世界の始まり

2025年、人類は火星に到達する。しかし火星の所有権を巡り国々は争う。この火星は自分達の物だと。

一番火星到達に力を入れていたアメリカ、ロシア、日本の3国は自国がどれだけこの偉業に貢献したかで争う。最初は口論だけだった。それが変わったのは火星を調査してからだった。

火星を探索しているチームからある情報が入った。

それはーーーー水だった。

ただの水ならば何も問題はなかった。良い発見をしたと、朗報だけで済むはずだった。

しかし、その水は異質だった。

それを見つけた探索チームは事故が起こり、元の拠点に戻れなかったのだ。そんな最中水を見つけた探索チームは念の為とリーダーが試しにひと舐めする。

すると、身体に活力が漲り齢50歳にとどくその肉体は全盛期を連想させる20歳の身体にまで若返ったのだ。他の者も同じような現象が起こり、なんとか拠点にまで戻るとすぐさま帰還し地球でその水の研究を行う。

しかし何でできて、何で構成されているのか。全くわからなかったのだ。見た目はただの水。しかし効果は異質。それを知った国々の欲望は爆発した。

ーー手に入れるべきだと。

そして第三次核世界大戦が勃発した。

地球全体の人口は激減。水は枯れ、自然は死に、動物達は生活場所を奪われ絶滅していく一方だった。

それでも争いを止まらない。何人かの勇敢な人達が争いを止めようと動くが欲に目が眩んだ下種共に殺され、争いはさらに加速する。小さな子供に銃を持たせ、金がある者はそれを眺めて命令するだけ。

争いの中、利益を得ようと汚いことに平気で手を染めてなんの関係もない人達を巻き込むゴミ共。

こんな腐りきった状態の人間が闊歩する地球。

このまま地球は人間同士の醜い争いで死んでいくと誰もが思っていた。


だが、ここで予想外のことが起きる。いや、もしかしたら当然の出来事だったのかもしれない。なぜなら、人類同士の争いとはいえ、地球を攻撃していたのだから…。


2034年、民間人が多数殺されるという事件が起きた。それも体を引き裂かれたり、食い千切られたような死体ばかりだ。人々はこれを熊などの動物のせいだと思っていた。いや、今はそれよりも火星を所有して国の利益と自身の身体を若返らせる水に忙しかったのだろう。警察に熊の仕業と断定させ、他の国との戦争に集中する。



しかし、それが駄目だった。いや、既に手遅れだった。適当に熊のせいとしたがあながち外れでもなかったが、同時に外してもいた。

なぜなら、その動物は、いや動物ではない。

では進化した動物なのか?いいや違う。

進化のような生温いものではない。

進化しただけで火を吹くか?水を操れるか?

風を起こすか?


それだけではない。体は巨大化し、皮膚は石より硬く、個体によってはコミュニケーションが取れるほどの知能を持つなど進化の枠を超えている。

このようなことが世界各地で一斉に起こり、人々は『化け物』に次々と殺されていった。


この有り様に人々は火星と未知の水で争ってる場合ではないと暫定的だが一致団結して事に当たるが、銃は弾かれ、剣や刀は刃こぼれし、爆弾は少し傷を与える程度。頼みの綱である核ミサイルは全て『化け物』に喰われていた。

この事実に人々は驚愕した。核ミサイルを喰うなど生物を超えていると。あの死の武器が通用しないなどとは……。


人々は次第に諦めていった。

どうやっても『化け物』には勝てないと…。

火星に飛ぶための物資等はすべて『化け物』の手により壊され、逃げる手段も奪われた。

しかし希望は残っていた。

人々が昔から信じ、信仰していた存在が。

ある人はそんな者はいないと思っていた。

ある人はいると信じて信仰を捧げていた。

その存在は誰もが知っているが誰も見たことがない存在。

それはーー神である。



「ハァァァ〜、嫌だなぁ行きたくないんだけどなぁ〜」


「そう言わずに、今年こそ誰かが入ってくれるかもしれないじゃないですか」


朝っぱらから大きな溜息をついている黒髪の中学生くらいの身長で顔の造形は完成されていると言ってもいいくらいの美少女は神様である。

それにツッコミを入れていた黒髪の神様ほどではないが間違いなく美女の部類に入るであろう青髪の女性は黒髪の神様の部下だ。


「本当に誰か入ってくれたら嬉しいんだけど…、無理じゃない」


「それは、その、まだわからないじゃないですかっ」


「無理よ。今の状態がそれを表しているのはわかるでしょう?」


「…………」


青髪の女性は何も言えずに黙る。

そんな部下を慰めるように黒髪の神様は小さく呟く。


「まぁ、可能性がないわけじゃないし、少しは期待しましょう」


「っ! そうですね、期待しましょう!」


黒髪の神様の言葉に花が咲いたような笑顔を見せる部下の青髪の女性。そんな部下に呆れながらも優しい笑みを浮かべる小さな黒髪の神様は部下の青髪の女性とある場所に向かうのだった。


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