とある冒険者の配達家業
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第1話 配達"専業"家業
私の名は「アウグスト」
見た目といえば自分でいうのもなんだが、恰好が良いという部類なわけでもない。
年はそろそろ40が見え始めている頃合であるためか中年太りが加速し、どこからどうみても肥満体型である。
この様な体型になった理由として、エールとその油系統の食事が原因だと回りからは指摘されているが、これは私にとって生きがいの一つであるためやめるわけには・・・いか・・いかない。そう、生きがいなのである。
まぁ、幼少の頃からそういった食事が好きだったため、吹き出物が出ていたとかお腹が出ていたなんてことは……無いとは…言えなくもないだろう。
そういえば、生まれ育った村で幼少時にはオークとゴブリンの醜いところを合わせた身体とか言われてたなぁ・・・
閑話休題
私の職業は"冒険者"というモノに就いている。
"冒険者"
この言葉を聞いて何を連想するだろうか?
大半の者は、未開の地や知らない土地へと足を運び、冒険活劇のごとく活躍していたり、または、ダンジョンと呼ばれる迷宮を探索して踏破するという行いだと思うはずだろう。
しかし、大抵の場合は拠点となる街を設けて、そこで依頼をこなす者がほとんどであり、先ほど挙げた様な活劇があったりすることはほとんど無いのである。
実際には、隊商護衛などの依頼があれば諸国を移動するぐらいの話であり、それでも隊商が移動できる近隣でしかない。
それでも私は"冒険者"という職業に就いているのである。
では、なぜ冒険者という職業についているのか。
答えは至極簡単な話だ。
冒険者|組合(ギルド)に入ることによって、仕事の斡旋または紹介を受けることができるからだ。
つまり生活をする上で必要な最低限の賃金を稼ぐための手段にすぎないのである。もちろん、それに応じた最低限の能力が必要ではあるのだが。
また、その冒険者|組合(ギルド)で紹介される仕事内容に関しても、採取・討伐・警邏・商会護衛と、命の危険度の高いものからそうでもないモノまでその内容は種々様々である。
その中でもさらに組合(ギルド)による冒険者階級という形で区分分けがなされており、本人の実績による階級による形で受諾できる制限があるという訳である。
確かに"依頼を受けたが達成できませんでした。"となってしまえば、それは
ちなみに私の階級はCクラスという区分に入る。
世間一般的に言えば、玄人に入りかけた中堅的、二流という風な存在といった所であろうか。
そんなCクラスの冒険者である私が、主に行っている依頼といえば物を運ぶ依頼、つまり運搬依頼に関してである。
世間一般的にみた場合の冒険者と言えば、やれ凶悪な魔物を討伐した、やれ街を護った英雄など、そういう魔物を討伐したという自慢話を酒の席などで聞こえてくるものだが、私にとってみればそんなたった一つの命を賭けてまで危ない橋を渡りたいという気概が理解できないでいる。
もちろん、その命を懸けた分の見合った報酬が支払われるので、対価として納得している者が受ければよいのだろうが、やはり私としては、たった一つの生命を賭けるだけの勇気は持ち合わせてはいない。
その為、受ける依頼として、選択する気はサラサラない。
そうなってくると、そういった命のやり取りを行う事が殆どないといえる、配送や配達といった運搬を主としている依頼になるのが、この依頼にいたってもその内容は多岐にわたる。
一つ例をあげるならば、この
これらは街中の商店などが臨時で雇いこみたい場合などの一時雇用みたいなものである。当たり前の話であるが、街中である為に比較的安全となる。
しかし、その分提示されている金額は先ほどの討伐系の依頼と比べると少額の部類になってしまう。
ただ、少額の金額とはいえ、比較的安全に獲得できる依頼となると、駆け出し冒険者などの生活をする為の生命線を維持する為の駄賃稼ぎの様な側面もあったりするものである。
そんな駆け出し冒険者にとっては、力仕事であったり、街中を知るための機会に繋がったり、顔を売り込む為であったりと、なかなかどうして侮れない物でもあったりもする。
その為、いくら私でもそれらには緊急時でもなければ手をつけない事にしている。
若者が育つための環境を残しておくのも、また先人の務めでもあるのだから。
では、私が受けるのは何か?それは、街から街へと郊外に赴く必要がある配送物に限定している。
何故か?
