第一話____別次元生活スタート
先程までの静けさはどこにもない。
目を開けば、そこには人がいる。人以外の種族もたくさんいる。別の次元に来ることが分かっていても実際に来てみると呆然としてしまうものだ
しばらくそこにぼーっと突っ立っていると後ろから声がした。
「邪魔だ!どいたどいた!」
体は反射的に横にずれた。急な声掛けに驚きながらも実感した。俺は生きている周りのみんなも生きている。それを実感したと同時少し疑問に思った。『 本当にこの次元はデータでつくられているのか? 』確かに人以外の生物はいるし3次元の世界とは違う町並みだ。例えるならRPGの大きな街のようだ。城があって城下町がある。門の外には草原が広がっている。しかしデータ的な要素はどこにも見当たらない。太陽があるし空もある、恐らく夏なのだろう暑さも感じる。前にいた3次元とほぼ変わらない。でも空気は美味しい。前にいた次元の汚染された空気よりも断然綺麗だ。
「ま、何も知らない世界で考えていても仕方ねぇか」
とりあえず城下町を歩き回ることにした。
本当はその変にいる奴に話を聞くのが早いかも知れないがそれがきっかけで面倒ごとに巻き込まれる可能性も0ではない。自分の平穏の為なら一切生き物と関わらない覚悟を持っていた
しばらく周りをキョロキョロしながら歩いていた
「はぁ〜、人が多すぎる。人外も多すぎる 俺の面倒ごと回避センサーは常に警戒レベルMAXだよ 既に俺の心は平穏じゃねぇよ」
まるで砂漠で水も持たずに歩く死にかけの人のように歩いていると 八百屋のような店を見つけた。見たことがない食べ物がたくさんある。
まるで芋虫のような見た目をしたものや紫色でいくつものトゲがついたもの。
「こんなもの食ったら腕が伸びるようになって海賊の王を目指さないといけなくなるんじゃねーか?」
そんなことを言いながら見ていると
「なんだ兄ちゃん、買い物か? もっとこっちに来て商品見てけよ」
(やべぇ...)
見たこともない食べ物に呆気を取られていたせいか、面倒ごと回避センサーが働かなかったようだ。歳は恐らく30代後半、髭面でガタイのいいおっちゃんに話しかけられてしまった。仕方なくこの人から色々話を聞くことにした
「この食べ物 食うと腕が伸びたり 手から火を出せたりするよな」
「そんなわけねぇだろ!何だお前!何うちの商品をとんでもねぇ偏見の目で見てくれてんだ!!」
「あ、違うんだ。」
「ちげぇーよ!そんなもん どこの店行っても売ってねーよ!まぁ魔法使いや魔法剣士の魔力を一時的に上げる植物ならどっかに売ってると思うぜ。生憎そんなもんこの店にはねぇ。 で、買うの買わないの」
今日はこれ以上 他の店に寄るのはごめんだと考え何か買っていくことにした
「何か生で食えるものはねぇか?」
「生で食えるものか。このゴロツキって言う植物は生で食うものだ。森に行けば沢山あるから値段もそんなしない。どうだ?」
「ゴロツキ...ならず者の内蔵かなにかか?」
「だからちげぇーよ!どう見たって普通の植物だろ!ならず者の内蔵が森に行けば沢山あるから値段もそんなしないってどういう状況だよ!!!」
「それもそうか。まぁその植物、見た目は芋虫みたいで気持ち悪いけど買っておくことにするよ」
「いもむし?何だか知らねぇけど買うんだな。一つ50ベルだ」
ゲームでしか聞いたことのないような通貨に少し困惑した。
(とりあえず50円でも渡しておくか)
当たり前のような顔をして50円を渡した
「あんた、この世界には来たばっかりか?」
「そうだけど何で分かったんだ?」
「ここ一年で急に増えたんだよ。あんたみたいな奴が。そいつらはみんなこの通貨を渡してくる、確か『 円 』っていうんだっけか?全く困ったもんだよ」
「そうか じゃあこの通貨はつかえねぇのか...」
「いやそんなことはねぇ、あんたら確か『人間』って種族だったな。人間が持ってくるこの50と書かれた円と50ベルの重さが一緒だ だからうちでは円も扱っているよ。ただし円を扱っている店は多くねぇどこでも使えるってわけじゃねぇから気をつけな」
「そうか。ありがとう 機会があればまたくるよ」
「あんたこれからどこへ行くんだ?」
「宛なんかねぇよ。強いて言うなら『平穏』を探して旅をするってとこかな」
「宛がないなら役場に行きな、そこを真っ直ぐ行くと広い道に出る。その広い道沿いにある少し大きな建物がそれだ」
「この世界にも役場があるんだな。で、その役場では何が出来るんだ?」
「あんた見たところジョブを持っていないな、この世界ではジョブがないと生きていけない。生きていけないと言うと言い過ぎな感じはするがジョブを持たない奴は誰にも必要とされない。他にも 役場にはその街の色々な情報が掲示される。まぁジョブの詳しい話は役場で聞いてくれ」
「そうか、じゃあ早速役場に行ってみるとしようかね、色々教えてくれてありがとな 」
「おう、せいぜい頑張りな!兄ちゃん」
シグマはとりあえず役場に向かうことにした。
ジョブという言葉に少し面倒くささを感じながら役場へと歩き始めた
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