冒頭モノその2

益田米村

冒頭

それは魔法であった。魔法としか形容できない物であった。その「魔法使い」が持つのは「魔法の杖」であり、そこからあふれ出す物はまさに「魔法の光」であった。夏祭りの夜、彼は魔法にかけられてしまった。魔法使いが「魔法をかけた」と言ったわけではない。むしろ、魔法使いは、彼に魔法をかけたことに気が付いていないかもしれない。

しかし、彼には確信が持てた。自分は魔法を掛けられてしまったのである。強い力を持った「魔法」である。もし解かずにいれば、やがて死に至ることも考えられる。これはむしろ「呪い」と呼んだ方がふさわしいのかもしれない。だがしかし、幸いにも彼はこの呪いの解き方を知っている。正しくは、呪いを解く呪文を。それを魔法使いに告げればよい。方法は簡単である。問題はそれに伴うリスクである。呪文を告げるには、そのための時間や場所が限られてくる。タイミングを間違えれば、呪いは加速度を増して襲い来る。失敗は死を意味するのだ。だからと言って、悠長に事を構えるわけにもいかない。今この瞬間にも、呪いによって体が蝕まれていくのを感じる。

早く、解かなければ。呪いを、祝いに変える準備を・・・。

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