自然体の二人

「ハイ、ユウ。」


「ん、ありがと、ちょうど飲みたいと思ってた。」


「そうでしょ。」


ユウはギターを弾く手を止め、レナの差し出した缶ビールを受け取ると嬉しそうに笑ってタブを開けた。


「なんで分かるんだろ?」


「何となく?」


レナも隣に座って缶ビールを飲む。


二人並んでビールを飲みながら、穏やかな時間を過ごす。


レナは缶ビールをテーブルの上に置くと、そっとユウの左手を握って、甘えるようにユウを見上げる。



(あ…この顔…。)


ユウも右手に持っていた缶ビールをテーブルの上に置くと、その手をレナの頬に添えて、優しく唇を重ねる。


最近、レナがキスして欲しい時にする顔が、ユウには分かるようになってきた。


(かわいい…。)


レナのなんでもない仕草や、ユウにしか見せないこんな顔も、レナのすべてがたまらなくかわいくて、ユウはレナと一緒にいられることの幸せを毎日噛みしめている。


そのうちキスはどんどん深くなり、キスだけでは抑えきれなくなる。


「ね…レナ、ベッドに行こう?」


ユウが耳元で優しく囁くと、レナは小さくうなずいた。





人気バンド`ALISON´の188cmの長身のギタリスト片桐悠29歳と、アメリカ人と日本人のハーフの両親の元に生まれ、ファッションブランド`アナスタシア´のモデルを務めながらカメラマンとしても活動している高梨アリシア怜奈29歳。


幼なじみだった二人が、想いを寄せ合いながらもいくつもの涙と別れを乗り越えて結ばれ、一緒に暮らし始めて半年。


季節は春から夏、そして秋へと移り変わっていた。


この半年で、二人を取り巻く環境が大きく変わった。


二人で暮らし始めて間もない頃は、周りの目を気にすることもなく、手を繋いで買い物に行ったり、二人で仕事終わりに待ち合わせてバーに寄ったりしていたのだが、ユウたちのバンド`ALISON´の人気が急上昇し、知名度がどんどん上がるにつれ、背が高く整った容姿のユウはどこに行っても目立ってしまう。


おまけに、ユウとレナが再会した日に撮影されたプロモーションビデオがテレビや街頭のテレビ画面に流れるようになると、そのビデオに出演していたレナにまで注目が集まり、“この美女は誰だ?”と、一時騒然となった。


ファッションデザイナーであるレナの母親のリサが経営するファッションブランド`アナスタシア´で、幼い頃から細々とモデルを務めてきたレナだったが、ブランドのポスターやカタログなどにその姿を現す以外のモデルとしての仕事と言えば、レナを子供の頃から撮り続けてきた、かつてのレナの婚約者でもある須藤の写真集にモデルとして登場するくらいで、目立つことの苦手なレナはファッションショーやテレビなどの仕事はまったくしてこなかった。


それが、リサと旧知の仲だと言う`ALISON´の事務所の社長に頼み込まれ、リサの顔を立てるだけのつもりで引き受けたプロモーションビデオ出演の仕事で、レナもモデルとして注目を浴びることになってしまったのだ。


それでもレナは変わらずカメラマンの仕事を続け、時々`アナスタシア´のモデルとして、リサのデザインした洋服を着こなし、そのカタログや店頭のポスターなどを華々しく彩った。


最近は一緒に外を歩くと、一般人にスマホのカメラを向けられ、足早にその場を立ち去る二人だったが、二人の部屋で一緒に過ごす時間だけは人目を気にすることもなく、穏やかで優しく甘い時間を過ごしていた。




