ババア、襲来
時には仲間、時にはライバルであった
絃四郎と同様に世界中の武闘大会に参加し、決勝の常連だった彼がだ。
マサキがなぜ満腹の状態で力尽きたのかは不明だが、とにかく得体の知れない格闘スタイルの者が近くにいると想定した方がいい。
絃四郎はマサキを道端に寝かせると、気持ちを入れ替えて構えをとる。
辺りを見回し、敵が隠れていそうな細い路地や建物の上に意識を集中する。
誰かがいる気配や物音はしない。
いや、ほとんどシャッターが閉まっている商店街だ、シャッターの奥に身を潜めている可能性もある。
絃四郎は構えを崩さずに、慎重に摺り足で歩を進める。右の店か、左の店か、シャッターを蹴破るほどの力があるならば、奇襲をかけてくるかもしれない。
ゆっくりと首を動かして右の店を見たその時だった。
左の店のシャッターから何かが飛んできた。
絃四郎は咄嗟に後ろに飛び退く。
眼前を細長い何かが通り、右の店へと飛んでいく。
細長い何かは右の店のシャッターを突き破り、シャッターには2つの小さな穴が空いた。
どうやら敵は、細長い針のようなものを投げてきたようだ。鉄製のシャッターを貫くなんて並大抵のパワーではない。
「そこにいる奴‼︎ 出てこい‼︎」
店に向かって怒鳴る絃四郎。
何の反応もない。
裏から外に出たならば、音がするはずだが聞こえない。
まだ中にいるのか。
店は二階建ての青果店。
二階の窓にはカーテンがかかっており、人影は見えない。窓の上には茶色く錆び付いた看板があり、辛うじて田中青果店と読める。
絃四郎は頭上も警戒しつつ、足音を立てないように店に近づく。距離があったとしても、相手の武器は飛び道具だ。どこから飛んでくるかわからない。慎重にいかなくては。
ギィッ……。
頭上から金属がこすれた音がした。
すかさず見上げると、看板の後ろに人の影がわずかに見える。
「馬鹿な⁈ 物音も立てずいつの間に‼︎ 」
絃四郎に気づかれると、人影は看板の上に飛び乗った。人影は夕日を背にしており、顔はよく見えない。
「バッジよこさんかゴルァァァァ‼︎ 」
人影はそう叫ぶと、看板から飛び降り、絃四郎の目の前に着地する。
(こいつがマサキを倒した格闘家、……格闘家?)
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