第54話
《次の日 病院内休憩室にて》
宮本さんがお見舞いに来たんや。
始めは孝典さんやった。
いろいろ話をしていたんやけど、孝典さんの顔かわ冴えんかったんや。
理由は、宮本さんが苦手らしいざ。
そういえば、宮本さんも孝典さんを嫌っていたような………
今、私は特別個人が並ぶ、最上階の休憩室にいる。
こんな所を休憩室に使うのは、お金持ちばっかりやろなあ。
「孝典くんは、今の所、寝てるようやな」
宮本さんが言うたわ。
「はい、だから宮本さんとデートやわ!」
少し笑って言うたんや。
もちろん社交辞令や。
宮本さんも、渋い笑顔で笑たざ。
オカンはいるわけない。
いたら収集つかんようなる。
「孝典くんは、孝典くんやな。今でもや」
「宮本さんは孝典さんが、嫌いなんですか?」
私は率直に聞いたわ。
「単刀直入やな! 正直、好きか嫌いかで言ったら、気に入らんな。彼を小さい時から知っとるからやけど……ちなみに、連は嫌いではないらしわ」
そうなんや……
親密な付き合いをしとる宮本さんやから、こうなるんやろな。
「あっ、そうそう、この前のヒントありがとうございます」
「ん? あっ、ヨモギ羊羹やな。あれは早苗さんの発想力の賜物やざ。俺と連は、ご飯食べとっただけやし……」
アハハ……確かにや。
けどもこの雰囲気が、発想を呼び込んだようにも思えてるんや。
宮本さんの雰囲気は、なんやろ? まあ不思議な感じなんやって。
「ところで、早苗さん! 孝典くん、明日は勝負言うてたなぁ」
私は笑顔が消えたわ。
間違いわ!
あの事や!
「……実は、聞いて下さい」
《その頃、桜井は……》
「由美子ちゃん! そっちも来たんか!」
「……]
「そや、大名閣が自爆したんや! それなのに、なんで西地区を恨むんや」
「……」
「由美子ちゃん、しばらく早苗は使えへん。それに羊羹フェアーは二月の雪が落ち着いた辺りや」
「……」
「派手やな、福井の人間かコイツは! こんなんしても、福井では受けんざ!」
「……」
「まあ、今から作成会議やな! しかし、いきなりこんな、アホなモン送るなんて……大名閣も堕ちたモンやわ!」
「……」
「わかったざ、じゃあ、スマホ切るざ」
「祥子、大名閣がウチらにケンカ仕掛けたな」
「お母さん、このケンカは買わなアカンですわ」
「ほや、これは桜井の運命が決まるケンカやざ」
「大袈裟ですって! 負ける気はありませんけどね」
《早苗と宮本さんの話は……》
「なるほど、意中は決めてるんか!」
「はい……幸隆を選びました。これは幸隆が……幸隆が生き続けるからやなく、アイツと居ると肩の力が抜けるからです。けど……」
「けど……なんや」
宮本さんが聞いてきたわ。
けど、この後の言葉は知っとるはずや。
「その先を言いなさい。これは、早苗さんの宿命やざ」
厳しい口調で、宮本さんが言うたわ。
宮本さんは、知ってるようやって。
「けど……私、嘘を付かなアカンですか? 時間のない、孝典さんに嘘を付かなアカンのか?」
私は泣きながら、宮本さんに聞いたんや。
「……宿命は、自分で切り開かなアカンざ」
宮本さんが優しい口調で、諭してくれた。
やっぱりやわ。
けど、間違いないんや。
私の気持ちは、私しか決められんのや。
「それじゃあ、早苗さん、俺は帰りますざ。宿命から逃げてはいかんよ」
そう言うと、宮本さんは席を立ったんや。
一人になった私は、しばらく泣きじゃくり、そして二階の購買に行こうと思ったんや。
買うもんはない。
けど、孝典さんに顔を合わせ辛いんや。
少し気を取り直して、孝典さんに会わないとアカンのや。
そうでないと、心を読まれそうで……
さて、一度降りよう。
そして気分転換をはかるわ。
私……弱いなぁ。
はい、お菓子やざ クレヨン @5963
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