魔法世界の化け物が教師になって帰ってきた。
魚紙奈夏乃
1.教師勧誘
第一話 幼い化け物
私が住んでいるのは、魔法世界です。魔法世界ですからそこに住んでる人は皆、いいか悪いかは別として、魔法が使えます。私も例外でなく魔法が使えました。私は、ある小さな村に産まれました。産まれた時は、私も他と変わらない普通の子でした。でも、大体1歳半くらいからでしょうか。指から火を出す。何もないところから水を出す。草木を急成長させる。こんな、魔法の基本はできるようになったそうです。魔法の基本と言えど、出来るようになるのは6歳からが普通。要は、私は異常でした。でも、心が広くおおらかな両親は、「またそれも個性だ。」と言って受け入れてくれました。村の方達も、皆受け入れてくれました。なんと素晴らしく美しい心の方達だったのでしょう。
そのあとしばらくは平和で、私もすくすく育っていきました。そしてある日、私の村に迷子の青年がやって来ました。どうやら、道に迷って、死にかけてるところこの村をみつけたらしいのです。なんと運のよい青年でしょう。その時、私は5歳でした。その頃には、魔法の応用。攻撃魔法。回復なども覚え、つかえるようになっていました。私は、新しい魔法を覚えると、かならず親に報告しました。攻撃魔法を覚えたとき、母とある約束をしました。それは、『絶対に人に攻撃魔法を使わない。』というものです。母の真剣な顔にビックリしましたが、私はちゃんと約束しました。ゆびきりげんまんをして。ですが、それ以外の力は活用しました。主に、家事や村のお手伝いに。青年にお茶を出すときもつかいました。青年は笑いながら「ありがとう」といいました。そのあとも、青年とお話をしました。とってもいい人。そんな印象でした。
「お兄さんは、このあとどうするの?」
私は聞きました。青年は、またニコリと笑って、
「僕は、僕が住んでいたところに帰るよ。村の人たちがおくってくれるらしくてね。」
今回は迷わずに済みそうだ。という青年が面白くて、くすくす笑いました。
「…なぁ、君は魔法が使えるだろう?それも、かなり高等な」
突然言われ、反応ができませんでした。青年はこう付け加えました。
「僕、魔法に関係するお仕事に就こうと思ってるんだ。だから、なんとなくわかるんだ。魔法がどれくらいつかえるか」
これまた私はビックリしました。
「見せてくれないかな。君の魔法を。」
今度は困りました。私の歳で、攻撃魔法などを見せれば、きっと私は化け物と呼ばれるでしょう。世の中は甘くないし、村の人たちのような優しい方だけでないのを、私はよくしっています。
ただ、ちょっとなら、みせていいかな
危ない考えが、頭をよぎります。
ちょっとだけ ちょっとだけなら
私はいつの間にか言っていました。青年は「ほんとうかい!?」と喜んでいましたが、しまったと私は思っていました。どうにか誤魔化さなくては。なので、私は基本魔法をすることにしました。そうして、青年に勘違いだったと思わせるためです。
「火よ。私の指先から現れ、辺りを照らすがいい。」
私は目を閉じ、念じます。その時、なぜかドラゴンが頭に浮かびました。すると、
「ヒッ、うわぁぁぁぁぁ!!!」
青年の悲鳴に、私は目を開けます。そこには、炎で体をおおったドラゴンが、雄叫びをあげながら、青年におそいかからんとしていたのです。
「っ!戻って!早く!」
焦って早く戻らせようと、私は言葉を発しました。すると、炎のドラゴンは砂のように崩れて、消えました。私は震えながら振り向きます。
「ち、違うの。これは…その、偶然で、あの、わざとじゃないの。」
必死に弁明しますが、青年も震えるばかりで聞いてはなさそうでした。しばらくすると、青年は笑いだしました。
「は、はははは。わ、分かってるよ。大丈夫。ただ、ちょっと異例の事態だから、早く、早く、国の人に言わなきゃ…!」
「まって!やめて、それはやめて!!」
青年に呼び掛けますが、青年は側に置いていたバックをかけ、飛び出してしまいました。私は、それを眺めるしかありません。涙が出たせいで、視界がぼやけました。
なにもありませんように
そう強く願い、その日は眠りにつきました。
