(サナエに確認してみるか?)
もしこれが、僕の彼女が仕組んだ[彼氏へのサプライズ大作戦]だったら、親友であるサナエは勿論彼女に協力してもらい、口裏を合わせ真実は語らないと思う。
しかし、その説はさっきのバスの中で消えたのだ。
今、僕が思う最も有力な説は、テレビのドッキリなのである。
まぁ、サナエの事だ、ノリノリでこのドッキリに協力している可能性は否定出来ない。
でも、僕が気づいている事を言えば、案外しらけて真実をわりとあっさり吐露するかもしれない。
サナエはとても熱しやすく冷めやすいタイプなのだ。
僕は彼女と並んで一歩先行くサナエの横に駆け寄り、こそっと耳打ちした。
「なあ、コレってどういう仕掛けなんだ?」
「は?」
しかし、サナエの表情は僕が一体何を言っているのか、皆目見当が付かないといった感じだった。
はっきりとドッキリに気づいている事を言わなければダメか?
「いや、ドッキリなんだろ?」
「はぁ? だから、何がよ?」
サナエは、僕の顔を訝しげに見ている。
テレビでは無いのか? じゃあ、この大掛かりなドッキリは、やっぱり彼女一人が仕掛けたとでもいうのだろうか?
「どうしたの?」
僕とサナエのこそこそとしたやりとりに気づいて、彼女が僕らの顔を不思議そうに交互に見比べた。
「いっ、いや、なんでもないよ」
「なんかよくわかんない事言ってた、ドッキリがどうとか……」
「ドッキリ?」
「わわわっ!! ち、違う! 昨日やってたドッキリのテレビの話だよ!」
「え~? 何? テレビの話?」
「昨日そんなのやってたんだ~?」
「あ~っ……うん……」
どういう事だ?
テレビのドッキリ番組じゃないのか?
それとも、サナエは仕掛け人として絶対に口を割らないつもりなのか?
そこまで義理がたいとも思えないが、何か弱みでも握られてるのか?
それにしたって、さっきのアノサナエのリアクションは本当に何も知らない様な反応だった。
コイツ以外と演技派なのか? そうは思えないが。
仕方ない、もう少し様子を見てみる事にしようか……。
僕はこの場でのこれ以上の追求を諦める事にした。
僕のクラスは、校舎の3階の教室だ。
下駄箱から、すぐ目の前の階段を昇り、廊下の一番端の教室へと向かう。
つまり、その間、人目に付かないなんて事は有り得ない。
上級生、下級生、先生、様々な人達とすれ違う。
けれど、誰一人として、彼女の頭部から生えた蠢く触手に視線を送る者はいなかった。
僕は、なんだか不安になった。
いや、今までも不安じゃなかったワケでは無い。
突然自分の彼女の頭から得体の知れないモノが生え、クネクネ蠢いているのだから。不安にならない方がおかしいだろう……。
けど、僕はこのあまりにも非日常すぎる現象に、どこかでコレは、誰かに仕組まれた、ドッキリなんじゃないかと、そのうちテレビのカメラやスタッフの人が来て、僕に「ドッキリ大成功!」的な言葉をかけてくる事を待っていた。
しかし、改めて考える。
バスの乗客、友達、もちろん彼女も、仕掛け人としてはよくあるパターンだと思う。
でも、全校生徒、教師までも全てを巻き込んでのそんな大掛かりなドッキリを、有名人でも無い僕にわざわざ仕掛けたりする事があるのだろうか?
万が一、あったとして、劇団員やエキストラならともかく、その辺の生徒がコノ触手の不気味さとリアリティを見て、驚きの声の一つもあげないのが、なんだか不安を掻き立てる。
みんな、リハーサルでもしたのだろうか?
それは余計に有り得ない気もする。
全校生徒が僕一人の為に、みんなでドッキリに荷担して、ワザワザ僕の知らない所でリハーサルまでするなんて……。
僕なら、多分参加しない。
もちろん、面白がってやるヤツもいるとは思うが、僕はそんな校内の有名人的存在でも無ければもちろん人気者でも無い。
見ず知らずの知りもしない生徒に、ワザワザこんな大掛かりなドッキリを仕込む意味がよくわからないし、そこに好き好んで加担しようとは思う者は、少ない気がする。
「どうしたの? さっきから、なんかボーっとして、もしかして風邪でも引いた?」
彼女は、僕の額と自分の額をコツンとくっつけた。僕と彼女の鼻先がくっつきそうになる。
コレは、思春期の男子にはたまらない。
目の前には大好きな彼女の顔、今日でなければ本当にドキドキのシチュエーションだったろうに……と、僕は少しがっかりしながら首を横に振った。
「大丈夫だから! 平気だって」
僕がそう言うと、今度は彼女の手の平が、僕のおでこにあてがわれた。
「熱は……無いみたいだね」
そう言って笑う。
「ちょっと~、朝から見せつけてくれるわね?」
サナエが、いつも通り冷やかして来る。
いつもと変わらない、日常。
触手さえなければ、昨日までとなにも変わらない。
なにも……。
「じゃあ、元気が出るおまじないしてあげる!」
「えっ……?」
彼女がぼくの手を取り自分の頭へ、そして自分の手を僕の頭に乗せる。
「痛いの痛いの~……私のとこにやって来い~」
そうして、まるで子供みたいにあどけなく笑って見せた。
僕は、その彼女の微笑みが好きだった。
思わず、その笑顔に見ほれていると……、なにか僕の手に液体がポタポタと落ちて来る感覚がする。
(えっ……?)
