TEENAGE

赤松 帝

sweet days

打ち寄せる波のさざめきが、通りの向こう側からわたしを呼んでる。


たまらず駆けだしたその途端、砂に足を取られて転びかけちゃった。


きつめのミュールを脱いだなら、なんだか心まで軽くなったみたい。


うみねこの群れが舞うように待ちわびている、渚まであともう少し・・・。


大きく砂を蹴りあげて、いきおいよく走り出そう。


大きな夕陽が落ちていくように海に沈みこんだ瞬間、


目の前の水平線を境にして赤から淡いピンク、薄紫色に群青色と


虹みたいに綺麗なグラデーションの空が一面に広がって


わたしはもう一歩も動けずにその場所に立ち尽くしてた。


思わず弾んだ息を飲みこんで、大きな麦わら帽子を脱ぎ取ると、


いたずらな浜風が結わえたツインテールをふわっと巻きあげた。


ショート丈の真っ白いワンピース。さっきまで白かった入道雲。


わたしも海辺の景色の一部にとけこんでゆく。


垂らした左手に突っかけてたミュールがするりと零れ落ちて


いつのまにかこっそり取り囲んでいた波の子供にさらわれてゆく。


あわて追いかけて掬い上げると、あのこはくすぐる様に


裸足の指をすり抜けながら逃げ出していった。


耳をすませばそう遠くない森の奥で


ひぐらしがどこか寂しげに鳴いている。




あ~あぁ……もうすぐ夏が終わっちゃう






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