例えば…そう、移動する事で色々な街に赴いてわかったことなのだが、各街でのエールの味が異なっていたりするのだ。また、そのエールと一緒に食する揚げ物もそれぞれに街特有の個性というものがあり、それもまた格別な思いを作らせるのには十分かつ重要な要素である。
決して、配達先が肉を使った揚げ物があるとか、海の幸を使った揚げ物があるとか、そういう事を重要視して、その為に依頼の内容を疎かにするという訳ではなく、受けるからにはしっかりとこなす必要があるのだ。
そう、例え今回は久しぶりに港町の魚の揚げ物が食べたくなった為に、街中の依頼は将来有望な彼らのために受ける事はしないという事である。
そう、ヒトはそれぞれ見合ったモノというのがある。
私に見合ったソレは、魔物討伐などではなく、護衛などでもなく、ただただ依頼された物を依頼された日時を守り、依頼された相手へと、確実に届けるのみなのだ。
そして、行く先々での特産品を楽しめるというオマケが存在しているのが、一層のやりがいをもたらしてくれるものでもあるのだ。
そう、それが一番重要な要素なのである。
****
さて、今日もいつもの様に|組合(ギルド)で依頼をうけに向う。
今回も張り出されている掲示板を眺め、海のある方面へと向かう物が無いかと眺めていていると、よし、港町へ向かう依頼があった。
これで
今回私に見合った依頼内容は、商業ギルドから品物を受取り、隣の港街商業ギルド長へ直接荷を受け渡す事というものだ。
特に不思議な事はない。いつも通りともいえるありふれた内容の物である。
依頼表を手に取り、視線を合わせてようともしない受付からその依頼内容の手続きをすませ、荷物を受取りに商業ギルドへと赴き、受付に依頼を紹介状を提示しようと赴く・・・が、
道中の屋台街では、食欲をそそる香りが漂っており、なおかつチーズ揚げなる物が新商品として掲げられており、朝食のあとの間食としては十分であろうと判断し、軽く済ませる。
ふむ、今日は幸先が良い気がする。こういった新商品に出くわす事などめったにない物でもあるため、今日は良い事が起きるのであろうと気分が少し軽やかになった気がする。
そんな間食を済ませた後、依頼主となる商業ギルドのもとへとその歩を進めた。
"商業ギルド"
商業関連の流通から販売権に関してなど、おおよそ商売を行う内容に関してを取り扱っているギルドであり、また、不動産に関しても取り扱っているともいえる処でもあった。
その商業ギルドの入口のホールでは、そこには活気あふれる人、人、人、あちらこちらで商談的な話や、権利云々の話に税金まで色々な話が聞こえてくる。
しかし、私がそのホールの中を抜けようとすると、活気が嘘のように次第に静まり返り始め、人の湖が割れるかの様に私の前が二つに分かれていく。
たまにある現象であるため、気に掛ける必要もないので、そのままあいた空間を歩いて受付へ窓口へと依頼表を手渡しに向かい、受付に声をかけるだけである。
「すみません、宅配依頼を受けた
「うぇっ…、エ、アア、ハイ、シバラクオマチクダサイ」
受付の者がコチラの顔をみるなり、怪訝な視線を向けながらまるで最大限の警戒をしていますというという恰好で受け答えをしてきた。怪しい人物が訪れたのである、そういう態度に出るのは致し方ないという話であろう。
それに、初見の人は大抵こういう反応をするものである。
もう慣れてはしまっている私も私であろうか…
なにせ、世間一般的にいえば醜い容姿といわれるため、仕方がないのだろう。
慣れている者でも「急に現れるな」と驚きとともに怒鳴ってくるぐらいだからだ。こればかりは生まれ持った物をとやかく言う必要性など、ここ40年以上生きているのだから今更であろう。
ただ、待っている間にも、周りにもこの空気が伝搬したのだろうか、似た様な雰囲気を醸していたのは気のせいではないが、多少なりともいたたまれなくなってくる気分にもなる。
なにせ、顔をそちらに向けると、周囲の人垣は目を逸らす素振りをしてくる始末である。
まぁ、話しかけられる事も無いので、これはこれで楽ではあると割り切った経緯もあるため、これ以上周囲の者を邪魔する事はなくてよいだろう。
