メインヒロインが、俺だと⁉︎
@razor
第1話
「ルイン、できたぞ」
「へへへ、待ってましたぁ!」
昨日から仕込んでいたハヤシライスのルウが満足のいく出来になったので、彼方より約束していたルインに味見をしてもらうことになった。
炊きたてほかほかのご飯を器に盛り、ハヤシルウをかける。もちろん、ふわとろオムレツは外せない。
完成品をルイン前に置く、途端に待ちきれないと一気にかっ喰らった。ものの数秒で完食したルインはしばらく、からの食器を見つめていた。
「あっ」
その姿があまりにも哀愁漂う感じで見てられなかった。おかわりを用意してやることにした。皿を下げようとした時の顔が完全になきが入ってた気がするがスルーしておこう。
「ほれ」
二杯目を出してやる。
その二杯目もあっという間に平らげたルインは急に俺の前に回り込み手を掴んできた。
韋駄天の二つ名は伊達じゃない。目にも留まら速さとはこのことか。
「結婚してください」
「うん?」
何故か求婚された。
「結婚してください」
こちらの目をじっと見つめて、もう一度同じ事を言われた。聞き間違えではないようだ。
「なんの冗談だ?」
「冗談じゃないもん!」
普通に考えれば、俺の反応は正常だと思う。なのに、ルインはなにやらご立腹の様子だ。ほっぺをパンパンに膨らませてそっぽを向いている。
いや、冗談じゃないといろいろ問題なんだが。
「いや、ルイン。お前の立場や、年の差を考えろ」
「関係ない!」
「関係大有りだ」
俺はとある学園の厨房勤務のただの料理人。ルインは貴族であり、学園に通う生徒の一人だ。この国を代表する英雄の子供であるが、本人も魔王殺しを果たしたパーティの一人である。
「ボク、魔王殺しの褒賞まだもらってない。王様は、望みを一つ叶えようと言ってた。文句言うやつらは黙らせてもらおう」
なんか、拳を握りしめ新たな決意を固めてらっしゃる。
「うん、これで問題なくなったね」
「いや、山積みだろうが!」
脳天にチョップをかましてやろうとしたが躱された。くそ、素早い。
「なんでさ、父さんや母さんだって
喜ぶよ。二人とだって仲良いじゃん」
「それは間違っちゃいないが」
確かに俺は、ルインの両親とは仲がいい。かなり良い。そして、つきあいも長い。かなり長い。それこそルインが生まれる前からだ。
当然だろ。学園の同級生だったんだから。
「よし、じゃあ。うちに報告しに行こう」
なんか、やる気マンマンだ。腕を掴まれ引きずられる。圧倒的な戦力差があり、さからえねぇ。
レベル100とレベル5の戦いみたいなもんだ。ここは諦めるしかない。
まあ、ルインも変なスイッチが入ってるだけで、そのうち落ち着くだろう。あいつらも、冗談かなんかと笑ってルインを諌めてくれるはず。
くれるよな?
抵抗虚しく、ルインに運ばれていく。食堂の出口に差し掛かったところで、厨房側の扉が勢いよく開かれて、なにやら人影が飛び出してきた。
「ちょーっと、まった!」
ちょっと待てコールだと?
なんで、お前がそんなネタを知っている。
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