衝突!それぞれのリンゴ仲間達

第36話 衝突!それぞれのリンゴ仲間達 その1

「さて、何して遊ぼうか」


「遊ぶって言うか、見たところそう言うのそんなに多くなくない?」


「ここって結局小さなお店の集合体だもんね」


 モールに入った林檎は早速ここで何をするのか話し合う事にします。彼女の問いかけにすぐに反応したのはやはり普段から交流の深いみかんと桃でした。

 行き当たりばったりで特に目的もなくショッピングモールに来てしまった為、まずはここで何をするかを決めなくてはなりませんでした。店内の施設を表示してる看板の前でみんながそれぞれに各店舗の場所を確認している中、みかんが口を開きます。


「遊ぶって言ったらゲームセンターとかくらいじゃない?」


「じゃあ、ゲームしよっか」


 彼女の意見に賛同したのはゲーム好きな林檎です。けれどそこでいちごから別の意見が出ました。


「楽しむと言う意味じゃお店を見て回るのもいいんじゃない?」


 この話しぶりからどうやらいちごはゲームにさほど興味はないようです。彼女の意見に賛同した桃が追随するように話を続けます。


「じゃあ、服とか見てみる?」


「お金……あー見るだけなんてもどかしいなぁ」


 この桃の言葉に林檎はつい嘆いてしまいました。お店を回ると欲しいものが出てくるのは想像に難くありません。

 けれど最初から買い物をメインに計画を立てていた訳ではないので、メンバーみんなそんなに予算を組んではいませんでした。


「で、どうするんだ?」


 話が一向にまとまらない為、業を煮やしたわさびがちょっと苛つき気味に口を開きます。この言葉にいちごが答えました。


「私もあんまりお金持って来てないし、見るだけ楽しもっか」


「って言うか僕は書店に行きたいんだけど」


 話がウィンドウショッピングにまとまりかけた所でレモンがまた別の意見を提案します。彼女の場合は自分の行きたい所を口に出しただけみたいですが。

 ショッピングモールは色んなお店の集合体な訳で、みんなが行きたい場所をそれぞれに主張すれば話がまとまらないのは道理でもありました。ここでずっと終わらない口論をしても仕方ないと感じた林檎は改めてみんなに問いかけます。


「どうにも意見が割れて来たね、じゃあここで自由行動にする?解散じゃないけど」


「えー、別に解散でいいじゃん」


 この林檎の言葉にすぐに不満を訴えたのは自由人のわさびでした。この意見を受けて林檎は改めて今日のイベントの趣旨を説明します。


「飽くまでも親睦だから、今日一日はさ。バラけてもいいけど2人以上ね」


「何その窮屈なルール」


 この説明にわさびは全く納得していないようです。一番親睦を深めるべきは彼女なのにこれでは本末転倒です。そんなわさびの悪態を見てレモンはにやりと笑うと軽く彼女を誘いました。


「いいじゃん、わさび、僕と一緒に行こうよ」


「書店行っても……あ、何か立ち読み出来そうな感じ?」


「出来る出来る。ここの書店はオープンだから」


「じゃ、レモンと一緒に行く」


 レモンの巧みな話術によってわさびは書店に行く事にしたようです。個性的なこの2人、結構息が合うのかも知れません。ひとつのペアが出来たところで林檎は改めてみんなに問いかけました。


「決まりね。じゃあ書店組はレモンとわさびの2人でいい?」


「あ、私、ペットショップ行きたい」


 書店組が決まった流れを受けて、今度はみかんが自分の行きたい場所を主張してきました。さっき彼女はゲームセンタを主張していたけれど、モールにペットショップがあるのを確認して意見を変えたようです。この意見に動物好きの林檎が悩み始めます。


「うあ、ペットショップもいいね」


「私はお店回りたいけど……」


「どうしよっか」


 お店組とペットショップ組でまた意見が割れてしまいました。本来なら仲良くどちらも回ればいいのですが、書店組の出現によって行きたい所を一番に回ると言う流れが出て来てしまった為に、こちらもきっちり行きたい人を振り分ける流れになってしまったのです。

 どうすればみんなの希望に添える形になるのかみんなで考えを巡らせていると、レモンが爽やかな笑顔を浮かべながらさっそうと口を開きます。


「残り4人はうまく行き先割り振ってね。僕らは先に行くよー」


「あ、ちょ、レモン」


 わさびを連れてモールの書店へと向かおうとする彼女を林檎は引き止めます。呼ばれたレモンは立ち止まり、振り返って口を開きます。


「ん?何?」


「何か合ったら連絡するから」


「分かった、じゃ」


 こうして書店組は書店へと歩いて行きました。残りはショッピング組とペットショップ組の割り振りです。ここで重要な事は行きたい人は意見を変えないと言う事です。つまり、話し合いで決めるのは効率が悪いのです。そこで林檎は自分の考えた解決方法をみんなに話します。


「どっちでもいい人はジャンケンでどっちか決めようか」


 この意見にみんな黙ってうなずきます。今回の場合、どっちでもいいと言うのは林檎と桃の2人です。と、言う訳で2人でじゃんけんをしてお互いの所属を決める事になりました。お互いにそれぞれの必勝法を駆使してこの戦いに臨みます。


「最初はグー!」


 こうして、この組決めジャンケン勝負は勝った林檎がショッピングを選択し、自動的に組決めが成立しました。


「じゃ、私といちごがショッピング組、みかんと桃がペットショップ組って事で」


「それぞれ楽しみましょ」


 こうしてフルーティーズはそれぞれが興味のある場所へとバラバラで楽しむ事になりました。それはそれでこう言う場所を楽しむひとつの回答なのかも知れません。多人数で多くのお店を巡るともなれば好みがぶつかる事もよくある話ですから。



 その頃、もう一組のリンゴ能力仲間の泰葉達もまた同じショッピングモールに到着していました。


「着いたねー」


 モールに着いた所で泰葉がみんなに話しかけます。この言葉にゆみが口を開きます。


「山登ったそのままの格好で来たからみんな見た目アウトドアショップに興味ある人達って感じだね」


「今のテンションだと立派なテントとか見ると詳しく見ちゃいたくなっちゃうかも」


 その言葉を聞いて泰葉も追随します。この会話を聞いていた鈴香が弱々しい声でみんなに向けて訴えます。


「ねぇ~どっかで休もうよ~」


「まずは、お茶しよっか」


 見たところ鈴香は慣れない登山でかなり弱っている様子。そこで泰葉はみんなに休憩を提案しました。幸い、モールにはみんなが軽く休めそうなお店が幾つかあります。小洒落た喫茶店からフードコートまでその時のテンションと予算で選び放題です。


 山登りを経た上でやって来ていた泰葉達はあんまり小洒落たお店でお茶するのも合わないと感じ、一番気軽なフードコートを選びました。並んでいるお店の中にはドーナツショップもあります。

 みんなそこで好きなドーナッツとコーヒー等の飲み物を選んで空いている席に座りました。席に座ってそれぞれがそれぞれのペースで一息つきます。

 みんなある程度落ち着いた所で泰葉がここに来たがった当人に声をかけました。


「で、セリナは何か用事があってここに来たかったの?」

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