そうこうしているうちに、受付の人は蝋で封印された小箱を持ってきてはこちらへと渡してくる。
「お、お待たせしました…こちらになります。」
しばらく待った後に戻ってきた受付は、やはり、警戒するかの様にこちらの事を推し量っている様である。
ここは普通に紳士的な言動で対応するべきであろう。これも信用を落としてしまい報奨金が減額される事や、最悪、違約金を支払わなければならない事になるのは御免こうむりたい。
「はい、確かにお預かりしました。確認ですが、期限は3日、それで間違い無いですね?」
冒険者|組合(ギルド)からの案内書と交換するかの様に、自信がもつ営業スマイルで対応しておこう
「ひっ・・・え、えっと・・・ええ・・・3日内にかならず届けてください」
やはり営業スマイルではダメだったか・・・最近練習していたのだが、まだまだという事なのだろう。
仕方が無い。ここは素早く受理をして早々に立ち去るべきであろう。
「わかりました、必ずお届けさせていただきます」
営業という名の受け答えをすまし、手渡された小箱を先ほどの人物の前で専用の収納箱にいれる姿を見せておく。
こうしておくことで 受理をしたという確認をも兼ねるのである。
これで受け付けの者に、受け取ったという確認作業的なものを行ったのち、専用の背負い箱を担いでから商業ギルドを後にした。
*****
さて、3日以内に港街商業区へと内容になるのだが、普通に乗合馬車でいけば2日かかる距離でもあり、期間余裕があるのは1日だけとなる。
だが、速い事にはこした事はないのが私の持論の一つでもある。
早く届く、これだけでも運搬人として信用を勝ち得るための重要な要素にもなるからだ。
ただ、もう一つの私の中で作っている課題、|白味魚の揚げ物(フライ)とエールの代金が乗合馬車の駄賃経費分を差っ引くと心もとない形にもなってしまうのである。
そうなってくると、乗合馬車を利用するという事はまず基本的に除外するべきである。
ならば基本的に街道を徒歩で移動するとなると、今度は大体5日程度かかってしまうのである。
さてはて、どうしたものかと考えているうちに、いつもの通りの門を通り過ぎ、いつもの門番に「犯罪を犯すなよ?」と軽い冗談を交わされて街を出、出てきた後に人々が行きかう街道を…
進まない。
進まない理由としては、自分が街道を進めば野盗と勘違いされ、商隊護衛などからこちらが襲われてしまうからだ。
何度も経験しているため、毎回毎回こんな事がおきてしまったら時間が稼げるものも稼げなくなってしまう。
以前は顔を隠せば問題なかろうと、外套をかぶって普通の旅人姿を装っていたのだが、不思議なことに顔をみられることもないのにもかかわらず、物取りに間違われる事なんて何度もあったぐらいだ。
そのため、時間を稼ぐならば人目に付かない方法が一番てっとり早いのである。
ただ、そうなっては目的地にたどり着けないと思われるだろうが、そこは長年かけて作り上げた街道とはまったく異なる、自分独自の道というのを経験上作ってある。
その独自の道というのは、自分だけの道ともいえるものであり、商隊などの荷車が通れる代物でもないぐらいの道筋でもあり、また冒険者とも出会う事も少ないのである。
今回は隣町まで一泊しなくても向かえるルートとして、山岳と森のをまたいで直線で結んだルートというのがある、これは10数年以上も前に私が苦心惨憺してみつけたといってもいい経験に基づいて作り上げた道である。
私にとって自慢できる事の一つを挙げるとしたら、こういう独自の順路を開拓しながら向かっていった為に、期間間際などで難癖をつけられたりはしたが、今では少なくとも期限間際というのが一番遅くなったモノであるぐらい移動速度が向上したものである。
だが、この道を使うと人と遭遇する事が無くなり、人とのトラブルが少なくなる分、魔物などに遭遇する機会が多くなったりする。
しかし、とくに強い相手でもないので襲ってきた時以外は無視しては少々本気で走り抜ければなんとかなるものである。
