第3話 アイドルを目指せ!
「ゆん!起きるよ!」
「むにゃ……え……今何時?」
どこのお供猫もそうだと思うけど、主人の目覚ましは私達のお仕事。そう、私はゆんのお供猫のサラ。今年3歳になるレディよ。
ゆんは受け継いだ魔法の力を使ってアイドルになる夢を追っているの。魔法世界のアイドルはそりゃあもう大人気で、女の子の憧れの一つなのよ。
ゆんもそのアイドルに憧れて毎日頑張ってるんだから。だからお供の私としてもしっかり応援してあげなくちゃね!
お、ゆんの意識がはっきりしてきた。
「朝の4時……いつも通りだよ」
「よっし!気合を入れないとね!」
アイドルを目指す女の子の朝は早い。アイドルが憧れの職業な以上、ライバルは非常に多いって事。
ゆんはそんなライバルに打ち勝つためにいつも朝早くから頑張ってるの。
「いつもありがと」
「私はゆんのお供なんだから当然だよ」
ゆんは自分も頑張ってるのにいつも私を気遣ってくれる。だから私もゆんのために頑張ろうって思えるの。
絶対ゆんには国民的アイドルになってもらわなくっちゃ!
目覚めたゆんは着替えながら私に声をかける。
「日々の鍛錬が国民的アイドルを作るのよね!」
「ゆんファイトー!」
早起きしたゆんはまず体作りのトレーニング。アイドルとは言っても、まずは身体が資本だからね。朝起きて動きやすい服に着替えた後は、準備体操をして早速家の周りをランニングだよ。
しっかり走って体を温めたゆんのために、私は休憩用のお茶の準備をしなくっちゃ。
「ちょっと休憩しようか」
「わっ!サラ特製ミルクティー!」
「今朝のゆんも頑張ってるからね」
「嬉しい……おいしい!」
ゆんが私の作ったミルクティーを美味しく飲んでくれる。ううっ、お供猫冥利に尽きますわっ。
ぐううう~。
「体動かして水分摂るとお腹が鳴っちゃうね」
「後もう1セットしたらご飯にしようか……」
「そうだね、今日も昨日と同じでいい感じだよ」
今日もゆんの体の調子は良さそう。私もゆんが体調万全でとても嬉しいよ。
しっかり走って柔軟をして朝のメニューをしっかりこなしたところで、ちょうど朝食の時間に。このプログラムを組んだ私も時間通りにみんなこなせて大満足。
「ゆん、今日もベスト尽くしてる?」
「もっちろんよ!」
台所に行くと同じくゆんの夢を応援しているゆんのお母さんが彼女に声をかけている。お母さんも頑張っているゆんの姿を見てとても嬉しそうだなぁ。
「ママも応戦してるからね、あなたの夢」
「うん、ありがとう」
お母さんの用意してくれた栄養たっぷりの朝食を綺麗に平らげて、時計を見れば登校の時間。早起きして余裕があるからこその落ち着いた登校準備を済ませ、彼女は学校へと向かう。
玄関で靴を履いているゆんに私はエールを送った。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ああ、ゆんの笑顔を見ると今日一日頑張ろうって思えるなぁ。ま、学校に行っちゃうと私はしばらくは待機モードなんだけど。
ゆんの家とマールの家は同じ通学路の延長線上で、ゆんの方が少し学校から遠い。
だからタイミング次第なんだけど、登校中のマールの後ろから彼女が声をかける事も日常の光景なんだよね。
「おっはよ~♪」
「おはよ……朝から元気だね」
ゆんは登校中のマールの背後から元気に声をかける。早起きして身体を動かして朝食をしっかりとって元気いっぱいの彼女に対して、マールはすごくやる気のない眠そうな顔をしているわ。
「マールも相変わらず寝不足?」
「登校時間さぁ……後30分遅くてもいいのにね」
「マールの場合、どんなに遅くなってもきっちりその分寝坊する気がするよ」
「な、そんな訳ないでしょ!」
