ニート×ニート

時川 隼人

第1話 プロローグ

 なんであいつら働いてんの?車までだしちゃって、そんでもって二酸化炭素だしやがって!地球泣いてるぞ!!それに比べて俺はなんて地球に優しいニートなんだ。まず動く必要が無い、すなわち車なんて必要ないんだ。パソコンが使えたらそれだけでいい。さらに、外出を少なめに控える者は一度の買い物でたくさんのものを買うんだ。だから余分な二酸化炭素を出さないんだ。さらにさらに、ビニール袋が少なくすむんだよ!なんて地球に優しいニートなんだ俺は!!

 地球温暖化問題が未だにある今という時代は2200年、世界ではグローバル化が進み、科学や医療はもちろんのこと、情報技術なども過去と比べて遥かに大きな進化を遂げていた。

 例をあげてみると、昔はスマートフォンというものがあったが、今ではコンタクトレンズ型携帯、通称レンズフォンが㈱Oceanから発売され、広く普及した。

 こういう時代に生きている俺、高山俊太は高校卒業後、大学へ進学した。ただ就職するために。この言葉は俺の辞書で解釈すると「ただお金を集めるために」となる。就職する理由って大体お金のためでしょ。

 

 「貴社の経営理念に惹かれて就職を決意しました!」

 

 ふむふむ、お金がほしいってことだね?


 「小さいころからこの仕事に携わることが私の夢でした!」

 

 ほう、つまりお金がほしいんだね?

 別にそこまでたくさんのお金は要らない。でも自立するには結局お金だし、世の中は大体お金があれば生きていけるし、だから働くんでしょ。あと就職しないといけない感が滲み出ているこの社会だし。こんな価値観をもちつつ大学を卒業し、就職に挑んだが、気がつくとその価値観はいつの間にかさっぱり消えていた。勘のいい人は気づいただろう。

 

 そう、私は就職に失敗したのだ。

 

 それもただの失敗じゃない。いやまあ普通だったら「どんまい!次があるから大丈夫!」「アルバイトでもしたらいいだろ!」ってなるじゃん?でもさすがに33社も落ちたら大丈夫じゃないでしょ。どんだけ俺の能力を認めてもらえねぇんだよ。

 コミュ力あります!

 大学時代は、サークルで汗を仲間と共に流しました!

 グローバルに活躍し(てお金をガッポリ稼ぎ)たいと思っております!

 これでもダメだというのですか!?

 え?顔がだめなんですか?でっ、でもこれはDNAの都合上どうにも・・・っ。あぁ、すみませんでした。出直してきます(どうやって出直すんだよ俺は)。

 そんな自己勝手な解釈をし、心身共に萎えきった俺は、ある日悟った。


 「よし、ゲームで稼ごう」

 

 ここで俺のニートの思考回路は完成していた。お金を稼ごうとしているからニートじゃないと言い張るニート。そう、俺だ。

 ニート生活は2年が経ち、今の状態に至る。今の状態というのはゲームとアニメとお菓子の日々を送っている状態だ。完全にピザニートだ。俺公認。

 ゲームにのめり込み始めた時から突然大学の友達から、そして高校まで一緒だった友達からもメールは途絶えた。


 俺っていつから空気になってたんだ。

 

 原因は不明だ。突然なのだ。レンズフォンの調子が悪いということはなかった。周囲からの情報は何も得られなかった。これは逆に言えば、私のニート状態という情報はどこにも漏れていないことになる。外部との接触はないのだから。こういう観点からすると外部との接触が無いことはありがたく感じる。(いやだめだろ)

 

 しかし、なぜか両親とゾンアマからのメールは健在している。

 加えてエロゲメールも届く。毎週土曜日に最新エロゲ情報が届く。これは俺の楽しみにしていることランキングベスト10に見事入賞している。

 それから、ゾンアマから頼んでいない品物が届くことが度々あった。残金はもちろん減っていた。まぁ、毎回返品をしていたから残額に変わりはないんだが。割と迷惑なことだ。

 そんな日々を送っていた俺はとある日、いつものようにゲームをしていたら、突然、旧友からのメールを受信した。

 この出来事がなければ、私は今もニート生活をしていたのだろう。

 ここから始まったのかもしれない。

 

 俺の、脱ニート生活は。

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