それでも逃げ切れそうにない時ぐらいは、回避するために向かい合う必要があるだろうが…。もちろん命あっての物種である。戦闘行為などするのではなく、あくまでも受け流し程度で終わらせるだけだが。
さて、今回は簡単にいえば3つほどの山越えが一番近い道順となる。
基本となる街道は、この山岳を避ける様に迂回する格好で整備されているために馬車でも2日、徒歩でも5日かかるのだ。
ならばまっすぐ山を越えていけばいいじゃないか。
と、単純に考えて実行したのが最初である。よくある若かりし頃の冒険心という奴であろう。
付け加えるなら麓の森林地帯からは人気がまったくないので、気兼ねも気苦労も必要ない。
そしてとにかく山を超えれば良いという単純な内容なだけである。これほど気が楽な物はない。
いまではその最初の経験から何回か利用している順路である為、よくやったものだと過去の自分へ感謝する物でもある。
順路も決まり、軽い準備体操を行ったあと、それではと、足を動かしてふもとの森へと入ろうではないか、
いざ行かん|白味魚の揚げ物(フライ)とエールの桃源郷へ・・・
****
颯爽と麓の森林地区を走り抜け、一つ目の山に差し掛かった時、魔物が上空から襲ってきた。
いや、森林地帯を走っているあたりから、向かう先の山の方から何か視られている感じがしていたが、まさか飛んでる魔物が街の近くの山岳地帯にいるとは思いもよらなかった。
こういった魔物は、縄張り意識というのがあるため、一定の範囲内に入らなければ襲ってはこないのだが、今までこの山岳にそういった魔物が住み着いたという話は聞かなかった。
それに、以前から数回この順路を通っているため、そういったこともなかったのが対処が遅れた原因のひとつかもしれない。
いつもなら、この近くでこんな魔物が出てくる訳がないはずなのだ。という思い込みが、この様な自体を招いたのであろう。
とりあえず襲ってきたのならば対処しなければしつこくおってくるのが縄張り意識のある魔物である。
そんな考えをしていた時に、その魔物はこちらに大きな口を開けてやや上空から滑空するかの様に襲ってきた。
その大きな口は、上口と下口の間に涎が糸状に網をはっている様な状態なのがよくみえた。
私としては、正直あの様な口の中にはいりたくもないものである。
なので、腕で方向をそらせて地面へとぶつかる様に誘導してやると、頭から地面へと突っ伏す状態になり、その長い首と胴体は刺さった地面からぱたりと力なく倒れこみ、魔物はそれ以降動く事はなかった。
あんな魔物がこの付近に出てくるなんて、やっかいな問題である。
帰ったらならば近くの街の|組合(ギルド)に報告でもしておこうと思い、次の山に向かって走り出した。
魔物に襲撃され、難なくたため、自己新記録を目指そうと少しは思っていたのがが、出鼻をくじかれる状態に遭遇し、次の山岳へとさしかかろうとしていたとき、"ケチが付いたらとことん付く"という事を聞いた言葉が脳裏をよぎった。
冒険者としての縁起担ぎのために注意している要素なのか"
それは、2つ目の山にさしかかろうとしていた時に出会ったのである。
眼下の開けた丘付近の頂上に、遠目からもわかるぐらいの大きさの魔物が鎮座していたのだ。
こんどもかなり大きめのヒツジ?やイノシシ?が合わさった様相をしているものであり、相手はこちらを見据えている様であったが、自分としては関わり合う気はサラサラない。
なので、先ほどの魔物が鎮座している丘の上が最短距離だとは解ってはいるのだが、しかたがないので迂回する方向へと切り替えることにした。
多少の遅れは、この次で挽回すればよいだろうと判断して切替えたのだが、その大きな魔物はこちらに向かって追いかけてきたの。
正直困惑した。今回は本当にツいていない、ツキがなさすぎる。
このままでは追いつかれてしまい、襲われるのは確実であろうと推測すると、かなりまずいと判断し、しかたないかと少し本気で走る事にした。
今までは体力温存を考えていたので、多少はゆっくりと走っていたのだが、この際やむをえない。
少し本気で走り出すと、すぐ後ろまで追い付いてき魔物は、それ以上追い付かれることもなく、一定の距離を保ち続けた。
