第289話(4-18)隠密部隊
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ヨアヒムたち主力部隊が親衛隊の注意を引き付けていた頃、潜入したアリスたち隠密部隊もまた大暴れしていた。
「たぬったぬう。村人さんたちを返すたぬっ」
アリスが手足を振り回し飛び跳ねるたびに、アリを連想させる”
親衛隊が身に着けた装甲服は、矢や弾丸をものともしない耐性がある。だが、何トンもある
「ええい、相手は少人数だ。包囲して射殺しろぉ」
「バウッ!」
「無理です隊長。あの犬、弾丸よりも速い」
「りふじんっ、ケツを噛まれたああっ」
更には第五位級といえ契約神器、魔術の権化であるガルムに対して鎧は無力であり、ドミノ倒しのようになぎ払われた。
人質に銃を向けて「近づけば殺す」と脅しつけた者も数人いたが、ある者はアリスが投げ飛ばした同僚の下敷きになり、ある者はガルムの爪に引き裂かれた。彼らは自身を狩人だと思い込んでいたが、この戦場では狩られる獲物に他ならず、余計な隙を見せた者から次々とノックアウトされた。
「クロオドめ、選べる手段が増えるホド強くなるのカ。おっトろしいコトだ」
一方的な蹂躙を横目で見ながら、カワウソことテルは、ぼやきながら砦を守る門に近づいていた。
「門の一部を爆発物に変化させテ……ハイ、ドォーン!」
テルは、あらかじめ仕込んでいた門も含めて、砦を守る要をことごとく爆破して塵に変えた。外で戦っていた主力部隊が、好機とばかりに防衛線を食い破るべく殺到している。もはや友軍が砦を制圧するのは、時間の問題だろう。
テルは小動物めいた身体をぶるぶると震わせて、ホッと安堵の息をついた。祈るように水かきのついた手を合わせる。
「フン。緋色革命軍の支配地域に入ってカラ、回復が早いナ。ファヴニルが、”オッテル”を名乗っていル影響で、奴に向かう祈りや感情の一部が流れ込んでいるのカ。このまま順調に奴を討ちたいところダガ」
千年前の
争いとは、そんなに甘いものではない。予想もつかない災厄や不運は、いつだって見えない死角に潜んでいる。
「与えラれた力を盲信するバカならば問題ない。だが気をつけろヨ、クロオド。敵にもきっト将はいる」
テルの懸念は正しかった。
大同盟優位に進んだヘルバル砦攻略戦。
しかし、決着はいまだ着かず新たな転機を迎えようとしていた。
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