純粋なる願い

山本友樹

第1話 少年は何故修羅の道を選んだのだろうか。 

何度、彼女の亡骸を見たのだろうか。


俺の目の前には凶弾に倒れていく美少女がいた。


おい!目を開けてくれよ!もうお前が死ぬのを見るのはイヤなんだ!


俺は彼女に駆け寄ろうと走るがその腕は彼女に届く事は無かった。



伸ばした手は絡むことなく、少女はネイビー色をしたアスファルトに倒れ込む。


アスファルトが赤く染まっていく。


俺はそれでも彼女に駆け寄っていった。


彼女の着用している白いワンピースが真っ赤な血糊で染まっていく。


「おい!しっかりしろよ!冗談じゃない!」


俺は必死に彼女を揺らす。だが・・・・・・。


オレの体も彼女の血液に染まっていく。しまった・・・・・・!また振り出しに戻る・・・・・・!




また助けられなかった・・・・・・!


俺はあと何回彼女の悲しむ姿を、苦しむ顔を、むごたらしく死んでいく姿を見ればいいんだ・・・・!





「やあ、いいお目覚めかい?」


俺は目を覚ました。


目を覚ましたということはさっきまで寝ていたってことなのか。寝ている暇なんてないのにハズなのに。


そこは見慣れた部屋だった。俺の家の部屋だ。周りにはグラビアのポスターやよく贔屓にしているバンドのCDや小さなテレビが置いてあった。紛れもなく俺の部屋だった。


目の前で「いいお目覚めかい?」なんて話しかけてきた女はさっきまでの俺の行動を知っている。趣味の悪い女だ。寝覚めは正直最悪だった。


「いいお目覚めだったらお前と会ってないんじゃないかな。」


俺は冷静に返す。


「君、なかなかいい皮肉言うね!君のそういうところ、好きだよ」


女は下品な話し方をしながら下品な笑いを出す。うるさい、黙っていろ。


「あとチケットは何枚だ?」


俺は女が手に持っている束になったチケットがずっと気になっていた。


「ああ、少なくとも30枚はあるだろうね。」


女はチケットの束で自分の顔をはたき、かなり雑に扱う。


「冗談でも雑に扱うのは勘弁できないか?」


機嫌が悪い俺はこういう行為をされるとより機嫌が悪くなる。そのチケットは俺にとっては命綱であった。


「なんでそんなにあの女に固執するんだい?ほかにいい女はいるだろう?ええと名前は・・・・」


「時貞摩耶。」


女の質問を遮るように俺は言葉を発してしまう。


「そうそう時貞摩耶。時貞摩耶。で、なんで」


「別にいいだろ。お前に言わなきゃいけない質問か?」


俺の機嫌の悪さはかなり頂点に近いものになっていた。


「さあ、時間も無い。そろそろ行くかい?」


彼女は俺の目の前にやってきて、チケットを1枚取り出し、俺に手渡す。


チケットには何も書かれていない。真っ白だった。だがそれが始まりの合図であった。


「ああ。今度こそ救ってみせる。」


「君が望む世界は?」


「そんなの決まってるだろ。時貞摩耶がまだ生存している世界だ。」


「そうだね。」


女性によってチケットの半券が切り取られる。


「よろしい!行ってきたまえ!」


真っ白だったチケットに文字が浮かび上がる。



<時貞摩耶が生きている世界。>


浮かび上がった文字は俺がこれから向かう世界だった。


目の前が真っ白になる。次に目を開けた時にはチケットに描かれた世界が広がっている。


そして未来を変えなければならない。


<時貞摩耶が死ぬ世界>


から


<時貞摩耶が生きている世界>


へと。


俺、三日月悠也の何回目かわからない未来を変える戦いが始まろうとしていた。

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