一体どれくらい走り続けたのだろうか、丘を迂回する形で遠回りをしていたので一刻程度も走ったぐらいなのだろうかわからない状況であったが、追いかけてきた魔物はだんだんと小さくなっていき、追いかけるのをあきらめたのか、とうとう見えなくなっていった。
見えなくなった時には、2つ目の山を迂回し終えるかの如くおわっており、山岳直進という順路から外れているということに気が付きはしたが、この際は気にする必要もないだろうと判断した。
2つめの山にさしかかる前に2回ほど魔物に襲われるという事がおきたのだ、これは冒険者ジンクスにのっとれば確実に3つめの山でも何かがおきるということだろう。
そう判断した私は3つめの山だけは登る事をやめ、街道とは真反対となる樹海と呼ばれる森林区の方から迂回してすすむことにした。
樹海――。
木々がうっそうと茂り、太陽の光がさしこんでこない。
たしか、この樹海は惑わせの樹海と冒険者仲間からいわれていた記憶がある。
この樹海にはいれば方向感覚が狂わされてしまい、精霊使いなどがいなければ脱出する事が困難であるとかなんとか、はては幻惑でもみせられて森に命を吸い取られるとかなんとか、与太話も含めばいろんな逸話みたいな話がゴロゴロでてきてたのを、酒場で聞き耳を立てている時に聞いていた事がある。
過去に実際に自分の足で入ってみて思ったが、なるほど、太陽の光が差し込まないだけで周囲が見づらく、そのため今どこにいるのがわかりにくいという解ったがただそれだけであった。
そう、ただそれだけで何もおかしくもなく、自分としては普通に闊歩する事もできそうでもあったのだ。
雰囲気的に寒気?の様な物も感じなくもないが、まぁ、これらはよくいう気概次第というものだろう。
ただ、視られているとかいう類の感触もあったが、いつもいつもそういう視線は感じているので、とうとう普通にしててもそういう錯覚を覚える様になったかと、少し悲しくもしたりはしたが、気落ちするといけないと思い、そのまま小走りに抜ける事にした。
そう、桃源郷に向かうにはとにかくこの樹海を抜ける事が優先なのである。
樹海を抜けると、そこはようやく3つめの山を越えた道へと出た。
あとは、港街に向かって走るだけである。
その後はケチが付いたのがウソの様に、普通に街の門番に身分証を提示して中に入る事ができたのだ。すこし、信じられないという風な感動さえ覚えてしまった。
なにしろ、この街へも何度か足を運んではいるのに毎回違う門番にあたるなどの不思議さもあったが、門番からは身分証が偽証されていないかとしつこく調べられたが、そんな事はないと理解されるまで拘束されて、ようやく通されたのは数刻後という事は幾度もあったのだが、いつもの事なので気にしては仕方が無いし彼らの職務でもある。
彼らが職務に忠実であるという事であるのだから、立派であると褒めるべきであり、責める必要性はまったくないのである。
それに、行く先々で行われる通例的な事でもあるので、気にしても仕方がない事でもある。
そう、こういうのは潔白であれば気にする必要は無いのだ。
****
街中にすんなりと入れた事に多少の感動もあったが、とりあえず依頼であるこの街での商業ギルドにむかう。
何度となく来ているのだが、街の警邏から執拗に足止めをもらったりしたりはしたが、依頼表と身分証明を合わせて提示することで納得してもらうこと数回、ようやく目的地となる商業ギルドへとたどり着き、受付にいつもの様に怪しいやつという視線をうけながらギルド長への面会を希望する故を伝えた。が、
「今、取込み中の為すべての面会はお断りさせていただいております」
の一点張りで門前払い状態になってしまった。
代わりに受取を行いますとも言われたが、依頼は直接手渡しという条件が加えられた内容のため拒否をすると、怪訝な顔をされて余計に警戒された感じがした。
門前払いをうけ、途方にくれるもとにかく渡さなければ依頼達成にはならない。
たぶん、二階がギルド長がいる部屋だろうと推測し、二階の様子がうかがえる場所を周囲から確認する。
横手の建物の屋根上からなら、様子はみえそうだなと判断し、路地にはいって建物の上へと素早く上り詰めた。登るとき、少し建物の外壁が傷ついてしまったが、見えない場所だし気が付かれない事を祈る。
