私は貴方を。

 私は翼をたたんで、窓辺に腰掛ける。月明かりに照らされた貴方の寝顔を、じっと見つめる。

 私は昔、神様に愛されたくて、人間になれる薬を悪魔から貰った。大地に降りたら、きっと愛される。そう思った。

 やさしい悪魔。さも私のためみたいに、声をかけたひと。結果を確認したら、きっと貴方はいなくなる。

 惜しくなって、薬をそっと貴方に盛った。

 もう貴方はなんにも覚えていない。

 私の姿も、声も認識することはない。

 記憶のないただの貴方。

 私は、貴方を。



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