第25話 新しい担任 その6
ただ、相手が理解のある先生の事だからそんなに悪い事にはならないだろうと、何とかそう自分に言い聞かせていた。
「別にあなたのそれを禁止するとかそんなんじゃないのよ、ただ私こんな体質でしょ、だから……」
「じゃあ、先生の近くでは魔法少女にならなかったらいいんですか?」
先生の病状は魔法アレルギー。
でも普通に接している時にその徴候は現れてはいなかった。つまり変身していない状態ならば彼女にアレルギーは発生しない――。少し考えればそう言う結論になるのは無理もない話だろう。
いつきのこの返事を聞いて先生はニッコリと笑って口を開いた。
「うん、そう言う事。出来るかしら?これは命令とかじゃなくてお願いなの。そう言う校則とかはないしね」
「わ、分かりました。そうします……」
先生は笑顔でそう話していたものの、その言葉の圧にいつきは圧倒されてしまい、何とか言葉を絞り出す事しか出来なかった。流石元魔女、プレッシャーはまだまだ現役だった。
了解が取れて安心したのか、更に続ける先生の言葉にはもうそんな圧力は感じられなかった。
「私も清音同様魔法少女に憧れていたから、あなたの気持ちは分からないでもないんだけど……ごめんね」
「いえ、いいんです。それじゃあ」
今度こそ用件は終わったんだろうと思ったいつきは呪縛が解けたように歩き出した。特に行くあてはないけど、とにかくこの場から離脱する事だけを彼女は考えていた。思わず早足になったいつきは後ろを振り返る事なく歩いていく。
「あ、先生が元魔女だって言うのはどうか秘密にしてね」
去っていく彼女の背中越しにダメ押しのように先生の言葉が届いた。同じように秘密を抱えている身のいつきは安心させるように強い口調ではっきりと先生に返事をする。
「大丈夫です、言いませんよ!」
そうしてその後は何事もないように時間が過ぎて放課後になった。いつきと雪乃はまた仲良く下校していく。
2人の話す話はいつもの様に他愛もないものばかりだったものの、段々話のネタのストックがなくなってきた彼女は雪乃についさっきの事件の事を喋ってしまう。
そりゃ話す相手は選んではいるものの、口止めをされたのにしれっとその約束を破ってしまうようなこの性格が広まってしまうと今後誰も彼女に大事な話はされなくなるだろう。
「ふいー。何だか変な先生が来ちゃったなぁ」
話の最後にそう結論付けて、いつきは今日起こったアレコレを全部包み隠さず綺麗さっぱり雪乃に話してしまった。話す前も話した後も彼女には罪悪感が浮かんだようには見えない。
話を聞きながら、雪乃は自分の秘密は彼女には話さないでおこうと強く心に誓っていた。
それから雪乃は先生の事をフォローするように彼女に話しかける。
「でも元魔女ならいつきちゃんの事を理解してくれるかも知れないよ」
「だよねー。ポジティブシンキングだね!」
雪乃の言葉を受け、いつきの心はパァァと明るくなった。今後、魔法関係の悩み事が出来た時、先生は良い相談相手になってくれるかも知れない。
そう考えると、あの先生の存在が今ではとても頼もしいもののように感じられるのだった。
家に帰ったいつきはそこで大人しく留守番をしていたヴェルノに謝った。
「今日はごめんね」
「いや、別にいいよ。暇なのにも結構慣れてきたし」
謝罪を受けた彼はそう言ってニカッと笑う。そんなヴェルノの顔を見ていつきも許されたような気持ちになるのだった。
いつき達がそうやって仲直りをしていた頃、街にまた新たな災いの元が入り込んでいた。
「やっと着いたべ……、ここが例の魔法少女の住む街……魔法少女ならばオラのこの呪いも……」
何かの呪いを受けたその存在の目的もまたいつきの魔法のようだった。彼女平穏な日々はどうやら長くは続かないようだ。
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