屋根からギルド長のいる部屋を観察してみも、人の様なものはなかった。どうやら不在?の様である。仕方がないので、今日はとりあえずこのまましばらく待ってみる事にすると、こんどはギルドの前に何かしら豪勢な馬車が止まる。
お金持ちか何かだろうなと思われる馬車が入ってから、ギルド長の部屋にあわただしくなり、何人かが何かを探ししているのが見えた。「あまりよくないだろう…」と、この状況はと感じてはいるが、すくなくともあの馬車の持ち主がギルド長の場所を知っているのでは?という感じがするが、判断がつかなかったので日も沈み始めたのでとりあえず今日の処は切り上げる事にする。
宿を取ろうとしたときにちょっとしたひと悶着があったが、それはいつもの事なので割合しておく。
次の日にも商業ギルドへ赴いたが、やはり対応は先日と同じであった。
ので、先日のあの馬車が気になっていたので街中を探す事にし、ようやく見つかったのは夕刻にさしかかろうとしていた時であった。
見つけた場所は倉庫群と思わしき区画。その一区の倉庫だった。
みるからに怪しい。怪しすぎるので巻き込まれる前に隠れ・・・る場所もなく普通に見つかってしまった、
「交代要員か?」
という問いかけに「はい」と答えた後、矢継ぎ早に「この年でこの顔じゃ、まともな仕事にはつけませんからね・・・」と付け加えたら、顔をジロっとみられたとたん「違ぇねぇ」と盛大に笑われ、「がんばれよ!」と励まして立ち去って行った。
複雑な心境に陥りかけたが、ここは気にしない事が大事である。
気を取り直し、堂々と倉庫の中に入るとそこには大きな檻から小さな檻と多種多様の大きさの中に、多種多様の魔獣?らしき物が入っていた。
その檻のある中、一番奥に人と思われる人物が、また同じ様な檻に入っていた。こちらを見つけたその人物は、自分をこの街の商業ギルド長であると伝えてきた。
何故檻の中に?という疑問もあったが、とりあえず依頼先に荷物を渡すし受領サインが先だなと、サインを貰おうとした矢先、
「そこのお前!何をしている!!」
と、背後から声をする方をみると、獅子?山羊?みたいな頭がたくさんついている魔獣?と一緒にヒトが立っていた。
「そこの貴様!視ない顔だな…何をしていたと聞いている!!」
「御届け物の荷物を届けに来たのだが…」
「荷物?荷物といったか・・・そうか・・・それか・・・おい、それをこちらによこせ」
いきなり荷物をよこせといわれる。
運搬人にとっては運搬先の本人にちゃんと受け渡したのちに、受領サインをもらうまでが仕事であり、それが私の矜持でもある。
なので答える解答はただ一つ。
「それは出来ない」
「そうか、ならお前がいなくなれば良いだけの事だな!」
と、魔獣に何やら指示を出したのか、こちらに向かって走り出してきた。こちらとしては受領作業が滞っているので邪魔はされたくない。
なので、少し退いてもらおうと相手の顎を強めに叩いてみたら、魔獣?みたいなものはいきなり自身の横を壁に向かって飛んでいき、ズゥンという音と振動が鳴り響く。
飛んでいった先を見ると、血の池ができはじめており、たぶん、当たり所か足元が滑ったんだろうな・・・これでは、息絶えてしまったか?と少し哀れんでしまった。
「はっ?」
「へっ?」
魔物をけしかけてきた男?とギルド長からは、変な声が漏れていたが、ここはあの魔獣に対して可哀想な感想じゃないのかと疑問に思えたが、相手の男が再び口を開く
「す、少しは・・・できる様じゃないか・・・今度は、コイツではどうだ」
と、奥の檻からなんか大きな牛?みたいなのが現れてこちらを睨み、再び迫ってきた。
が、先ほどと同じ様にあいての顔を払う様にどかすと、やはり壁へと飛んでいき衝撃音と振動が鳴り響き、ふたたび動かなくなる大きな牛?みたいなもの。。
「「へっ・・・はっ・・・?」」
またしても二人からは、変な声が漏れているが、ようやくこちらの方をみたが、これ以上邪魔をされるのは困る。
なので、
「いいから、邪魔をしないでくれ!!」
「は、はいっ!!」