僕は、自分の手の方へと視線を向けた。
信じられない光景があった。
僕が彼女の頭に乗せた手に、ヨダレをたらし大きく口を開いた触手が、今にも噛みつきそうな勢いでいた。
ちなみに、触手の頭部(?)と思われる部分は、彼女の頭から生えた数本の触手の中央で、一際太くなっていて、先は花の蕾みたく膨らみ、それこそ口を開けば花びらの様に裂けて、中にギザギザの歯をもの凄い数生やしていた。
「うぎやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
僕は、今までの人生で出した事ないくらいに大声で叫んだ。
そして、情けなくへたりこみその場に尻餅をつく。
「ちっ、ちょっとぉ!? ナニよ? どうしたのよ!?」
サナエが僕のあまりのクリビツテンギョウぶりに、おろおろと辺りを見回して警戒している。
彼女といえば、僕の悲鳴に驚き、僕の頭に置いていた手をしばらく空中にかざしていたが、恐怖を感じて咄嗟にサナエに抱きついた。
「ぅっ、も、もしかして……ゴキブリ?」
彼女が僕におそるおそる聞いて来た。
そう、確かに……。
オマエの頭のソレを見るまでは、僕の世界で一番キモくて、グロくて、怖い生き物は【お台所の黒い生物兵器(ゴキブリ)】だった。
だったんだが……、今は違う。
今なら、【ゴキブリ】と共に、火星に移住も厭わない。
そんなモノより恐ろしい、生物がこの地球にはいたんだから!!
「もう、なによ~ゴキブリごときで情けないわね~?」
「わ、私もゴキブリはちょっと苦手だな~」
「はぁ、しょうがないわね! ゴキブリなんて出てきたら、このサナエ様が上履きで、スパーン! と、やっつけてあげるから安心しなさいよね!」
「は、はははははは……。お願いするよ……」
僕は、一気に体の力が抜けていくのを感じた。
サナエなら、【触手】もそんな感じでやっつけてくれるかもしれない。
しかし、なんなんだ【アレ】!?
確かに僕の手には今【アレ】から分泌されたであろう体液的な、おそらくよだれみたいなモノが付着した。
やっぱり、幻覚じゃないのか?
ま、まだだ! もしかしたら僕の頭がおかしくなっているだけなのかもしれない。
この現象は、僕だけが体感し、僕だけに【アレ】は見えているのかもしれない!
いっそその方が、気楽だ。
しかし、僕は次の瞬間、そんなうっすらとした希望すら打ち砕かれる瞬間を目撃する。
それは、本当に普段の日常なら気にも留めない、些細な事で、本当に一瞬の出来事だった。
「あれ~……」
声を発したのは、サナエだ。
僕は、サナエの次の行動に、全身が硬直していくのを感じた。
サナエが、手を伸ばす。僕の彼女の方へと手を伸ばしていく。
その動きはまるで、スローモーションの様に見えた。
そして……、サナエの手は彼女の頭部へ向かい、その指先が……!
「ほら、糸くずついてたよ?」
彼女の、頭部から生えた【アレ】に付いた糸クズを取った!
これが、頭でもまだ【触手】の生え際なら、僕だってココまで驚きはしない。
だが違う、確実にウネウネしてる方だ!
頭じゃない【触手】に付いた糸クズを取ったのだ!
「ありがとう!」
彼女は、サナエに満面の笑みを向けた。
僕の三つ目の仮説、【僕にしか見えていない】は、消えた。
じゃあ、なんで!?
みんな見えてるなら、なんで驚きもしないんだ!?
平常心でいられるんだ?
いや、待てよ……。
そうすると、【アレ】が幻覚でも、ドッキリでもないとしたらだ……。
もしかしたら、【アレ】は、南極基地に宇宙から現れた【遊星からの物体エックス】いやいや、もしかしたらある日右手が突然変異する【パラサイト】的なヤツなんじゃっ!?
もう空想やら妄想やら、僕の思考は止まらない。
コレが、かのSF映画の王道、異星人の侵略の第一歩なのでは!?
もうみんな【アレ】に、既に洗脳されてしまったんではないだろうか?
しかし、なんにせよそういうヤツは、大概地球征服やら人間に友好的ではないヤツらだ。
つまり、もし本当に彼女がそういったヤツらに体を乗っ取られているのなら、仲間になっていない僕に本性を現し、そのうち襲いいかかって来るやもしれない。
僕は、今日一日彼女を監視する事にこの時決めた。
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