抑止力

 友人の家に遊びに行った帰り、俺は街灯もまばらで暗い夜道を運転していた。

 すると突然、路地から自転車が飛び出してきて俺の車と衝突した。


 俺もスピードは出していなかったので、幸いなことに自転車の運転手は軽い捻挫で済んだから良かったが、気に食わないのは警官の対応だった。

 真っ暗な夜道、無灯火運転で飛び出してきた自転車を避けるなんて無理だ。それに十字路手前ではずっと徐行運転をしてた。どう考えたって車がいるのに分かってて飛び出してきた自転車が悪い。


 それでも俺に十割の責任を押し付ようとしてくる警官に腹がたって、自転車と車の立場を逆転させてやろうと思った。


 いつもならよく考えずに引っくり返すところだが、さすがに車の立場を強くするのは危険だと判断して思い止まった。

 悩むに悩んだ結果、俺と警官の立場を引っくり返した。

 俺にはちゃんとした良識がある。俺と警官の立場を引っくり返したって人様に迷惑はかけないさ…






 数年後、傲慢になった俺はあらゆる人に嫌われ孤独になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る