sunflower

もうダメ、絶対ガマンできない!


三日前に宣言したばかりのコンビニアイス断ち宣言も敢え無く撤回。

わたしの守ろうとした砦は脆くも崩壊し、今にも朽ち落ちそうだった。

頑張れわたし、ギリギリのところで持ち堪えろ!

いやいやムリムリ、みんなで三日坊主と好きに呼ぶがイイわ!

ぐぐぐぐぐ、歯を食いしばって掴みかけた練乳たっぷりのしろくまかき氷をフリーザーの中に置き去りにして、わたしは無味のクラッシュアイスを引っ掴む様にして小銭を払うと、涙目でコンビニエンスストアを出た。



あぶないあぶないあぶないよ、チキショーめ!

危うく甘い誘惑に負けるところだった。

わたしは涙目を拭う。

来週は友だちみんなで海に行く約束してるんだもんね。

わたしの脱いだらスゴいとこを魅せつけてやらなくちゃ!


カンカン照りの灼熱の太陽がジリジリとわたしの小麦色の肌を飴色にするべく容赦なく照りつけてる。

公園を包囲する様に取り囲んでいる、けたたましい蟬しぐれが、今年の夏の蒸し暑さをさらに増幅させてる気がして仕方ない。

それでも時折りザザーーッという風切り音とともに樹々の葉を揺らす風が吹き抜ける時だけは、エアコンの故障している家に居るよりも幾分気持ちよかった。


そういえば昨晩のテレビのニュ ースキャスターがエルニーニョがどうとかラニーニャがどうしたとか、さっぱり意味の解らないことを連呼してるのを観て、


「地球温暖化の影響だなぁ。」

小難しい顔で頷きながら健忘症気味のパパが言った。


そのセリフも物心ついた頃から毎年聴いてる気がするわ。

でも今のところはまだセーフね。ツバルもヴェネチアは海の底に沈んでないもん。

でも、わたしの愛するシロクマくんやペンギンちゃんの住処が無くなっちゃったら大問題だけど・・・。


額から頬にツツツーーッと、そして自慢のピチピチした二の腕に玉の汗が滑り流れ落ちる。

ナニ?むっちり逞しい腕してるですって??オモテ出ろこのヤロー!



それなのに、それなのに、あのサチコったらわたしがこんなにダイエットに苦しんでるのを知ってか知らずか、昨日も一昨日も台湾カキ氷食べに行こうぜっとか、アルフォンスマンゴーパフェ食いたくない?っとか、チョコバナナフォンデュパーティーやろ!っだなんて、まるで悪魔の様に誘惑メールを送りつけてくる。

食べても食べても太らない羨ましい体質のあの娘には、一生解らないわたしの悩みかも知れない。

なんてことを考えてたら、噂をすれば何とやらで、くだんのサチコからのeメール。


『うちでとろふわリコッタチーズパンケーキ作るから食べにおいでー♪』


くうっあんたは一体誰の味方なの?!



『昨夜からお腹壊しちゃって…ごめん。無念じゃ』

断腸の思いで心にもない断りメールを入れておく。

おかげですっかり減量制限中のハングリーなボクサーになった気分。(T ^ T)超クイテー!



悶々としながらカチ割り氷をガリガリ噛み砕いて食べてたら、またまたサチコの返信メール。



『寂しいよぅ・゚・(ノД`)・゚・。エーン』



・・・だって。かわいいじゃないか!こいつめー!

だったら食べもの無しで誘いなさいよォ!わたしの事どんだけ食い意地張ってる女子だと思っちゃってるワケ?あんたの中でのわたしのキャラ設定がよーく解った。



公園の花壇に咲き乱れてる向日葵たちが一斉に笑いながら風に揺れてる。



コンチキショーめ!

最後の氷粒をガリッと食べると、サチコにひと言返信した。



『いま、食いにゆきます』







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る