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「で、いちごとミルク、どっちが好きやの!?」
「・・・ちょこというものは食べたことがない」
「はあ!?」
まじかいと目をむくひなこに、史月は拗ねたようにそっぽを向いた。そんな2人を見かねた女中が横から口を挟む。
「花祝様、御社では出されなかったのです。ご容赦を」
「ご容赦も何もチョコは女の子の力の源やぞ!? マジかい!」
「食べたことがない」
食べたことがないと繰り返して言うさまは子どものようだった。ただ、そっぽを向いていても目線は商品に釘づけなあたり、興味はあるらしい。
「さ、さすがにいちごとミルク・・・牛乳はわかるやろ? どっちが好き?」
「・・・苺」
「じゃ、こっちにしよか」
「でも」
「外れたら外れたで、それも楽しみの1つやろ」
ストロベリーツインチョコと書かれている右に置かれたピンクのパッケージをとるひなこに、ためらう史月。
そんな史月に、にっと笑うとひなこはそれを手にレジに向かって歩いていった。
それを呆然と見送った史月は、女中に話しかけられるまで、高鳴る胸をぎゅっと押さえていたのだった。
「ありがとうございましたー」
挨拶とともに外に出ると、すっかり夜も深くなっており、どこかの家のイルミネーションがきらきらと光っていて綺麗だった。それと同時に、店内で温まった身体が一気に冷えるのを感じた。
はあと息を吐き出すと白く曇るのが面白くて、何度もしているうちにリムジンへとつく。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ、
自分で開けようとするより早く女中がドアを開けてくれたため、礼を言うとはにかんだように返されて、面食らう。
そのまま乗り込み、どこかむっつりとした史月と隣り合わせで座る。
「ふみ、もう夜やしチョコは明日にしよか」
「・・・ああ」
「楽しみやね!」
「・・・そうだな」
「どしたん?」
「別に」
不機嫌そうな史月とは反対に、明るいクリスマスソングが鳴り響く町の中を、リムジンは進んでいったのであった。
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