「明日はどうする?」


ベッドの中で、レナの髪を優しく撫でながらユウが尋ねる。


久々に二人そろって休みが重なり、どこかへ出掛けようかと思ったのだが、レナはユウに腕枕をされながら考える。


「二人で出掛けたら、またこの前みたいに追いかけられるんじゃない?」


「んー…そうだけど…。別にやましいことしてないしなぁ…。」


「ホントにね…。私たちは、なんにも変わってないのに…。」


「むしろ、一緒にいない方が不自然なくらいなのにな。」


「うん、そうだよね…。」


「じゃあ、車でどこかに行く?」


「ドライブ?」


「うん、カメラ持って。」


「それいいね。」


「少しくらい朝寝坊してもいいよね。」


「ん?」


ユウはレナの唇に甘いキスをする。


「いいでしょ?」


「ユウったら…。」


そして二人はじゃれ合うようにキスを繰り返し甘い夜を過ごした。





翌朝。


ベッドで寄り添いながら安らかな寝息をたてて

いる二人を叩き起こすように、ユウのスマホの着信音が鳴った。


ユウは眠い目をこすりながら、スマホの画面に目をやる。


「事務所から…?」


時間はまだ朝の7時半。


レナも、着信音に驚いて目を覚ます。


何事かと思いながら、ユウは事務所からの電話に出た。


「もしもし…。」


「ユウ、テレビ見たか?」


マネージャーの慌てた声が響く。


「テレビ?いや、まだ寝てたんで…。」


「じゃあ、今すぐ見ろ!!」


「はぁ…。」


不思議に思いながら、ユウは軽く衣服を身に着けると、リビングへ行ってテレビをつけた。


「えっ…。」


簡単な服装に着替えたレナも、ユウの後を追ってリビングにやって来る。


「何これ…。」


それはテレビの情報番組に流れる芸能情報で、

ユウとレナが手を繋いで歩いている写真が画面いっぱいに映し出されていた。



“人気バンド`ALISON´のギタリストに熱愛発覚!!お相手は美人ハーフモデルのアリシア!!”



(いつの間に撮られたんだろう…?)


レナは画面に映る二人の写真を呆然と眺める。


「オマエの写真が週刊誌にスッパ抜かれたんだよ!テレビはどこつけてもオマエの話題で持ちきりなんだ。とりあえず、これから車で迎えに行くから事務所に来てくれ。マンションの下に着いたら電話するから、それまで部屋から出るなよ!」


「ハイ…。」



電話を切るとユウは呆然とテレビを見つめた。


(なんか…オレたちが思っている以上に大騒ぎ?)


「ユウ…。」


不安そうにユウの顔を見上げるレナの頭を優しく撫でると、ユウは苦笑いする。


「二人で歩いてるとこ撮られて、写真週刊誌にスッパ抜かれたんだって。なんか、大騒ぎ。」


「……。」


「大丈夫だよ、レナ。」


ユウは不安そうにしているレナを抱きしめた。


「オレたち、やましいことしてないもん。」


「うん…。」


「とりあえず、事務所から呼び出し食らったから、行ってくる。今日はどこにも行けなくなったけど、ごめんな。レナも、悪いけど今日は家にいて。」


「うん…。」



ユウはマネージャーの運転する迎えの車で、事務所へと出掛けて行った。


一人部屋に残されたレナは、カーテンの隙間からそっとマンションの外を覗く。


「何これ…。」


たくさんの報道陣が詰めかけ、辺りは騒然としている。


(とてもじゃないけど、外になんて出られないよ…。)


レナは、一人出掛けて行ったユウが心配になってため息をついた。


(ユウ…怒られちゃうのかな…?もし、別れろとか言われたらどうしよう?)