図星を突かれて逆ギレするマール。こんなやりとりも毎日の光景なのよ。同じ中学生なのに目標があるかないかで全然違うって事よね。
「よう、おふたりさん」
「あ、ファルア、おはよ、朝練?」
「そうそう、朝から体を動かすのは気持ちが良いね!」
そこにファルアが合流。これで仲良し3人が揃ったわ。この3人は小学生の頃からずーっと仲が良いの。
ファルアも魔法スポーツ選手を目指しているから、朝からきっちり身体を作り上げているみたいね。
そう、ゆんとファルアは似た者同士。だから本当はもうちょっと仲が良くなるはずなんだけどねぇ――。
「そう……なんだ」
3人の中で1人だけギリギリまで寝ていたマールはちょっと引き気味の反応をしているわ。このマールと一緒に何かするなら彼女をしっかり教育しないといけなさそうね。
「マールもたまには早起きすれば?」
「そうしたいけど……目が覚めないんだよねえ」
寝坊の癖が付いているマールらしい返事だわ。この返事に体育会系のファルアは彼女らしい反応をしたの。
「気合が足りないんじゃね?」
「確かに、何か目的があればそのために早起き出来るかも……」
「目的ねぇ……2人はしっかり目的があって偉いよ」
マールも2人と付き合いが長いから2人がそっくりなのを知っているのね。ゆんとファルアはそう言われても納得しないかもしれないけど……。
目的を持つって流れからゆんはマールに話を切り出したわ。
「じゃあ……いや……」
「ん?」
ゆんは一緒にアイドルになろうって言いかけたけど、それはまだ早過ぎるかなって自分の言葉を引っ込めたわ。昨日のしずるの魔法の影響もあったのかも知れないわね。
彼女が何かを言いかけて止めたせいでマールはちょっと困っていたわ。自分の言葉のせいでそうなったのに気付いたゆんは適当に誤魔化す事にしたみたい。
「えーと……早く何かやりたい事が見つかるといいね」
「あ……うん」
「出来ればさ、一緒に同じ道を歩けたらいいんだけどね」
マールがまだ魔法の使い道を決めかねているのは知っているので、ゆんは出来るだけ彼女の心を刺激しないように気遣ったみたい。
「色々考えてみるよ」
マールもまたゆんの気持ちを知っているので、結論は出せないまでもゆんを傷つけないように振る舞っていたわ。
そんな訳で仲良し3人組は無事学校に到着し、授業が始まった。
話は飛んで物語は一気に放課後へ。
「さて、今日はダンスレッスンの日だ」
「頑張ってね」
「じゃあ、またねー」
学校が終わったゆんはアイドルに向けてのレッスンへと向かう。彼女は毎日色んなレッスンを頑張っているんだけど、今日はダンスの教室の日。
でも今日は学校の行事に少し時間がかかってしまってちょっと遅れ気味だったの。
レッスンの時間は時間厳守。遅れたら授業を受けさせてくれないわ。
こんな時こそお供の私の出番よね!
「サラ、お願い!今日はちょっと遅くなっちゃって」
「裏道なら任しといて!」
私は日頃の猫ネットワークを活用して、適切な最短ルートを走ってゆんを先導する。
日々走り込んでいるゆんは私のスピードにしっかりついてくるわ。
私の野生パワーとゆんの頑張りで、何とかレッスンの開始10分前に教室に無事到着したの。
「ふぅ、間に合った」
「いつもありがと♪」
「何言ってるの?私はあなたのお供なんだから」
その後、ゆんはしっかりとレッスンをこなして充実した顔で教室から出て来たわ。
私はその間ずっと待っていたけど、彼女が頑張っていると思うから全然退屈なんてしなかった。
さあ、ゆん帰りましょ。明日の朝も早いけどしっかり起こしてあげるからね。
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