封印されてた記憶4

 グオオオオオと、吠える魔物。最早、それは人の様な形をしたモノなだけ。死人アンデッドのグールは、不死系の魔物の下位クラスモンスターに位置している。比較的倒し易い部類ではあるが、どんな魔物も数が多ければ危険極まりないので注意が必要ではある。今回そこにいるのは、5体なので殲滅できる数ではある。


「行くよ、アレク!」

「はい。ティーナ」

 横にいるアレクサンダーに、私は告げる。右手には魔導銃、左手には杖と言う、あまりやらない二刀流。銃の射程内まで近づき、魔導銃を構え撃ちまくる。

 弾は聖属性の弾丸、ホーリーバレットだからアンデッドには効き目抜群。

 また、狙う箇所により、ダメージ率が変わるのが分かったのは、弾丸の節約を考えて撃っていた時に、たまたま狙った箇所ではない所に命中した際、何時もだったら後二発は必要なのだが止めをさせた事で発覚。

 それ以来、ある程度の狙撃箇所を決めて戦闘をしているのだ。

 不死系の魔物の面倒なとこは、頭をぶっ飛ばしても死なない(消滅しない)所である。

 大体狙うのは、頭、脚、手の順である。腹に風穴を空けても奴等は、へっちゃらで突っ込んで来るのだ。動きを封じてしまうのがベストなんだよね。


 ガンガンガンガン!!

 まず、グールの頭部を狙い撃ちする。撃ち抜かれた頭は、ホーリーバレットの属性効果で頭だけが消滅する。けれども首無し騎士と同じく、案の定そのままの状態で突っ込んで来る。冷静に脚を狙って撃ち込む。倒れ込む二体のグールだが、匍匐前進ほふくぜんしんでこちらに向かってくるが安全圏なので一時放置。

 残りのグールの殲滅に移行する。


 ガンガンガンガンガンガン!!


 一体は頭を狙って撃ったが、手でガードをされてしまう。咄嗟に、脚を狙って撃ち込む。どさりと倒れ、芋虫の様にくねくねと動こうとしている。

 もう一体は頭に命中しなかったので、狙うのを脚に変更して、動きを鈍らせる。

 頭を狙い撃ちにしようと、銃を構えた瞬間。


「ティーナ! 後ろッ!!」

 アレクサンダーの注意が飛ぶ。

 ハッとして、振り向き様に杖を叩きつける。グールの堕ち窪んだ目と合うが気にせず、魔法を唱える。


「ヒール!!」


 不死系モンスターにとっては、弱点の回復魔法。

『グオオオオオォおぉ』

 グールは倒れ転げながら絶叫を上げ、全身から白い煙りを立ち上らせて消滅する。


 ガンガンガンガン!!


 残りのグールもホーリーバレットを撃ち込み、同じように消滅させていく。


 ぐるっと周囲見渡してから、私はアレクサンダーに問い掛ける。

「近くに他の魔物はいない?」


「ちょっと待ってて?」

 アレクサンダーはそう言うと、背中に白銀の羽根を出現させて、バサリと飛び立つ。結構高く迄上がってクルクルと旋回してから、ストンと降りて来た。

「うん、目視出来る範囲で、数キロ先は居ないね」

 ニコッと笑ってアレクサンダーは、私に返答した。


「それじゃあ、アレク。魔草を採集してサクサク帰ろうか」

「そうだね。ティーナ、はい」

 アレクサンダーは、そう言うと手を差し出してくる。手を繋げという要求である。

「……」

「大丈夫だよ? 魔物が近くに来たら解るからね?」

 さあ繋げと、更に手を差し出してくるアレクサンダー。

「……あのさぁ、今更かもしれないけど、こういうのって良いわけ?」

 私が仕方なく手を乗せると、アレクサンダーに、ガッツリ恋人繋ぎに指を絡められた。


 う~んと、少し考える仕草をして空を見上げ、アレクサンダーは言葉を紡ぐ。

「良いと言えば良いし、ダメと言えばダメなかなぁ? まあ、たまーにだけど、よく有る事だから、そこまで深刻に考え無くて良いよ。それに、僕達守護天使は、マスターにしか触れないし触れられないし、マスターにしか心を動かされないし、総ての愛を捧げるのもマスターにだけだし、母たる神には信頼と忠誠を捧げている。母たる神を欺く事など出来はしない。何故なら、愛する心の自由を与える代償だから」

 キラキラ笑顔が爽やかで眩しい。例えるなら、草原を駆け抜ける風の気持ちいい爽やかさ加減な位だ。


 クエスト(隣の領地に生える薬草を採集)中なのに無駄に色気と、魅了を振り撒かないで欲しい。

 そして、とんでもない事をさらっと発言するのもやめて欲しい。マスターにしか反応しないなんて、ある意味呪いじゃないのそれは!


「まぁ、僕達守護天使にとっては、マスターは唯一無二の存在で、神に認められた半身だよ。むしろ愛せない方がおかしい。それに、マスターを得て、マスターと共に生涯を過ごせるなんて最高だよ。死ぬ時も一緒に消滅出来るだから」

 うっとりと論じるアレクサンダーに、若干引き気味になる。


――――アレクサンダー恐ろしいコ。ヤンデレ系じゃないのさああああ!!??


 思わず、心の中で絶叫した私は悪くないと思う。

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