つけっぱなしのテレビからは、飽きもせず二人の熱愛を報じる声が聞こえる。


(でも…ユウが言ってたように、私たち一緒にいてやましいことなんてないし…。)


レナの不安を煽るように熱愛を捲し立てるコメンテーターの声が耳障りになったレナは、ため息をつきながらテレビを消した。




「来たか。」


事務所に着くとまっすぐに社長室へ案内されたユウは、目の前にいる社長に頭を下げる。


「おはようございます…。」


「やられたねぇ。」


「はぁ…。」


社長は週刊誌をめくりながら、誌面に掲載された二人の写真に視線を落とした。


「彼女、高梨さんの娘さんだろ?」


「ハイ。」


「で、二人はどうなの?ホントに付き合ってんの?」


「ハイ。」


何もやましいことはないのだからと、ユウはまっすぐに社長の目を見て答えた。


「そうかー。いつから?」


「半年くらい前から付き合ってます。」


「きっかけはPVか?」


「いえ…。彼女とは幼なじみで…。でもまぁ…あの日の雑誌の撮影のカメラマンが彼女で、10年ぶりに再会して…。それがきっかけと言えばきっかけなのかも…。」


「なるほどねぇ…。」


社長はユウの話を聞きながら、まじまじと週刊誌の写真を眺める。


「で、二人は真面目に付き合ってるのか?」


「もちろんです!!」


勢い良く返事をするユウに、社長は笑い声を上げた。


「いや、別に清純派が売りのアイドルでもないし、真面目に付き合ってんなら、オレとしては別にいいんだけどさ…。高梨さんの手前もあるし、いい加減な付き合いならやめとけって言うつもりでいたんだけどな。」


「はぁ…。」


「とりあえず、今はオマエらのバンドにとっても大事な時期だから、できるだけ目立たないように気を付けとけ。出る杭は打たれるって言うだろ?オマエらの人気を妬んだ奴等が、どこでオマエらを陥れようと狙ってるかわからんからな。」


「ハイ…。」


そこでユウは、ふと思い出す。


「社長…。」


「なんだ?」


「オレたち、付き合い出した頃から一緒に暮らしてるんですけど…。」


「そうなのか?!」


社長は顎に手をあて、うーんと唸った。


「まぁ、こんな写真を撮られたからって離ればなれになるのもおかしな話だしな…。それこそ二人の付き合いが真剣じゃないみたいだし。」


「オレたち、別にやましいことなんて何もありませんよ。」


「そんくらいオマエの顔見りゃ分かるよ。」


社長はおかしそうに笑うと、週刊誌をゴミ箱に投げ捨てた。


「ま、とりあえず高梨さんとメンバーには、騒ぎになったことへの詫びは入れとけ。そのうち騒ぎも収まるだろ。くれぐれも、目立つことだけはするなよ。」


「わかりました…。」


その後ユウは、マネージャーの運転する車でマンションまで送り届けられ、レナの待つ部屋に戻ったのだった。



「ただいま。」


「ユウ…!!」


事務所から帰ってきたユウに、レナはたまらず抱き付いた。


「熱烈な出迎えだなぁ…。」


ユウは笑いながらレナを抱きしめた。


「何か、言われたの?」


「何かって?」


「…別れろとか…。」


不安そうにユウを見上げるレナの頭を大きな手で撫でながら、ユウは優しく笑う。


「大丈夫だよ、レナ。二人は真面目に付き合ってるのかって聞かれただけ。あと、騒ぎが収まるまでは目立たないように気を付けとけって。社長、リサさんと親しいから、リサさんの手前もあるし心配してたんだってさ。」


「ホント?」


「嘘ついてどうすんの。」


「良かった…。」


レナは心底ホッとしたように笑うと、ユウを抱きしめた。


「もう、ユウと離れたくないもん…。」


(こういうところ、ホントかわいいなぁ…。)


ユウはレナの額に優しく口付けると、レナをギュッと抱きしめる。


「それは、オレも同じだから。」


「うん…。」


二人は額をくっ付け合って微笑んだ。



翌日から、レナはユウの車で仕事に行くことになった。


駐車場が地下にあり、マンションの外へ出るのも車の方が目立たないので、普段は電車で通うレナも車で通勤することにしたのだ。


ユウが仕事に出掛ける時には、マネージャーが迎えに来ることになった。


人気と知名度が急激に上がり始めたので、そろそろ送迎をつけようと思っていたところだからちょうど良かったと、マネージャーは笑った。




ユウは熱愛報道が出た後、メンバーたちに騒動になったことを謝った。


二人が紆余曲折の末に結ばれ一緒に暮らしていることを知っていたタクミは今更と言う感じだったが、二人が付き合っていることも知らなかったハヤテ、トモ、リュウの3人からは、二人の馴れ初めやどんなふうに暮らしているのかを根掘り葉掘り聞かれ、ユウは照れ臭そうに言葉少なくポツリポツリと話した。



