第2話「ショットバー」

カランカラン


ウェスタン調の内ドアをあけて、これまたウェスタン調の服装の客が入って来た。客の男が腰には、ガンベルトに入れられた銀の銃、SAA(シングルアケションアーミー)が光っていた。


「よぉ!オヤジ。いつものくれ」


カウンターの端で客の男が言うと店のマスターは、ワイルドターキーをタンブラーにストレートまま注ぐと、客の男に向けてカウンターの上を滑らせた。


スーーー、パシン!


客の男はタンブラーを受け取ると、グイッと飲み干した。


「てめえ!決闘だあ」


奥の席から声がし、騒がしくなった。


「やってやろうじゃないか、表に出ろ!」


そこにマスターが一言言った。


「外は勘弁してくれ、保安官が来ちまう。客の皆さん、ちょっとご協力お願いします」


そうマスターが言うと、他の客がテーブルをどけ空間を作った。


「さあ!やるぞ」


二人の男が背を向けあって、店の中央にたった。


「では、マスターの自分が決闘の立会人を務める!双方、覚悟は良いか?」


二人の男がうなづく。


「では、10歩歩いてから振り向いて撃つように!まず1歩」


男たちが左右に分かれる。


「9!10!!」


その瞬間、男たちは振り向きざまにガンベルトから銃を抜く!!


「ガハッ!俺がやられるなんて」


勝負は一瞬だった。片方の男は膝から崩れて言った。


「早打ちジョニー!それが俺の名さ。と、言ってももはやコイツには聞こえないかな?今頃、地獄行きのトレインに乗ってる頃だしな!!」


そう男は言ってカウンターに向かった。マスターは新しい酒をタンブラーに注いだ。


「すげー!ジョニーすげーよ!!」


パンパン!


と、周りの客は銃を取り出し上に向けて感激の砲を撃った。


「おいおい!勘弁してくれよ。雨漏りがひどくなるだろ!?」


と、マスターが言うと、客たちはゲラゲラ笑った。


「いや~、やられたやられた!!」


みんなの笑い声を聞いて、先ほどやられた男が立ち上がった。


「マスター!ビール」


マスターはその男にバドワイザーを出した。


「店が盛り上がりましたね!」


やられた男がマスターに言う。


「ああ、イベントやって良かったよ!!」


『最近、売り上げが減ってたんだよなあ』


店主は内心、ホッとしていた。

今日は月一で開催されるショットバー名物『ウェスタンカーニバル』の日。


パンパン!


店のアチコチには的があり、射的も楽しめた!もちろん、ど真ん中なら、好きな飲み物一杯無料だ!来店する客たちは、みなウェスタン調の服装とエアガンやモデルガンを持ち寄り、ウェスタン気分でお酒を飲んで楽しむのだ。


パンパン!


その様子を見て、常連客の一人が言った。


「これがホントのショットバーだな」


パン!


おしまい

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