ダメかもしんない


 今さら拘束されていない足をバタつかせてもガッチリと押さえ込まれ、いよいよ身動きが取れなくなる。


 両手の拘束により逃げることは難しい。


 あっという間に上半身をはだけさせられ、ズボンも剥ぎ取られ下着だけになってしまう。


「ちょっ……マジで、待てって……!」


 荒い息を吐くハヤトの顔が首もとに埋まりねっとりと舐め上げられれば、気持ちとは裏腹にゾクリとしたものが背中を上がってきた。


「や、やめろよ!」


「なんだよ、嫌がるシチュエーションがいいの? しょーがねーな」


 否定もさせてもらえないまま、ハヤトは先ほどよりも少し乱暴に手を這わせ体中にキスを落とす。


 身をよじり逃げようとしても、自分が仕掛けるはずだった手枷がジャラジャラとむなしく大きく音を立てるだけだった。


「ンっ」


(コイツ上手い……!)


 的確に性感エリアを刺激してくるのは数をこなしている証拠だ。


 ヒナタが危ない目に遭わなくて良かった。

 お酒の酔いも手伝ってだんだんと痺れ始めてきた頭でそう思った。


 いつのまにか下半身に下りた手がアオイ自身をしっかりと握り込み、規則正しく上下している。

 性急に絶頂まで持っていかれる行為に、アオイの息も次第に上がっていった。


「うぁッ?!」


「男同士ってココ使うんだろ?」


 後ろに指を這わされた時にはさすがに青ざめた。

 すぐあとに舌でぴちゃぴちゃと舐められ、目の前が霞んで何も考えられない。


「ヤベェ、すげ興奮する」


 ギラついた目をしたハヤトが乾いた自分の唇をペロリと舐める。


 酔いのまわった身体、失敗するはずないという間違った自信に対する悔しさ、自分自身への怒りでアオイはもうどうでもよくなりつつあった。


 外の激しい雨音も、割れるような雷鳴もずっと遠くに感じていた。



『この作戦は必ず主導権を握ること。油断するな』



 当初キョウスケにきつく言われていた言葉がぼんやり頭をよぎる。もし兄だったら、こんなヘマはしないだろう。

 完璧な人だから。


 今の状況がどこか他人事のようで。

 ぼんやり考え事をしてしまってる中、目の前の男は我慢できないという様子でカチャカチャと自分のベルトを外しにかかる。







 ごめん兄貴。

 マジでダメかも……


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