…私が目をさましたのは、お母さんの呼び声でも、朝の日の光でもなく、熱さと視界の異様な赤さでした。目をあけ、ガバッと起き上がると、真っ赤でした
。ただ、真っ赤。幼い私のあたまでは、それしか認識できなかったのです。でも、後々思い出すとあの真っ赤は、ゆらゆら揺れていました。その真っ赤はとてつもない熱を持っていて、触れた途端に火傷をしてしまいそうなほどでした。私はパニックになって、周りを見て、母と父を探しました。すると、タンスの下敷きになった母を見つけました。外傷はあまりなかったのですが、あの真っ赤からでる黒いもやもやを大分吸っていました。あんな熱くて怪我をしてしまいそうなものから出るものなど、きっと悪いものに決まってます。
「お母さん!!大丈夫!?早く逃げなきゃ…タンスをどけなきゃ…!!」
母の上に乗っているタンスを、ちからいっぱいに持ち上げようとしました。ですが、私の力ではビクともしません。
「…逃げて」
母が言いました。私はその言葉を聞き漏らさんと、一生懸命聞きました。
「逃げて…。村の、人達の、様子を見てきて…。私達、だけじゃない、はず。火が、燃え移ってるはず、だから」
私はそこで、あの真っ赤が火であることを認識しました。そして、すぐに飛び出たのです。母の思いを、無視しちゃいけないから。飛び出た途端に、私は襲われました。残酷な現実が、私にのしかかってきたのです。そして、母が考えた最悪の事態になっていたのです。火の海。一瞬、私が火に飛び込んでしまったのではと錯覚してしまうほどでした。ゆらゆら もくもく
真っ赤な火が揺れ、黒い煙がたちこめる。よくよく見るとその火は、ほとんどが村の人逹の家から出ていました。ここは小さな村。家の作りは、大抵が木造でした。赤煉瓦や、コンクリートなど、なかったのです。だからこそ、普通より酷くなったのでしょう。
「だれかー!!無事な人はいませんか!?生きているなら声をだして!!」
私は叫びました。でも、その叫びに応えてくれる人はいませんでした。
「誰か…」
ずっと叫んで、喉が痛くなっていきました。そうこうしてるうちに、火がこっちに迫ってきていました。
危険だ。危ないモノだ。
あともうひとつ、きけんなモノがきていました。
「化け物の小娘は殺れたか?」
「小僧、あの化け物の見た目をもういちど言え」
「はい!髪は白く、目は赤色でした。肌も比較的白かったです。確か、服は黒い半袖のワンピースを着ていました」
3人分の声が聞こえました。そのうち二人は、野蛮そうな男の人の声。あと一人は、あの、優しそうな青年の、声…。
「いやー、にしてもビックリしたな!あの化け物とその親だけ始末しようとしたのに、他の家にも火が移っちまうなんてよぉ」
他の奴は化け物の始末に巻き込まれちまっ て、かわいそーだよなー。
そんな言葉の後、品のない笑い声がひびきました。私はその会話から、分かったことがあります。一つは、化け物が私であること、もう一つは、村の人や、私の両親は、私のせいで…
私は、森の方へと自然ににげていました。
「ごめんなさい…!ごめんなさい!!」
見捨ててごめんなさい。
魔法が使えてごめんなさい。
あのとき、人に見せちゃって、失敗しちゃってごめんなさい。
私は逃げてるとき、色々なことについて謝りました。だから、後ろで「化け物が逃げたぞ!追いかけろ!!」なんて言われてること、気づかなかったのです。
「ハァッ…!ハァッ…!っハァ…!」
後ろから肩を掴まれました。振り向くと、そこには、野蛮そうな男の人二人と、汗をかきながらも笑っている青年がいました。このあとは、よく覚えてません。気づいたら、目の前に野蛮な男の人二人が倒れていて、青年は震えていました。青年だけ意識があったので、こう私は言いました。
「今あったこと、全てを報告なさい。そして、化け物は力尽き、死んだとね。」
そう伝えて、私は森の奥へ走っていきました。私はあることに気づきました。これまでの一部始終を、私は私でありながら、第三者の視点で見ていました。なぜでしょう。分からないので、私はこう結論づけます。
今までの事は現実。だが、その現実をリプレイしただけの、夢であったのだ、と。
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