俺と四人の精霊使い《エレメンタラー》

SattO

第一章 『プロローグ』

 何度見ても……何度聴いても……。


 夢なんだよな……。


 その光景は俺を引き寄せる。

 月明かりに照らされ、立たずみ、月を眺め寂しげに歌う女性。淡く柔らかい水色の髪が風でなびく。


 最近はずっとこの女性の夢を見る……。

 身長は百六十くらい、髪と同色の瞳。理知的な瞳に心が奪われそうになる。

 白を基調とした服装は余計な装飾が無く、とてもシンプルで、RPGで言う魔法剣士の印象を受けた。


 女性の歌声に反応する無数の小さな光達。地から天に昇り、最後には光達は消えていった。

 消えた後、歌は聴こえなくなった。


 女性は涙を流した……。

 手を月に伸ばし、開いた手は閉じた。


 俺には女性がどうして泣いていたのかが分からない……所詮、『夢』なのだから……。


 いつもの夢、ここまではいつもどおり。

 だけど、今日はいつもとは違かった。

 夢は続いている……。




 さっきとは場所も雰囲気も違った……。


 草木が生い繁る草原の様な場所だった。

 真っ赤な夕陽が当たりを照らしている……いや、違った……違う光景になったせいで、はっきりするまで時間がかかった。

 何かが草原に降り注いでいた。真っ赤な……。


 ……燃え盛る炎。


 周りには人が数十人。倒れている人達、『何か』と戦っている先程の女性。『何か』は獣の姿をしている。

 女性は倒れている人達を守るかの様に剣を振るっていた。


 ……俺は気付いた。


 手と膝を地面に付き、動けなくなっている自分に……。

 身体中にある傷、流れる血が……。


 ……俺も戦っていた?


 どうなっているのか理解出来ていない。血は流れているが痛くはない。やはり『夢』だから?


 顔を上げ何かと戦う女性を見た。

 降り注ぐ炎を避けながら、時には剣でなぎ払いながら、焼けた草原を颯爽と駆け抜けていた。剣で獣も斬り裂こうとしても皮膚が硬いせいか刃が入らない。


 次の瞬間。

 獣は俺を見た……標的にされた。

 獣は口を大きく開け、中から炎が膨れ上がり放たれた……。


 ……誰か助けてくれ。


 俺は目を閉じた。


「ドン!」と大きな音が目の前で聞こえた。

 恐る恐る閉じていた目を開けると、女性が倒れていた……。


「あぁ…ああああああああぁぁー!」


 俺は叫んでいた。

 目の前で倒れている女性見て。


 ……俺を庇って。


 ……夢なら……早く覚めてくれっ!




「パシッ!」とする音、左頬に痛みを感じて俺は目を開けた。


「お兄ちゃん、朝だよ! 早くしないと遅刻するよ!」


「……おはよう、サヤ。 そこ、どいてくれ」


 俺の上にまたがり平手打ちで起してくれたのは、妹の紗綾サヤ


 ……マジで助かった。


「汗だくで臭いから、シャワー浴びて行ったら? 私は部活だからもう行くからね。 じゃあねー」


「気を付けて行けよ」


「分かってるよーシスコン! 朝ご飯作ったから食べていってねー」


 サヤは部屋から出て部活に向かった。


「はぁ、さっきの夢は一体なんだったんだ……?」


 俺は部屋を出て学校へ行く支度を始めた。


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