書類、書類、書類憐みの令……

 インドネシアへの出張工事に同行する事を引き受けた響さんは、その日から目まぐるしい忙しさに晒さられる事となりました。


 一口にインドネシアへの渡航と言っても色々とあります。

 観光、商用、数次……いくつかの種類がある「ビザ」を取得しなければなりません。そしてそれによって、現地で出来る事が様々に違うのです。まずその準備に追われる事となるのですが……。


「ああ、ごめん。インドネシアな、一週間ゆーてた言っていたけど、あれになったわ」


 ―――ハァ―――!?


 一週間と一ヶ月では、天と地はおろか、地球と銀河系程(と言うのは大袈裟かwww)の違いがあるのです!

 そして何よりも、取得するビザにも変更をきたします。


 申請したパスポートが届くまでに、申し込みから約一週間。

 それが届く前に、必要書類をかき集めておかなければなりません。

 それは単に、ビザ申請に必要な物を揃えるだけでは無く「申請に必要な書類を得る為に必要な書類」と言う、凄まじく面倒な事を熟していかなければならなかったのです。


 その最たるものが、仕事依頼先(大抵は現地仲介会社)からの「招聘状しょうへいじょう」と言う、いわば先方からの依頼書です。

 これを得る為には、こちらで作成した英文の履歴書やら、場合によっては卒業証明書なる物も必要なのです!

 ネットでそう言った書類が何処で入手可能なのかを調べ、電話で問い合わせ、確認して手配する。

 そしてそう言った書類は、少しでも間違いがあれば、全文再提出なのが大体の決まりであり、ちょっと訂正すると言う作業では済まないのです。


 また、先方の(現地国の)慣習により、その手配が即座に行われるかどうかも解らない所に注意が必要です。

 例えばインドネシアでは「ラマダン」の後に「レバラン」と言う、断食明け祭りが行われ、その期間は国民的休日となる様なのです。

 当然公的機関も休みであり、その間はどんな理由でも公的書類の取り寄せや手配が出来なくなります。

 大よそ一週間から10日あり、いくらこちらが迅速に手配を行っても、結局は待ち惚けを食らう羽目になる訳ですね。


 この様に、文化の違いや考え方、取り組み方が違うので、外国での仕事などはその手配から大変だったりします。

 大抵は「エージェント」と呼ばれる、資料作成請負会社が代行で行ってくれたりするのですが(有料)響さん達はこちらでのビザ発行までを自力で行う事にしたのです。


 スムーズに行うならばそうした方が断然いいですね。在日インドネシア大使館や領事館に赴いて「これがダメ」と言われて、何度も訪れる手間を考えればその方が良いに決まっているのです。


 30日の就労ビザを所得し、ひとまず国内での手配は概ね完了したと言っても過言では無い状態になったのが7月末の事でした。

(本当は7月中旬出発予定だったのですが、「ラマダン」「レバラン」の期間と、先方の明確な返答が得られなかった事による出発の延期がありました)

 そして8月上旬に出発確定となり、今度は荷物の準備に追われる事となったのです。


 

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