夜繰曲

柳澤快誠

第1話

~とある洋館~



そこは、見知らぬレストランの前だった。

興味本位でドアを開け、開けたとともに綺麗な呼び鈴の「チリンチリン」という音がする。

「〝夜躁館″《やそうかん》へ、ようこそ」と執事と思わしき人物がこちらに向かってにこやかに微笑んで言った。

「これは、これはあなた様は…?」

執事は違う業務員に少し話しをしながら、こちらの様子を見ている。

「では、こちらにどうぞ」

そして当然の事であるかのように執事によってある席に連れていく。

その席はモニタールーム、いや言うなれば映写室と言った方が適切である。

どう考えても普通の飲食店、いやよっぽどの高級なレストランでもないであろう設備に、私は連れられて執事の成すがままになっている。

「こんばんは、お客様は初めて来られたようなので少しここについて説明させていただきます」

執事は淡々と話し始め、私の前に水の入ったグラスそしてメニュー表を差し出す。

「当レストラン〝夜繰館″はお客様に楽しんでお食事をしていただく為に、映像と音楽そして何よりも…物語を私が読ませてもらうようになってます」

物語を聞く?何それ、とりあえず私は帰りたいんだけど…

「お客様、当レストランに入ってしまうとお客様が満足されないままであると…ドアがオートロックされてしまい出られない仕組みとなっております」

な!今この執事は笑顔で何てこと言った!?出られないだって…監禁と一緒じゃない。

「え~、では、お食事の方をお決めになった際にはそちらの呼び鈴を鳴らしてください」

とりあえずこのシェフの気まぐれを選んどくか。

「かしこまりました。では運ばれてくるまでの間に〝フルート″についての物語を話したいと思います」

はぁ?私音楽なんて一切分かんないぞ、これは止めなきゃ。

そう思うが、執事が口を開いた時に私の口が縫われたように閉じて開かない。

「ポロン」とピアノの音が聞こえる、そして部屋全体に演奏が流れ込んでくる。

「これはベートーベンが作曲した〝テンペスト″という作品です。では、物語の紐を読み解いてまいります。」

そして、食事が運ばれ私は執事の話しに耳を傾け食事をとるのであった。

「では語らせていただく狂演〝死を呼び込むフルート″をとくとご堪能あれ」

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