二人が物心つく前からの幼なじみであることや小さい頃からずっとレナを好きだったこと。


ユウが何も言わずにロンドンに行ってから10年間は一度も会わなかったこと。


PVと雑誌の写真撮影の日に再会したこと。


レナが須藤と結婚するためにニューヨークへ行った時に1度は離ればなれになったが、レナが自分を選んで日本に戻って来てくれたこと。


それから二人で暮らしていること…。



ユウは順を追って、ことのなりゆきを説明した。


照れ屋のユウは自分のそういった話をあまりしたがらないのだが、今回は望まない騒動で迷惑をかけてしまったこともあり、これからも音楽活動を一緒に続けて行く仲間には、自分たちが真剣に付き合っていることを話しておこうと思ったのだ。



「しかし驚いたよな。朝起きてテレビつけたら、ユウと高梨さんの熱愛がバンバン流れてるんだからな。」


トモが冷やかすように大袈裟に言う。


「オレもビックリしたよ。何かの間違いじゃないのかって。」


ハヤテも週刊誌をまじまじと眺めながら言う。


「しかし、この写真はねぇよなぁ。高梨さんカメラマンなんだから、キレイに撮り直してもらえよ。」


リュウの言葉にユウ以外のメンバーは大笑いする。


「おまけに彼女、モデルだよ?この写真のクオリティーの低さは失礼だよねぇ。」


タクミも週刊誌を覗きこんで言う。


「オマエら…おもしろがってないか?!」


照れ臭さに耐えかねて、ユウが4人を睨み付けた。


「まぁまぁ…。気にすんなってことだよ。」


ハヤテはユウの肩をポンと叩く。


「彼女と歩いてるだけで話題になるなんて、有名になった証拠だろ?」


リュウもユウの背中を叩いて笑う。


「オレたちは大丈夫だからさ、彼女大事にしてやれよ。」


トモが、手を伸ばして背の高いユウの頭をワシャワシャと撫でる。


「つまんない報道なんか気にすんなって。ユウとあーちゃんが幸せなら、オレも嬉しい。」


タクミが優しく笑いかける。


温かい仲間の気遣いにユウは胸がいっぱいになって、心からお礼を言った。


「うん…ありがとな…。」



その日ユウは、一人でリサの職場である`アナスタシア´の社長室を訪ねた。


リサと会うのは、レナと暮らし始めて2ヶ月が過ぎた頃に挨拶して以来だ。


会議が終わるまで少し待っているように通された社長室の応接セットに腰掛けながら、今回はレナに何も言わずに一人でリサの元を訪ねたこともあり、ユウは緊張しながらリサを待っていた。


(リサさん、心配してんだろうな…。)


程なくして、会議を終えて社長室に現れたリサはニコニコと笑ってユウに声をかけた。


「お待たせ!ユウくん、久し振りねぇ!!」


緊張の面持ちでリサと対面したユウだったが、その明るさに拍子抜けしてしまった。


「お久し振りです…。」


鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているユウを見て、リサはおかしそうに笑う。


「今日はどうしたの?」


「いや、その…。」


言いにくそうにしているユウを見て、リサはまた笑った。


「ああ、もしかしてあの話ね?」


「ハイ…。」


秘書が運んできたコーヒーに口を付けると、リサは穏やかに微笑んだ。


「ユウくんと一緒に暮らすようになって、レナは本当に幸せそうにしてるの。たまに会っても、ユウくんの話ばかりしてるわよ。」


「えっ…。」


(それってどんな話?!)


