そして真相は闇に葬られるApnea

サカイヌツク

そして真相は闇に葬られる――序――

第1話 そして真相は闇に葬られる 

 父に壬生沖田みぶおきたを持ち、母に壬生巴みぶともえを持つ俺の名は――壬生エース。

 夢は世界を一周すること。


 学校を卒業した後、俺はその身一つで陋屋ろうおくから世界一周の旅へと出立した。元々俺や母は父と別居していたため、彼との関係性は薄く、旅立つさいも母とだけ別れを済ませてここまでやって来てしまった。


 現在は絶海のとある孤島の一本道を踏みしめている。


 俺達が住む世界、『神奈備カムナビ』は未だその全貌が明かされていない。

 どこまでも果てなど無く、世界は闇のヴェールに包まれたままだ。

 俺の夢である世界一周も、前人未到の偉業としての箔があった。


 急がねば、誰かがこの世界の全貌を明かさぬ前に夢を果たせねば。

 そうでなければ、涙を押した母との別離も無意味になってしまう。

 必ず夢を果たすとも、絶対とも言ったが、だが今生の別れだった。

 

 今は降り立った孤島の一本道を辿っている。ここに降り立つ前、中空から俯瞰ふかんして確かめたが、島の中央には妖艶ようえんな洋館が在った。洋館まで続く一本道の両脇には常緑樹が生い茂り、自然の臭いが鼻につく。


 そこで俺は五人の美しい女性達と出逢うのだが、まさか彼女達を愛してしまったがために、後々酷い葛藤かっとうを、酷い苦しみを抱えるなんて予想だにしていなかった。だから俺は思う、『人生とは、苦衷くちゅううちにある』と。


 それでは、壬生エースの身に起こった事件の真相をこれから語るとしよう。

 父が何者かに殺されたその全容を、これから語るとしよう。

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