本戦出場
真面目に闘いたい
これまでの観音開絃四郎の戦歴
予選1 VS おばちゃん
日用品を使った急所狙い(ルール違反)
パンチラを指摘されたおばちゃんは逃走。
予選2 VS 男子小学生
お菓子に偽装した下剤を盛られ、顔に犬のうんこを突きつけらる。
子どもは殴れないのでやむなく逃走。
予選3 VS ゆるキャラ
臭い頭部を被せられた後、首を絞められる。
金的をくらった相手は逃走。
(何でこうなった……)
左文字商店街を歩く絃四郎。これまでの闘いを脳内で振り返っていた。
ずっと夢見ていた全世界の格闘家たちが集まる祭典。噂にしか聞いたことがないファイターとの手合わせが実現する。
そう思っていた。
人類最強と呼ばれる、背中に鬼が浮かぶ男とその息子。
千年無敗と言われる古武術の継承者。
喧嘩殺法を繰り出すアメリカのファイター。
両手から気を放つ孤高の格闘家。
キングオブハートの紋章を拳に刻むガン◯ムファイター。
伝え聞く話は、見たこともない技の応酬や、互いの誇りをかけた死闘を想像させるものだった。
自分もGBRに参加すれば、そんな闘いができるのだと確信を抱いていたのに。
(なのに、何なんだ‼︎ これが史上最強を決める大会なのかよ‼︎ )
昨日から怒りを抑えきれない。
サモンちゃんに逃げられた後、絃四郎はすぐに大会本部のある中心街へ向かった。
主催者のゴールドバーグに、抗議をするためである。
サモンちゃんによれば、数々の大会ルール違反は、左文字町民に許された特権であるらしい。
いくら開催地に住んでいて、迷惑をかけているとはいえ、そんなことが許されていいはずがない。
町民が大会に参加することは問題ないが、それはあくまで実力があったならばだ。
史上最強を決める大会と銘打ったならば、アンフェアが許されていいはずがない。
公正の欠片もない大会を辞退してやるつもりだったが、その前にゴールドバーグに言ってやらなければ気が済まない。
自分のためだけではない。
絃四郎が黙ってしまえば、マサキをはじめ、敗れた格闘家たちが浮かばれない。
が、しかし。
昨日は大会本部に辿り着いたものの、予選中は一切取り次がないと門前払いされてしまった。
本戦に進めば、明日会ってやると。
秘書を介してゴールドバーグは、そう伝えてきた。
極めて不本意だったが、仕方なく近くでウロウロしていた格闘家を二人倒し、バッジを回収した。
本戦出場が決まり、今日こそと意気込んで大会本部へ向かっているのだ。
格闘家の夢をぶち壊した罪は重い。
今日も有耶無耶にして会うつもりがないと言われれば、強行突破もやむを得ないと考えていた。
「俺は本物の格闘家と……範◯勇◯郎みたいなのと闘いたかったんだよ‼︎‼︎‼︎ それなのに、あの野郎‼︎ 」
怒りは思わず口から出てしまっていた。
絃四郎の只ならぬ雰囲気を悟ってか、町民たちは怯えながら道を開ける。
町民の憩いの場となっている商店街の空気が凍る。
絃四郎はそんな周囲の空気をすること意に介さず、大会本部の自動ドアの前に、腕組みをして立った。
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