「レナは小さい頃から、ユウくんのことが大好きだったからね。ユウくんがいなくなった時には本気で心配もしたけど、人前であまり感情を出せなかったあの子が、嬉しそうにユウくんの話をするの。ユウくんと一緒にいられて幸せだって。すごく大事にしてくれるって…。聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい、幸せそうに話すのよ。」


「そうですか…。」


ユウの知らないところで、レナはそんなふうに自分のことを話してくれているのだと思うと、嬉しくて胸がいっぱいになる。


「私は、何も心配なんてしてないわよ。レナが幸せなら、私も幸せだから。自分の子なのに誉めすぎかも知れないけど、不器用なりに思いやりのある子だと私は思ってるから、ユウくん、これからもレナをよろしくね。」


「ハイ。ずっと大事にします。」


ユウがリサの目をまっすぐに見てそう言うと、リサは嬉しそうに微笑んだ。



レナより一足先に部屋に帰ったユウは、レナが仕事から帰るのを待っていた。


目立たないように車で通勤したものの、どこかで報道陣に問い詰められてはいないだろうか?


報道陣だけでなく、撮影の仕事に支障は出ていないだろうか?


(片時も離れずそばにいてやれたら、こんな心配しなくて済むのに…。)


ユウはレナの帰りを待ちながら、キッチンで夕食の準備を始めることにした。


いつもはレナが食事を作ってくれるのだが、今日はレナも何かと疲れているだろうと思い、冷蔵庫を開けて食材を探し、献立を考える。


(パスタでも作るかな…。)


高校生の頃、お互いに仕事で忙しい母親を持った二人は、よく一緒にキッチンに立ち、夕飯の支度をした。


料理は必然に迫られて身に付いたことだったが、レナと一緒に料理を作るのはとても楽しかった。


(ナポリタン、二人でよく作ったな。)


学校帰りに二人でスーパーへ寄って、夕飯の献立を考えたり、一緒に料理を作ったり。


今考えると、二人はあの頃も今と同じようなことをしていたなと思う。


あの頃は幼なじみとして一緒にいた二人が、今はお互いを想い合う恋人同士として一緒に暮らしている。


レナへの想いをずっと伝えられず長い間その想いを胸に秘めていたユウにとって、それはまるで奇跡のようにも思えた。



ユウは手際良くタマネギやピーマン、ベーコン、マッシュルームを切ると、パスタを茹で、フライパンを火にかけ切り分けた材料を炒めた。


一人でいた時には億劫だった食事の支度も、レナの喜ぶ顔を思い浮かべると楽しくなる。


(やっぱりオレ、レナには甘いのかも…。)



仕事から帰ったレナが、リビングのドアを開けて嬉しそうに笑う。


「いい匂い!!」


「おかえり。」


「ただいま。」


レナはキッチンに立つユウに後ろからギュッと抱きついて、フライパンの中を覗き込んだ。


「おいしそう!」


「もうできるよ。腹減っただろ?」


「うん!」


無邪気に笑うレナがかわいくて、ユウはレナの唇に軽くキスをする。


「おかえりのキス。」


「ふふっ。」



一緒に暮らし始めた頃はキスをするタイミングも掴めないほどレナに触れるのをためらっていたユウだったが、今ではなんの躊躇もなくレナを抱きしめ、キスをする。


レナからもユウに抱きつくほど、いつしか二人の関係は甘い恋人同士となった。


そんな些細な日常が、二人にはとても幸せに感じられた。


二人でいる時は、不安も吹き飛ぶほど自然に笑い合える。


思いの外、世間を騒がせた二人の熱愛も、そのうちなんとなく収まって、また穏やかな元の日常に戻るのだろうと、ユウは思っていた。



これから起こる二人の関係を脅かすできごとなど、その時の二人は予想さえしていなかった。

























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