と、釘を刺しておく。
そうこうしてギルド長と向き合ったが、ギルド長も何故かこちらをみて驚いていたが、荷物を取り出して受領サインをもらおうとしたとき、ギルド長から「助けてくれ」という言葉が紡がれた。
だが、「私はあくまでも運び屋であり、そういう事は行ってはいません。」という趣旨を伝えてみたが、ギルド長は首を傾げたあと、「ならば、私をとある場所まで「運んで」くれないか?受領サインはそれから行う」という話が切り出された。
受領サインがもらえなければ依頼は達成されない。
それはかなり困る。なにせこの街のエール達への軍資金として・・・いや、私としても運搬人としての矜持がある。
運んでくれという依頼がなされたのならば、運んでみせよう。という意地もある。
という事で、ギルド長の直接依頼をうけ、私は檻からギルド長を連れ出す。
連れ出す際に檻となっている場所をねじってみると、これまたあっさりと曲がってしまったので、これではさっきの魔獣?が簡単に出てこれる訳だと納得した。
さっきまで立っていた男だったが、みてみると尻もちをついて「ひっぃ」と言っていた、そりゃいつでも魔物?が出てくる状態は危なさすぎて背後からとか襲われたらたまったもんじゃないからな、ようやくそれに気づいたのだろう。
「檻になってる鉄棒が弱すぎて危ないぞ?もっと頑丈な物にするべきだ」
と、そう教えてあげ、背負ったギルド長の案内を元に運び先へと送るのであった。
送った先がとても豪華な屋敷だったりし少し驚きもしたが、とりあえず受領サインはもらえたので良しとした。
また、ギルド長を運んだ依頼達成として金貨20枚が渡されたが、あまりにも大きい金額にすこし驚いたが、これぐらいでも安いものと言われてたので、そのまま受け取ることにした。
受領サインの
とりあえず、まずは一仕事が終わった後に待っているのは白身魚の|揚げ物(フライ)とエールである。
いざゆかん!我が桃源郷(屋台街)へ!!
****
今日も今日とて配達依頼を受けては届け先へと運ぶ「だけ」、運んだ先で相手に怪しまれながらいつもの笑顔で言葉が放たれる。
「お荷物を届けにきました。受領サインを」
「ひぃっ!!」
****
<とある酒の席での噂話>
なぁ、知ってるか?
最近近くの森でドラゴンが出たってのを、しかもあれは翼竜とかじゃなくて災害級とか言われる奴だそうだ。
だが、この話に続きがあってだな、縄張りの調査にきた冒険者のパーティーが見たものは、地面に突き刺さった先の「頭部が近くの茂みの中に転がっており、頭が無くなった首だけが地面にふかぶかと刺さっていた」ドラゴンの遺体だったそうだ。
不思議な光景だが、そのパーティの奴らはドラゴンの素材が手に入ってホックホクだったらしいぜ?
ほんと、俺もそんな幸運にあやかりたいね。
<とある討伐の報告>
我々が討伐対象としていた魔物、暴君とよばれる大山羊と遭遇した。
暴君は、その俊敏な動作で幾多の冒険者を返り討ちにし、特にその突進速度は誰も逃げきれないため、見つかったら死の覚悟を決めろ、など言われる程危険なモノであったのだが、我々が訪れた時にはその様な素振りは一切なく、とにかく動くのがつらいという印象であった。
攻撃を加えても反撃される事もなく、そのまま倒す事が出来たのが今でも信じられない。
たぶん、あれは病気か何かを患っていたのだろう、おかげで討伐依頼は完遂させる事ができたの我々は幸運だったな。
<とあるいたずら妖魔の愚痴>
信じられない、そいつが現れたからあたしたちはいつもの様に惑わしの魔法をかけてみたのよ、
なのにソイツったら、魔法の効果が表れないのよ。
何度も何度もかけてみても、ソイツは何知らぬ顔で森から出ていったのよ?信じられる?
久しぶりに人の血を味わえると思ったのに!あんな人間っているの?
<とある雇われ魔物使い>
あいつは化物だ…あいつは化物だ…あいつは化物だ…
でないと、ヒトなんかじゃない、ヒトじゃない、ヒトなんてありえない…
あいつは化物だ…あいつは化物だ…あいつは化物だ…
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