Ⅱ.デジタル化を進めている国家ーシンガポールとエストニアー

①シンガポール

 外務省より(2014年)( http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/singapore/data.html#01)

・約716平方キロメートル(東京23区と同程度)

・約547万人(うちシンガポール人・永住者は387万人)(2013年9月)

・中華系74%、マレー系13%、インド系9%、その他3%の複合民族国家である。

・リー首相は、14年間首相を務めたゴー・チョクトン前首相(現名誉上級相)から2004年に政権を継承。建国以来、与党人民行動党(以下PAP)が圧倒的多数を維持しており(2011年5月の総選挙においては、87議席中、81議席を獲得)、内政は安定している。

・ASEAN諸国との友好協力関係を基軸とした地域協力に努力。アジア太平洋地域における政治、安全保障、経済面での米国の関与を重視(ただし、非同盟諸国の一員でもある。)。


 シンガポールではPAPによる実質的な一党独裁体制が成立している。野党はPAP勢力に対し圧倒的少数であり、今後もPAP主体の政権が続くと予想される。これはPAP内部での賛成が得られれば法案は通るということであり、法案の迅速な成立を生んでいる。加えて報道メディアは、政府に対し根拠のない、または的外れな批判をする場合に規制がかかる。これにより国民には等しく情報が与えられる。


(https://www.ida.gov.sg/blog/insg/in-the-news/smart-homes-can-lead-to-healthy-living/)より

 ウェアラブル家庭用品へのIoT導入であるが、食事と起床に関わるものとして、人が動かず考えずに次の行動をAIが行うようになるので人の手間は減る。現在では人の手によって設定されるタイマーがAIの自律判断によって為されるということだ。

 アプリによって健康管理をするのは教師あり学習であり、導入には大量のデータが必要になる。日本のように人種が一つに固まっている場合は有利であるが、年齢別の人口構成比が大きく崩れると全体にも影響が出るので、例えば高齢になるほど評価値の減衰を行う必要がある。もしくはデータを年齢別に収集することでデータの精度を高める方法もある。

 欲しい商品のSNS上の評価を調べ提示するのは推薦システムの応用だろう。評価者のデータをどこまで調べるかは不明だが、ユーザベースであるのでAmazonなどのオンラインショッピングと同じ原理のシステムである。これらのような事項については現在日本で使用されているものの延長にあるものなので、受け入れはスムーズにゆくだろう。


 シンガポールは10年の計画を描いて行動している。これはPAPの強い地盤があってこそ為せるものだろう。国家として見た場合、政権という国家を運営する基盤が変わらないのがシンガポールの強みである。


 シンガポールが住宅に情報収集用のセンサーを設置しやすいのは公営住宅(以下HDBと呼称する)に力を入れているためである。

(http://www.mlit.go.jp/common/001090534.pdf#search=%27%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB+%E5%85%AC%E5%96%B6%E4%BD%8F%E5%AE%85%27) 2015年3月

 上の資料によるとシンガポール国民の八割がHDBに居住している。さらに非常に低価格での購入が可能である。つまり人が住みやすく、情報収集機器を設置しやすくもあり、そうすればデータの収集も行えるということだ。統計的にも国民の八割のデータが集まれば充分であろう。シンガポールの情報収集の基盤は最初から整っていると言ってよい。



②エストニア共和国

外務省より(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/estonia/data.html#section1)

面積4.5万平方キロメートル

人口131万人(2016年)

共和制

NATO, EU, IMF, 世銀, 欧州評議会, WTO, OECD加盟

主要産業は製造業。オイルシェールを産出、発電に利用している。

ITイノベーション産業の誘致・育成に積極的である。

政府方針として自由経済を掲げており投資環境は整っている。政治・経済ともに透明性が高く資料や指標のほとんどがインターネットで閲覧可能。

IT立国化を国策として進めている。行政機関のデータベースは相互にリンクされており、オンラインで個人情報を閲覧可能。選挙投票・確定申告などがネット上で可能で、電子カルテの導入もされている。世界で唯一、国政選挙もネット上で行える。


(http://gcmwso.web.fc2.com/pdf/gcm13/gcm13_jeeadis.pdf)

 上資料の14, 15ページより、エストニアの情報処理は日本と大きく異なっている。人の手による入力は最小限にとどまり、分野のシステムごとに個別のコンピュータが存在し情報整理がそれぞれで行われるようになっている。対して日本は仲介となるコンピュータが存在するだけで最終的な情報の行き先は人の管理である。

 エストニア型の場合、情報が中央で管理でき、人の手をほとんど使わないため即座に情報処理が行われる。一つの事柄の入力だけであとはコンピュータだけですむのだ。日本型の場合、システムが煩雑化して業務も集中し人の負担も大きくなる。さらに情報の並列処理が行えないので時間の浪費ともなる。日本は人に依存しすぎなのである。

 しかし、このような形式を導入するとして、日本に可能だろうか。この制度変更は人の仕事を機械へと置き換える作業だ。技術者は必要になるだろうが、引き継ぎとデータの入力後に人は不要となる。失業への補償金や就職先の斡旋が保証されない限り、このような改革は問題となる。

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