長編小説1 『瞬花終灯(しゅんかしゅうとう)』

くさなぎ そうし

 プロローグ 

 0.



  瞬花終灯しゅんかしゅうとう



 『花』は一『瞬』で『終』わるけれども、心を『灯』す。



 この言葉は私が出会った花屋の屋号やごうだ。


 言葉の意味はわかるけれども、私は本当の意味を知りたくない。


 なぜなら花のように脆く、一瞬で消えるものに思いを残すことなど不要だと思っているからだ。 


 私の仕事は感情論では何も解決しない。だからこそ心の中には感情を塞ぐ《ガラス玉》が存在している。


 花による喜び、怒り、哀しみ、安楽の感情など私はいらない。


 私が欲するのは犯人を証明できる、確かな数字と理論だけ――。

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